あらすじ
中世においては西ヨーロッパの人々を恐怖に陥れたバイキングとして、現在では高度な福祉を実現させた国家として世に名高い北欧の国々。その歴史は平坦ではなく、隣接する強国ロシアとドイツを交えた度重なる戦争や民族独立運動、緊迫した国際情勢の中での苦難に満ちた中立外交などからなる。本書はデンマーク、スウェーデンを中軸に、両国から分離・独立したノールウェー、フィンランド、アイスランド北欧五カ国の通史である。
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Posted by ブクログ
北欧という地域について古代から近現代史まで概観できる一冊。バイキングとして西洋に侵略した時代から、ロシアの圧政と北米移民、貧困の時代を経て現在福祉国家として世界で最も裕福な地域の一つとなった北欧国家のデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの興亡が分かる。自然資源の豊富さや、恵まれた地理的条件、優秀な国民性に加えて、社民党や労働党が何十年もの長期政権で福祉政策を実行維持し続けてきたことで、資本主義の競争原理と社会主義の分配原理を調和させることに成功した。旧ソ連市場喪失による経済停滞も見られたものの、新しい国家のモデルを示し続けている北欧には今後も期待が向けられ続けるだろう。
Posted by ブクログ
まさに歴史は物語である。知識としての歴史は、その詳細な年代や出来事、関連する人間の名前を詳細に覚えておかなければならず、だからこそ受験科目などはどうしても暗記科目になりがちである。しかし、歴史を物語捉えると、シンプルに面白い。話の流れさえつかめば、知識は自ずと付いてくる。そういう意味で、ほとんど知らなかった北欧の歴史について大きな流れを新書レベルの量で伝えてくれる本書は非常にありがたい。出版が1993年であり、マーストリヒト条約直後なのでEU加盟後については詳しく書かれていないが、そこまでの歴史を知るには十分だと思う。
北欧とは、スカンジナビア、やノルディック・カントリーという言い方によって異なるが、一般にはノルウェー・スウェーデン・デンマーク・フィンランド・アイスランドの5カ国を指す。その中でも特に中心となるのが、スウェーデンとデンマークだろう。この2国が北欧の物語の中心であった。といっても古典の時代、北欧ではバイキングの時代には、そういった国の分け方の概念はなかった。しかし、徐々に国が形成されていく、おもに覇権を逃げる王国はスウェーデンとデンマーク、ノルウェーはいずれかの属国扱いの時期が長かった。フィンランドもスウェーデンの権力下にあることが長かったが、ロシアの圧力にもさらされていた。
北欧各国自身が、ロシア・ドイツ・フランス・イギリスといった強国の間に置かれ、そのパワーバランスに振り回さえれながらなんとか自立を保ってきたことがわかる。特にノルウェーがEUに加盟していないのは、そういった支配関係からの解放という背景がある。そういった地政学的な面から見て、強国に飲み込まれないためにどうするか、という点は日本にも参考になる点もあるのかもしれない。
同僚などと話していても、時々歴史的背景を知っていることが前提の話になることがあるので、これで少し理解することができそうだ。
Posted by ブクログ
バイキング、各地域への民族移動、北欧神話、大国の狭間で揺れ動く中立主義、そして福祉国家のモデルケースと様々な歴史の場面で登場してくる北欧地域の諸国の歴史を読み物としてまとめています。所々で歴史の表舞台に登場するものの、時系列的に"線"として扱われることが意外と少なく、かといって国別にまとめるのは難しいだけに、本書の企画は非常に貴重でアプローチも成功していると思います。
北欧地域史の入門書としてオススメです。
Posted by ブクログ
今まで、北欧といえば「音楽」の印象が強くありました。
スウェーデンはアヴィーチー、ノルウェーはカイゴ、デンマークはマーティン・ジェンセン、フィンランドはダルード、アイスランドはビョークといった感じです。
北欧で、戦争と和平の歴史が長く続いていたことを、今まで知りませんでした。
Posted by ブクログ
古い本ですが、ロシアやドイツ・イギリス・フランスなどの大国の干渉をいかにかいくぐって自分たちの国家を作って行くのか?涙ぐましい民族の営みを実感できる著作。北欧とはデンマーク、スウェーデン、ノールウェー、フィンランド、アイスランドの5ヶ国のことです。
Posted by ブクログ
高校の世界史の知識がある人が、ダイジェストとしての北欧史の知識を加えるには良いかもしれません。地図を増やしたり、国別に王や首相(大統領)を纏めたものがあればもっと良くなるかも。コラムを付けて楽しませる工夫をしていた所は入門書としては◯。
Posted by ブクログ
北欧といえば、東山魁夷の絵のような森と湖やフィヨルドや白夜、北欧デザインの家具や食器、高福祉社会、ムーミンであり、そのイメージは「寡黙で真面目で穏やか」だったのですが、この本を読んで歴史としては「穏やか」どころではないことを知りました。つい最近まで三国志状態だったという感じです。
デンマークとスウェーデンを中軸にした数多の王朝の盛衰、隣国ロシアやドイツとの度重なる交戦、民族独立運動によるフィンランドとノルウェーの独立、二度の世界大戦と中立外交と、自国も含めた周辺状況が目まぐるしく変わっていく通史でした。
以下、興味深かったエピソード。
