【感想・ネタバレ】農業で成功するために本当に大切なことのレビュー

あらすじ

赤字、販路がない、人が続かない、JAとの板挟み…現場が苦しい今だからこそ、希望がある。30年で売上を250倍にしたレジェンド農家が、「農業は衰退産業」「放棄地問題」「高齢化で担い手もいない」といった常識を打ち破り、顧客づくりから商品開発、雇用、ブランド化、経営まで“現場の答え”を実例で公開する。

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Posted by ブクログ

 5月20日に、発売されるのを待っていて、本が届いてすぐさま読んだ。そして、いろいろ思うところが多かった。著者は、いまの日本の農業者の中で、一番の勢いがある上での、本書。文章にも勢いがある。

『農業で成功する人、うまくいかない人』で、うまくいかない人の仲間になっていたことを知った。そして、著者から高いモチベーションを持つこと。楽観的であることを教えられた。
 Facebookで、著者のつぶやきを見させていただいていたが、本書になって、まとまって読めるのは幸せだ。Facebookの断片だけでは、十分に理解できないものだとつくづく思った。

 新工場が動き出して、より新たな方向性を見出している上での、今までの自らの経営の実績を分析し、そこから教訓を引き出し、惜しげもなく、晒している姿には敬服に値する。

 著者が最も強調しているのは、「農業をしている視点」からみること。そして「農業を『家業』ではなく近代的なビジネスとして捉え直すこと」だ。良いものを作れば売れた時代は終わった。それは、1ドル360円の時代だったからだ。顧客が何を求めているかを徹底的にリサーチし、消費者の要求に合わせた生産の視点を持つことが不可欠だととく。

 「日本の農家は零細である。日本の農業は小さい。日本の農業は弱い」「農業は衰退している。農業は非効率」と言われているが、「農業者が減ることは、競争相手が減ることであり、農地を集約して規模を拡大して生産性を高めることができることであり」、そんな時だからこそ、農業経営者にとってチャンスだ。仲間をつくり、グループ化することだ。戦前の日本の農業は、地主を中心とした大規模経営がされていたことは歴史的事実である。戦前、山形の本間家は、3000ヘクタールの農地を持ち経営していた。

 外食や惣菜、中食産業、大手スーパーは、天候に左右されず安定して良質な野菜を届けてくれるプロの農家を常に探している。市場はいくらでもある。顧客が求める付加価値を自分で作ることである。コスト削減だけによる農業経営は、すでに限界に行き着いている。ただの原材料としての野菜出荷にとどまらず、加工、カット野菜や冷凍野菜、ミールキットなどを、自社ブランド化による直売を行うことで、利益率を劇的に高める余地が残されている産業だといい、それを実践している。ミールキットの賞味期限を3日でなく、5日にすることで大きな市場が広がった。他では代替えできない特徴のある商品を作り上げることだ。

 現在の日本の農地は、423万ヘクタールであるが、日本に住む約1億2000万人の食生活を満たすために必要な農地面積は、約1700万ヘクタール(1998年5月18日、農水省の『我が国の食料安全保障政策の今後のあり方』に書かれている。そして、「国内農地の約3.5倍の海外農地に依存している」という)到底、日本人を養うことのできない面積だ。日本の国土面積が、約3,780万haだから、半分は農地でないといけない。この頃の農水省の自給率は、カロリーベースに基づいている。金額ベースではない。不思議なことに、著者もカロリーベースで自給率を話している。

 著者は、農業者が「需要にあった生産をしないことが問題」であり、「コメの消費拡大のマーケティングをしてこなかった農業者の問題」と手厳しい。
 そして、農業が衰退しているから耕作放棄地が多いというが、生産性の上がらない農地が見逃されている。福島県は2万5,226ha で全国1位と言われるが、除染されていない農地、除染されていても栽培が困難な農地があることをきちんと指摘しないといけない。それをどうするかも、福島の大きな課題でもある。

 「農家は、高齢化してやる人がいない」と言われているが、1000万円以上の農家を含まれ上位12%の農家で、日本の農業生産額の約80%を賄っている。つまり、1000万以上の農家が増え、農業を担っている。若い農業経営者が、雇用を生み出し、生産性を高めているという日本の現実をみるべきだという。
 アグベル、ソイルパッション、成田ケンコーファーム、株式会社日本農業などの個性的な農業経営者が生まれてきている。

 農産物に付加価値をつける。顧客を創造することが重要で、著者は「農業経営の良し悪しは、規模の大小ではなく、顧客の有無で決まる」と言い切る。「自分の経営規模に合った顧客」「自分の考え方にあった顧客」「採算の会う価格で購入し続けてくれる顧客」が、良い顧客と言える。
 また、農業には効率性が求められるが、お客様からすれば「効率性」は全く関係ない。今の農業は「効果性」を追求することが必要である。効果性の追求とは、「欲しくなるもの」「お役立ち度の高い商品、サービス」や「共感を生む取り組みや仕事のやり方、商品」である。顧客が言おうとしても言葉にならない、隠れた潜在的な要望をどれだけ形にできるかである。

 現在、著者の会社では、「有機コンニャク」「有機冷凍野菜」「賞味期限延長技術」「糖絞り大根」「添加物を使用しない漬物製造技術」「下ごしらえ野菜」などが、効果性の追求の中で生まれた。

すべて現場に真実がある。問題は常に栽培の現場、加工の現場、営業の現場、流通の現場で起きている。「現場・現実・現物」を中心に置く三現主義に徹する。迷った時には現場に行く、問題があれば現実を見て判断をする。さらに、現物を前に議論をする。これが問題解決を最短にできる仕組みである。
経営者は素直であることだ。素直に現状分析をせず、個人的な先入観や固定概念、経験則、成功体験だけから出された方針は、実行する段階で様々な衝突が生まれる。

 野菜クラブは、独立支援プログラムを作り、安定供給に一歩近づけた。そして、「大切な誰かのための農業を行う」ことで、「感動農業、人づくり、土づくり」という経営理念を、社長自ら進め、社員が共感して、共に作っていく。そして、「未来は私たちの思いの中にある」

 「農業はキツくて儲からない」という先入観を捨て、「科学的な生産管理」と「顧客志向のマーケティング」を掛け合わせれば、農業ほど可能性に満ちたビジネスはない、ということを著者は自らの背中で証明している。

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2026年05月24日

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