あらすじ
解像度の高い人物たちと情景描写に惹き込まれ、 どんなに遠くてもなお鮮やかな恋の記憶が立ち上る。
――松任谷由実(シンガーソングライター)
こんなに泣いたら、きっと人生が変わってしまう。そんな恐怖とともに読み終えました。
――金原ひとみ(作家)
『国宝』の著者、待望の最新作にして、 作家デビュー30周年記念作品!
眩しい夏の初恋と、二十年後の再会――
あの日、二人は何を守り、何を手放したのか?
純粋なものに向き合ってみたいと思った。
眩しいくらい純粋なものに向き合った時、自分の心がまだちゃんと動くのか確かめてみたかった。
『タイム・アフター・タイム』は私なりの純粋なものをたくさん詰め込んだ小説です。
――吉田修一
「取り返しのつかない間違いをした。
でも、大切な人のそばからは離れなかった」
建設会社に勤める尾崎颯は、土砂降りの雨のなか、高校の同級生だった久遠愛と再会する。二人は同じプロジェクトの担当者として再び言葉を交わすようになるが、建築家のデザイン盗用疑惑によって計画は暗転。さらに尾崎の家庭にはスキャンダルが迫り、久遠もまた、癒えない心の傷を抱えていた。
揺れ始める心はやがて、二十年数前の夏へと引き戻されていく。
青く輝く海と空に歓喜したあの頃と、眩しさを見つめ返せない今――東京と長崎、現在と過去を往還しながら、痛みも後悔も優しさも、すべてを抱きしめてあたためる長編大作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
532頁というボリュームと思えないほど、読みやすい◎
読んで後悔なしの1冊!
「過去が、あんなに幸せそうだったのに、現在は、なぜこうなった?」
この点が、気になり、とにかく読むスピードが上がり、夢中でページをめくっていました!
オッソーの現在の問題と過酷な生い立ちの部分で、胸が痛くなり、読むのが辛くなるシーンもあった。
だからこそ、2人の恋のシーンが輝いている。
これぞ恋愛小説。
ただ、うまくいくことばかりが恋ではない。
切なくて。
眩しくて。
終わってほしくない、2人の物語。
オッソーと愛。
物語には、現在の2人がどうなっていくまでは書かれていないけど。
2人には、どうか幸せになってほしいと願う
Posted by ブクログ
チャンプのロッカーで涙腺崩壊。過去の別れも「今」を形作ってるし、陳腐な表現かもしれないけど、人をこんなにも好きになることの尊さを思い知りました。
Posted by ブクログ
私が好きな曲のタイトルと同じだなと思っていたら、そこから着想を得た作品だと知り嬉しかった。吉田修一さんの作品はいくつか読んだが、ここまで恋愛を主軸にしたものは初めてで、新鮮だった。そしてとてもいい作品だった。長崎と沖縄に旅行したい。
Posted by ブクログ
純愛。
真っ直ぐで純度の高い恋愛小説です。
登場人物の誰もが、大切に思う人のためにそれぞれの間違いをします。
それでも、その人の為になら間違えられる、間違ってもいいと思える愛も確かにありました。
誠治とチャンプのシーンがグッときました。
Posted by ブクログ
どうしようもなく大切で、愛しくて、
でも、帰れない日々。
主人公二人が、好きで好きで大好きで、
壊れそうなくらい想い合う。
それは、ピュアで美しく、
はち切れそうなくらいの想いなのに、
小さな針やナイフやナタで切られるような
出来事が重なり。
好きな想いを壊れないように、大切に大切に
逃げて守って生きていく。
それでも、人の心は慣れや疲れやどうしようもないものに
擦り減らされ、削られ、傷つけあってしまう。
それさえを、良かったと思える未来。
颯の子供が、弱いものを助けようとした姿。
それは、子供の成長であり、颯の親としての育て方、姿があったから。
そして、そこには流れた時間があり、あの日別れたから、
しっかりと生きてきた日々があり、
その苦しさが颯をそのような親にしたのだ。
そう想うと、さらに切なくなった。
ラストシーンの鮮やかな色は、
海と空の色と相まって、いつまでも心に残る。
Posted by ブクログ
これぞ青春小説というようなキラキラした作品だったかなと思います。人を好きになるって素晴らしいなと思うとともに、自分の青春を思い返したくなった、そんな素敵な作品だったかなと思います。
本作は仕事の都合で高校生時代の恋人と再会することから物語が始まります。2人は親密な関係性を見せながらも、過去に何かあったことを匂わせる。仕事が進むとともに2人は過去の出来事を振り返るというストーリー。