- スウェーデン王家の跡継ぎに、スウェーデンの国民議会がフランス人のベルナドッテを据えた。当時のナポレオン麾下の名将でカール14世ヨハンに改名する。ベルナドッデ王朝の開祖。そのカールヨハンがフランス軍との戦争でナポレオンを敗走させる。当時同君連合だったノルウェー王でもあり、現ノルウェー王宮に銅像がある。
- フィンランドの分離独立運動を日本の工作員が支援していた。当時、日露戦争が起こっておりロシア国内の革命派を鼓舞するために工作員が送られていた。
- 第二次世界大戦を通してスウェーデンは中立を通した。中立を守るために最後の一兵まで戦う決意表明を首相が行い、兄弟国ノルウェーを見殺しにし、ナチスドイツからのさまざまな要求に対して忍耐に忍耐を重ねながらギリギリの弾力的な政策を行い、3年かけて軍事力を整えてドイツに陰りが見えたところで譲歩政策を少しずつ転換し、今度は連合国の要求に応じていった。それは交戦国に対する公平さを意味する中立ではなく生存のための戦いだった。
Posted by ブクログ
▼「北欧三国」と聞いて、ノルウェー、スウェーデン……フィンランド?デンマーク?と、なってしまう人も少なくないのではないか。
▼そんな人にも朗報。本書ではその4カ国が全て網羅されている。ヴァイキングの時代から歴史が紐解かれている。
▼スウェーデンの中立(平時では厳密には「非同盟」政策)や、北欧諸国が採った「第三の道」。副題にもある「モデル国家」形成の歩みがここに記されている。
▼一方で、彼らの「平和な(福祉)先進国」のイメージとは裏腹に、動乱の世を生き抜いてきたことに意表を突かれることだろう。まさに「歴史とは動く地図」なのだと思わされる。
Posted by ブクログ
我々日本人にとって北欧とは「福祉の国」意外にぱっと思いつくことはあるでしょうか。本書は高校世界史ではヴァイキングやカルマル同盟その他限られた範囲しか学習しない、日本人にとっては「遠い国」北欧史の概説をわかりやすく解説しています。独特の船を漕ぎ、南ヨーロッパやアメリカ大陸まで行き来したヴァイキングだけでなく、ヨーロッパ随一の英明君主との声も高いグスタフ=アドルフそして「名君の影に名臣あり」を地でいく名宰相オクセンシェルナ、ロシア・デンマークとの大北方戦争で轟く銃声を「これぞ我が音楽」と言って猛攻を加えた若き英雄カール12世、悲劇の国王クリスチャン7世など寒い北欧の熱き人々を様々な角度で紹介しています。もちろん人物史に終始せず、北欧各国のおかれた状況や時代背景にも十分にふれており、北欧史初学者にはもってこいの本だとおもいます。
Posted by ブクログ
北欧5か国の歴史を追うと、力関係とか盛衰がわかって面白い。
(メインの関心である)フィンランドの話はなかなかでてこないが、それもそのはず(しばらくの間北欧の歴史はすなわちデンマークなりスウェーデンなりが主役であるのだから)。
しかしスウェーデンやロシアとの関係であるとか、ロシアとの戦争を経て(そして日露戦争を踏まえて…)100年前の独立に至ったなど、よくわかった。
バイキング以降の通史をつかむにはよくまとめられていてよかろうが、全体的に、初学者にとってはやや詳しすぎるかもなぁ・・・
(といっても自分はもともと世界史が苦手だったのを思い出すのだが。。そういう意味では、時々でてくるコラムには救われたかも)
Posted by ブクログ
北欧の歴史概略。基礎知識用。
歴史知識ゼロの私には北欧といえば福祉社会保障おしゃれ家具なんかの豊かなイメージしかなかったんだけど、ヨーロッパの中心からみると東欧と同じように不可解な異物だったのか。
デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランドで北欧らしいけれど、この本で扱われるのは主にデンマーク・スウェーデン・フィンランドと一応ノルウェー。
デンマークvsスウェーデンがノルウェーとフィンランド(とアイスランドとグリーンランド)を取ったり取られたりという歴史を考えるとデンマーク・スウェーデンがメインになるのは仕方ないとして、力の入れ方に偏りがあるのはいかがなものか。
フィンランド支配のスウェーデンと重要なデンマークはともかくノルウェー・アイスランドはわりとおざなり。
配分にも書き方にも、フィンランド好き好き☆ソ連きらーい!という著者の好み(思想というには弱いがそれに近いもの)がナチュラルににじみ出ている。
歴史をゆがめるほどではないにしてもフィンランドだけ「雄雄しい」「魅力的な」「国王陛下」「囚われの」など感情入りまくりな書き方なのはどうかと思う。
でも1993年出版ならある程度見方が偏るのは仕方ないのかな。
これ一冊では足りないけれどざっと流れを予習するにはいい。
副題の「モデル国家」が何のモデルを示すのかよくわからなかった。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
本書はデンマーク、スウェーデンを中軸に、両国から分離・独立したノールウェー、フィンランド、アイスランド北欧5カ国の通史である。
[ 目次 ]
序章 バイキングの遠征―北欧古代の冒険家たち
第1章 キリスト教と反乱の時代
第2章 剣の時代
第3章 ロココの時代
第4章 動乱の時代
第5章 独立の時代
第6章 戦間期の時代
第7章 大戦の時代
終章 曲り角の時代―冷戦終結後の北欧
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