あらすじ
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
一般に北アフリカ発祥といわれるが、その起源は謎に包まれたままのクスクス。自由自在に姿を変えながら人の移動とともに国境を軽々と越え、土地の伝統に融け込む「食のなかの"食"」へ。人々を魅了しつづけてきたその正体とは?国や民族、宗教の多様性を豊かさに変え、世界中で愛される粒パスタの魅力に迫る。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「クスクス」という名前を聞いたとき、それは何だ?笑いながら食べるものなのかと思った。春だからといって、モクモク羊の頭の中にお花畑があってそこに蝶がひらひら舞っているわけではない。クスクスというあまりなじみのない料理に光を当てた今回の1冊。気になって読んでみた。
クスクスとはそもそも何か。クスクスの起源は謎と著者は述べている。あのモナリザの微笑並みだ。マグレブのベルベル人が発明したものという説を多くの研究者が唱えていると著者は紹介している。「クスクス」という言葉は、ベルベル語の「よくまるめられた」という意味の「セクス(sekis)」が起源ではないかと考えられている。また発明された時期も謎とある。どういう事情があったか知らないが、「クスクス」には何か複雑な人生の歩みでもあったのかな。フランス発祥の料理だという人もいるとして、著者はフランス人料理研究家レイモン・デュメイ氏の説を紹介している。フランス中部のオーヴェルニュ地方の料理、「クシ・クシャ(couchi-coucha)」だとしている。諸説入り乱れているクスクスの起源。もはやタイムマシンが発明されるまで待つしかない。
クスクスが日常食として食べられているのは、「マグレブ5国」と称されるアルジェリア、モロッコ、チュニジア、モーリタニア、リビアの西部。著者は、コロンビア大学のリサ・アンダーソン氏の分類を紹介している。リビアに位置するシドラ湾を境にして、南北に引いた線を「クスクスライン」という。クスクスラインの東側ではそれほど食べられていないとある。
フランスで「クスクス」が国民的食べ物となっていると著者が紹介している。一般のフランス家庭に浸透するのは1960年代になってからだが、17世紀頃から南仏名物となっていたとある。フランスで幅広く「クスクス」が食べられる理由の大きな理由の1つは、「マグレブ」のほとんどをフランスがかつて植民地として支配していた歴史にある。
「クスクス」の種類を見ているとバリエーションがある料理なのだなと思う。「クスクスに知られざる衝撃の事実が」などと週刊誌で書きそうなタイトルが頭に浮かんできた。それは、「栗のクスクス」が紹介されていたからだ。デザートとして食べるクスクスバージョンがあったなんて、奥の深い料理と思わずにはいられない。「クスクス」を甘く見ていると、「クスクス」だけに「クスクス」笑われる。最後に日本で食べられるクスクス料理店が紹介されている。新宿だと、チュニジア料理とモロッコ料理を出す「サハラ」が百人町にある。機会があったら一度食べてみたいものだ。
Posted by ブクログ
クスクスという料理。名前は聞いたことがあるけれど、どこのどういう食べ物で、どんな歴史があるのかを全く知らずにいた。
この本を読んで、小麦粉や雑穀を使った粒パスタということを知った。そして起源には諸説あり、非常に広範囲に広まっている食文化で、各地で独自の発展を遂げているということもわかった。そんなに各地で食べられているということは、汎用性が高く、毎日飽きずに常食できるってことなんだろう。そして作り方によっては栄養価も高い健康食なんだそうである。
水やお湯でふやかして食べることができるので非常食として備蓄しておけるというくだりに大きく頷いた。非常食や防災食として常温保存・長期保存できるものが、これからの時代必要となってくるだろう。あとは食べる人の知恵次第だ。