本作のメインは何と言っても過去編かなと思います。2人にどんな過去があったのかというところがやはり肝であり物語の終盤まで続く軸であるため、過去編は整理して追うことはマストかなと思います。現代視点から見ているので、結末が分かっている状態ではありますが、それだからこそ青春の刹那的なキラメキが上手く表現されているのかなと思いました。
Posted by ブクログ
久しぶりに、読み終わりたくない、読み終わったあとも余韻に浸ってしまう本を読めた。
オッソーと久遠が過ごした眩しい日々への郷愁に胸が締め付けられる。
なんでこんなに好きあっているのに、別れてしまったんだろうか。
2人はまた一緒になれるのだろうか。
それがずっと気になりながら、どんどん読み進めてしまう。
帯にある松任谷由実さんの「解像度の高い人物たちと、情景描写に惹きこまれ」という表現はほんとそうで、沖縄の離島の匂い立つような空気と、登場人物たちの心情の描写がすごく伝わってきて何度も目頭が熱くなった。
「選んだ人生」について、大人になった今だから振り返ってわかることってあるんだなぁ。
オッソーと久遠はもちろんだけど、親友の一真や、久遠の兄、オッソーの義父など、周りで関わる人たちの思いにも涙が出た。
とてもいい小説だった。
購入本
Posted by ブクログ
あまりに真っ直ぐで純度の高い恋愛小説。
緻密な伏線回収や、価値観を揺さぶる訴えなど、この物語の真っ直ぐさの前ではすべて無意味で些細なものだと思ってしまうくらいに。
誰かを好きになり、大切だと思えることは尊く素晴らしい。それはとても個人的なことだけど、それ以上に大事なことなんて何一つないのかもしれない。今、大切な人がいる人はもちろん、過去の思い出になったあの人のことも大切に思えるようになる。
Posted by ブクログ
500頁を超える長編小説。主人公たちの子供時代の少し複雑な家庭環境、大人になってからも降りかかる紆余曲折、少し見方を変えたら暗くなりそうな話しなんだけど。それを軽く上回っていく壮大な青春劇とその続きを見させてもらった感じです。
高評価が納得できる、読み応えのある一冊でした。
Posted by ブクログ
高校3年生の夏休みの海の家から物語は始まる。
初々しく付き合い始めた主人公二人に悪意ない境遇が襲いかかる。沖縄の離島で暮らし始める二人。
そして、現在は東京で別々の家族を持って暮らしている二人が雨の日に再会する。
18歳と社会人になった現在が交わりながら話は進む。
面白い
Posted by ブクログ
土砂降りの雨の中、同時にタクシーに走りより、乗り合わせたのは20年ぶりに会う高校の同級生だった。
たまたま同じプロジェクトの担当として顔を合わせることになった尾崎颯と久遠愛。
現在と過去を交錯させながら物語は進んでいく…。
2人に関わった人たちの思いが、鮮やかな記憶となって甦ってくるのは、情景描写が素晴らしいからだろう。
単に高校の同級生というだけじゃなく、長崎での淡い初恋から始まり、2〜3日の旅行のつもりが沖縄で暮らしていくことになった…という場面が、とても印象的だった。
いつも一緒に笑っていた2人が、どんなに思い合っているのかがよくわかる。
そっとしといてあげて…となるような場面ばかりである。
見守っているチャンプの気持ちも兄の久遠誠治の程よい距離感も一層優しさを感じて熱くなった。
あっという間なのか、やっとなのか、まだなのか計り知れない20年は、2人にとっても必要な時間だったのかもしれない。
いつまでも見ていたい2人だった。
長編だと感じさせないほどで、読み終えたくないと思った。
Posted by ブクログ
あっという間に読み終えてしまった。読み終えた後何度も何度も色んなシーンをふと気付くと思い出しては、その感情に浸るというのを繰り返してる。
「別れて良かった」という一言に全てが詰まってる気がして、この20年の間の色々があったからこその今の2人なのかなと。
20年ぶりに2人で島を訪れるシーン。変わったものと変わらないものが入り混じる風景を見るのって、懐かしさだけじゃない切ないとも違うけど、何かノスタルジックな思いにさせられて少し苦しくもあり幸せな気持ちにもなった。
Posted by ブクログ
余韻が後引く、気持ちの良い恋愛小説でした。
まず、カバーのなんとも言えない青みがエモい!
好きすぎる!
主人公のオッソーと久遠の、焦げるような初恋がカバーに詰まっている!
吉田修一さん作品は初だったのですが、とても読みやすい文章でした。
533ページの厚さが気にならないくらい、夢中で物語を追っていけました。
20年前と現在が交互に描かれており、徐々に現在のオッソーと久遠のバックボーンが明らかにされていきます。
彼らを取り巻く登場人物たちも温かく味がある人ばかりで、それぞれのこれまでの人生を垣間見ることができるくらい魅力的に表現されている。
20年前に身を焦がすほどの恋をして、同時にその恐ろしさを知った2人。
何をもって「自由」というのかは分からないけれど、不自由さの中にこそ小さな幸せがあるのでは、と思ってしまう。
何もないあの離れの小屋で、2人で笑いながら過ごした日々はきっと幸せ以外の何ものでもなかったのだと思う。
Posted by ブクログ
プロローグ
ハーバーライトが朝日に変わる
その時一羽のかもめが飛んだ
かもめが飛んだ かもめが飛んだ♪
そんなフレーズが聴こえてきそうな物語だ
今、壮大な青春小説の幕が上がろうとしている
その物語に重ねるように、
あの頃の自分に思いを馳せた…
本章
『タイム・アフター・タイム』切なさと甘酸っぱさとノスタルジックな情景が同居する渾身の★Super5
“尾崎颯と久遠愛”
この二人を中心に過去と現在がランダムに語られていく
当たり前のことだか、登場人物には様々な過去や現在があり、悲しくも美しい人間模様を浮き彫りにしていく
その掘り起こされた様は、現在の自身であり
過去の集積によって成された自分自身なのである
そんな当たり前のことを描いているのだが、
何故か涙が止まらない
止め処無く、止め処無く
そして最後に味わえるのは、“颯颯”と吹く爽やかな風と慈“愛”に満ちた読後感だ!!!
絵に描いたような教科書通りの本屋大賞ド真ん中の作品ではないだろうか!?
Super8史上最高の青春小恋愛説となった
エピローグ
さて、表題の“タイム・アフター・タイム”だ
作中に、シンディー・ローパーの同タイトルが語られる場面があるのだが、やっぱりこの小説には
“時を越える愛”とか“過去と現在を行き来する”といった表現がピッタリと嵌まる
そして、沖縄の空と色鮮やかなオレンジ
エピローグで語られる転がりゆくオレンジで思い出すあのシーンは、文字通り甘酸っぱい青春の匂いと重なってならない…
誠に素晴らしいエンディングであった
心に残る名ラストシーン、傑作と云いたい!!!
完
Posted by ブクログ
胸がいっぱい、満たされました。
人生って長く生きれば生きるほど、周り道の意味も大切さもわかる気がする。人生これで良かったと思える生き方をしたいと思います。
Posted by ブクログ
-「初めて誰かを好きになった時に自分が何をしたか、それを人生のどこかで思い出した時にね、私、後悔したくない。未来の自分に胸を張りたい。私は、取り返しのつかない間違いをした。でも、大切な人のそばからは離れなかったって。」-
今回読んだのは吉田修一『タイム・アフター・タイム』です。吉田修一といえば、私が『横道世之介』ですっかり魅了された作家。映画『国宝』のヒット以来初の新作ですから、期待感が高くなったのはおそらく私だけではないはずです。しかもジャンルは私の好物、恋愛小説。正直、ここまで発売日を心待ちにした小説は生まれて初めてでした。今回の書評については新作であり注目作であることも考慮して、ネタバレは避けつつ、このひとりごとを読んだみなさんに「タイム・アフター・タイム読みたい」「吉田修一の作品気になる」と感じてもらうことを目指して書きたいと思います。
この作品は、建設会社に勤める尾崎ことオッソーが、高校の同級生だった久遠と同じプロジェクトの担当者として再会するところから幕を開けます。建築家のデザイン盗用疑惑、家庭内のスキャンダル発覚など…仕事も家庭もうまくいかない現在の姿と交互に描かれるのは20年前、高校生だった2人の恋の物語。「周囲の目なんて、関係ない。2人でいられればそれでいい...」そう思いたかった青春時代の不器用な恋愛模様が、誰もが経験したあの頃の温度感でリアルに描かれます。そして、物語終盤に現在と20年前が繋がるとき、この上ない満足感が読者を包み込みます。
あらすじに続けて、この作品について担当編集者がうまく感想を言語化していたのでその文を読んでいただきたいと思います。
「大人であれば誰でも、消えない痛みや後悔の一つや二つは抱えているもの。この小説を読んでると、”オッソー”もしくは久遠の心の動きと同期して、あなたの封印していた過去や、歯を食いしばって耐えた人生の一場面が胸に押し寄せ、涙で文字が滲むかもしれません。この物語は、そのすべてを抱きしめ、肯定し、癒やしてくれます。」
うまい!そのとおり!となりました。
さて、負けてられませんね、ここから私の書評ターンです。この作品を読んで私は2つ感じたことがあります。まずは、びっくりするくらいスラスラ読める感動です。500ページを1週間足らずで読み終わってしまいました。読みやすさの要因は2つあると思います。1つ目は主人公が現在も昔も、とにかくついていなくて、最悪とも言える出来事が次々起きるからです。「人の不幸は蜜の味」といいますが、最悪な出来事に見舞われる主人公に私は同情しながらも、なぜか読む手が止まりませんでした。もう一つは、登場人物が魅力的で、とにかく優しいのです。日々の社会生活に疲れた私は、きっとこの本に癒やしを求めていたのでしょう。
次に感じたことは、吉田修一カラーです。吉田修一は「悪人」「怒り」などの犯罪小説から、「パレード」「横道世之介」などの青春小説まで、幅広いジャンルに長けている作家です。私はそれら作品たちには一つの共通項、いわば吉田修一カラーがあると思っています。それは、「一見Aと見られがちな主人公」の生き様をしっかり描くことで、読者が「本当はこの主人公、AっていうよりBなのでは?」と、新たな別の視点について考えることができることです。例えば「悪人」では、犯罪者である主人公の日常の描写を通して、「犯罪者」と一言では片付けられない人間性に切り込みます。また、「横道世之介」では登場人物の20年後を並行して描くことで、「昔はやかましく感じていただけの世之介だけど、彼と出会ったことで自分は成長していたんだな」と登場人物たちが気づくシーン、すなわち「人の成熟」が描かれています。
さて、吉田修一の現時点での集大成となるこの作品で特に吉田修一カラーが強かったのは、オッソーと久遠の高校生時代の描写です。バカップルに振り回される周囲の人物と、「周囲の目なんて、関係ない。2人でいられればそれでいい...」と思いたかった二人の視点がしっかりと描かれることで、読者は両者の気持ちを理解し、いわゆる「バカップル」と一言では片付けられない人間の深みを描いています。また、この作品は20年後、ある程度過去の自分を俯瞰して見れるようになった2人が当時を振り返る場面も出てきます。「横道世之介」で描かれていたような「人の成熟」も描写として加わっていることで、私の思う吉田修一カラーがふんだんに盛り込まれた作品だなと感じました。さて、かなりファン熱がついてしまいました。しかもこれを書いている今日は『永遠と横道世之介』の発売日。また癒やされたいと思います。
最後に、本作のタイトルの元となった曲、シンディ•ローパーの『タイム・アフター・タイム』より、まさにこの作品が描いている愛がこもった歌詞で締めくくりたいと思います。読んでくれてありがとうございました。
If you're lost you can look - and you will find me
あなたが途方に暮れたとき 私がそこにいてあげる
Time after time
いつだって どこだって
If you fall I will catch you - I'll be waiting
倒れそうなときは受け止めてあげる 私は待っているわ
Time after time
何度でも 何度でも
Posted by ブクログ
珠玉の恋愛ストーリー。
出てくる人達があたたかくて、安心して読み進めることができました。
好きすぎるからこそ胸が苦しくなって離れたくなることもある
好きな人はいくらでも見てられること
恋愛の甘い思い出とその時の匂いや温度が結びついていること
あぁわかる
と共感できる部分と
こんなに愛おしく思われて羨ましいなぁ
という憧れを
入り混じった気持ちで読み終えました。
東京、長崎、沖縄と舞台を変えて話は進みます。
なんか夏になるとギュッと切なくなる思いが込み上げてくる、それを感じさせる作品。
Posted by ブクログ
青い世代の…だけど大人の恋愛小説でした。
とても爽やかで少しすっばい柑橘系の果物を食べた後みたいな読後感。
社会人としてバリバリに働く今の二人(多分三十代後半)と、思い出の中の高校生の二人の話が交互に展開される。
こういう過去を経ての今の彼らなのだな…。
歩んできたことには何一つ無駄なことはなかった。
『別れてよかった』
『好きになってよかった』
そんな風に言い合えるってとてもいい時間を過ごしてこれたのだなって思ます。
大人になって再び出会ってしまった二人はどうなっていくのでしょうか?
そんなことを考えてしまうのは、野暮というものなのかもしれないですね。
Posted by ブクログ
大人になってからは恋愛小説から遠ざかっていたことに気づきました。
人生で1番エネルギーに溢れていた大学時代をわたしも長崎で過ごしたので、風景や街の匂いまで思い起こされて夢中で読んでしまいました。どんな経験も思いも、そこに直向きさがあれば時間はかかっても必ず自身を支えてくれる思い出になりうるのだと思います。
Posted by ブクログ
時系列を行ったりきたりする系の本、最近3つ続けて読んだ。
セクションごとに余韻が残る感じでこの構成面白いな
映像がまざまざと見えるような文章で、一度も飽きずに読み切れた。
、、、こういう恋愛を私は知らないな
ファンタジー世界の話かと思っていたら、いろんな人の感想を読むとみんな通ってきた道らしい。
「今がその瞬間が一番幸せで他に何も要らなかった」てきなフレーズが出てくるけど、私はいつも先の先のことを考えてしまっていて、全然その今を楽しめてなかったんだろうなあ、、
突っ走る恋をしていたら、今どんな自分になってたんだろうか。
「大好きな人のために自分が何をしたか、未来の自分が胸を張れていてほしい」
てきなフレーズがあったが、確かに胸を張れていない
Posted by ブクログ
吉田修一さんの作家デビュー30周年記念作品にして、500ページ超の純愛小説です。現在と過去が交錯し、郷愁と感傷てんこ盛りのベタな設定かと思いきや、なかなかにして深〜く20年の軌跡を描き切っていました。
東京で暮らす40歳の男女2人(互いに長崎の高校時代の初恋の相手)が、冒頭で偶然の再会を果たし物語は始まります。そして、タイトルのタイム・アフター・タイムの通り、何度も何度も厳しい現在と輝いていた過去を行き来しながら展開します。
私のような年配者には、高校時代の純愛描写が読んでいてむず痒くなる感覚で、はいごちそうさま!と言いたくなります。ただ、読んでいてダラけないのは、2人の関係だけでなく夫婦や親子、友情などの人間関係と、長崎や沖縄などの土地や空気感の描写などが、多層的に見事に描かれるからでしょう。
終盤ギリギリまで明かされないのが、なぜこの2人が別れたのか、何があったのか? そして最後にまた結ばれるのか? という点です。未読の方は、実際に読んで登場人物の心理や情景描写の素晴らしさを実感しながら確かめてほしいと思います。
過去を美化するだけでなく、多くの失敗や今のままならない生活をも肯定してくれる物語でしたし、何よりも「好き」という気持ちの純粋さを、これでもかと表現してみせる作品でした。
Posted by ブクログ
良かった。じわじわ余韻が残る作品。
人生のある期間、大好きだった人と共有した時間や思いや景色の記憶は、永遠に色褪せない宝物。
ラストのオレンジ、尾崎が大切にしていた記憶と久遠の記憶が重なる瞬間、なんて尊い時間の経過なのだろうと泣けた。
その他、彼らを取り巻く温かな人間関係に心打たれた。
チャンプがロッカールームに久遠からの年賀状を大事にしまっていたこと、そのロッカーに貼り付けてあった名前。誠司が沖縄の2人の様子を見に行くが、声を掛けず引き戻るシーン。月夜の卓球台でのそれぞれの追憶。
最後に、彼らが初めてひとつになったシーンが描かれていて、その構成も素晴らしかった。
箸が転がっても笑い合ってた2人のキラキラした青春と切なさ、辛かったことすら全部が、彼らの現在を作る土台で、戻れないからこそ価値がある。
私にも同じくあった昔のあの感情を思い出し、胸の奥がぎゅっと切なく疼いた。
沖縄の美しい海と空、潮の香りを感じつつ、物語の中でいつかの自分を思い出しながら、気付けばあっという間に読み終えた。またいつか読み返したい作品。
p215
「冷静じゃない時の気持ちが、本当の気持ちなんですよ、きっと」
p392
久遠と別れた途端、目の前の風景が急によそよそしく感じられた。突然、風景からそっぽを向かれたようだった。
p394
初めて誰かを好きになった時に自分が何をしたか。それを人生のどこかで思い出した時にね、私、後悔したくない。未来の自分に胸を張りたい。私は、取返しのつかない間違いをした。でも、大切な人のそばからは離れなかったって
p447
「だって、今が一番だって。今、この時で十分幸せだって思えてたってことでしょ」
「そっか・・・じゃ、今の方が欲張りなんだろうな。明日、来年、将来、そんなもんにばっかり期待してるような気がするよ」
p473
「私たち、自由になろうと思ってこの島に来たのに、2人でいればいるほど、どんどん世界が小さくなってく」
Posted by ブクログ
#タイム・アフター・タイム
#吉田修一
オッソーと久遠の、現在と高校時代を交互に描く。現在は本人たちの視点。高校時代は彼らを取り巻く人々の視点。
高校時代の2人と今の2人、それぞれの結末が気になって、530ページもあっという間。自分があの頃たしかに持っていて、でもどこかに置いてきてしまった、純度の高いものだけで出来ているから、誰もが胸の奥のほうをぎゅっとつかまれるんじゃないかな。
#読書好きな人と繋がりたい
Posted by ブクログ
高校生の頃に、燃えるような恋をしている二人。
それぞれ別の人と結婚し、社会人になって偶然再開する。
・尾崎颯は建築事務所で働く中年。妻と小学生男児の子がいる。
・久遠愛は広告代理店で働く。植物学者の旦那とは同居しているが離婚が成立している。
共通の友達の見延一真はゲイで男性パートナーと一緒に伊豆で子供を育てる。
それぞれの今を再生しながら、過去も明かされていく。
颯は母子家庭だったが、高校生の時に母親が県会議員と不倫のすえ事故で2人とも死んで天涯孤独になる。引き取られた叔母の家では、その娘に好かれる。が、久遠一筋で振ると自殺未遂されて、家を追い出される。その頃に、2人で駆け落ちして沖縄離島で働きながら暮らす。三つ職場を掛け持ちしたり過労から海に落ちたりする颯、そんな中全財産を強盗されて喧嘩が多くなり、別れて久遠だけ帰る。
大人になった颯は妻が不倫で相手の方を愛しており子供を引き取って離婚する。元嫁の姉夫婦との付き合いや同僚との付き合い。久遠がいればいいと思ってた20年前を思い出す。
脇役もいい。沖縄の離島の琉球の虎の元チャンピオンボクサー。颯の同僚で美大生と付き合う野上。
すげー甘いというか懐かしい。本気で恋をして、それしか無かった頃を思い出す。そして、それを40代のもう終わった箇所から、現実的なおじさん問題を抱えながら見る。戻れないようで戻れそうな青春。
Posted by ブクログ
ある夏の日。突然の夕立。通行人はほぼない。雨宿りできるところもない。片側三車線の道路を、車がびゅんびゅん通過していくような場所。仕事を終えた尾崎は同僚とともに、救いの神のように現れたタクシーを止める。と、同時に女性二名も同じようにそれに救いを求め、二組は相乗りをすることになる。そんな偶然の出会いをした女性の一人が、尾崎の高校の同級生だった久遠である。同僚には「何もない」と言った尾崎だが、後日、四人での会食が決まりそうになった時、敢えてそれを回避する行動をとる。その後、他の同級生などの目線で語られる高校時代、久遠の章などを通して二人の深すぎる関係が明らかになってゆく。
高校時代の語り手は、尾崎に思いを寄せていた同級生、久遠の兄、母親を亡くした尾崎が居候することになった叔母の娘、沖縄の離島に住む元ボクシング世界チャンピオン。久遠の目線から語られる過去も通して、二人がどれほど強い結びつきだったかが描かれるが、現在、なぜ、互いにべつの人と家族を持っているかは、最後のほうまで明かされない。どっちの家庭も上手くいっていないのは、二人が運命の相手だからだろうか。だけれど、再会したのち、同じようなことを考えながらも、二人はけっして一つになろうとはしない。最後の最後まで、二人の関係は終わったこととして、話し合う。
「こしあん派かつぶあん派かで、一時間議論できる」「二人でいるとき、いつも楽しそうに笑っている」そんな尾崎と久遠。不倫相手のもとに去ってゆく妻に尾崎が、「話したいことが何もない」と言うのが、辛辣だった。なんで間違えた相手と結婚したんだろう。読み手としては思うものの、二人にその後悔はないように見える。最後の久遠の言葉からもそれは確かだろう。
うらやましい初恋だった。こんなのがあったら、人生勝ちじゃんと思った。なかなかの一気読み。いいなあ(余韻)。
Posted by ブクログ
恋愛漫画を活字で読んだ感じ。
涙あり切なさありのストーリー。
最後は私の思ってた展開じゃなかったのでちょっと⭐︎減らします〜やっぱ漫画じゃないか
Posted by ブクログ
二十数年ぶりに再会した高校の同級生。大好きで離れられなくて、ただ互いがいればそれだけでよかった初恋の人。
同じプロジェクトを担うことになった二人の今と、輝いていた高校時代、そして離島に家出しての暮らし。東京〜長崎〜ゆし木島と時間と場所を行き来しながら描かれるヒリヒリするような初恋物語。
初恋ってこうなるよね。あの時点で別れた選択は正解だと思う。だからこそ今があって、再会後あの日々を美しいものとして思い出せるんだと思う。だけど家出したからこそ見えたものも絶対にある。
目に浮かぶような自然描写が美しくて、行ったことないのに長崎や離島の海が目の前に見えるようだった。
物語の構成も見事で、今の様々な問題と過去の息苦しさと、だからこそ輝く恋する思いがいい塩梅に描かれる。間に挟まれる二人の関係者たちの章が群像劇のように物語に深みを与える。
ただ二人の「イチャイチャ」の部分が長すぎて、次第に飽きてきて一体何を見せられているんだろうって感じも。私はもはや純粋なものに心を動かされなくなってしまったんだろうな。哀しい。
これは映画化されそう。
Posted by ブクログ
切ない。最後はハッピーエンドかと思ったら、そうでもないのがまた良い。久遠もオッソーも自分ではどうしようもない問題を抱えながらも真っ直ぐ生きて素敵。