あらすじ
貨幣経済を刺激した田沼時代は商業の活性化に貢献したが、農村、都市双方に疲弊を招き、しかも浅間山爆発や大洪水という自然の脅威によりその政策は破綻、各地で百姓一揆や打ちこわしが続出、ついには定信の登場となる。彼は内外に危機を抱える幕府の立直しに腐心、直面する課題を慎重に処理して「名君」を称されたが、気紛れな世間に、いつしか保守政治家の烙印を押されて挫折し権力の場を去る。バブル崩壊の今、定信は甦るか?
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
藤田覚『松平定信』(中公新書1142)
最近めきり藤田先生のファンになりつつあります(笑)
今回は寛政の改革を推進した老中首座の松平定信の本です。
前回は芸術面から見た定信だったので今回は政治面、特に老中として活躍していたある意味彼の人生の最高潮のときの本を選んでみました。
この本では定信の行った政策を、社会政策、朝幕関係、対外関係の三つに分けて展開しております。
中でも特に面白かったのは対外関係ですね、今は隣国といろいろと問題があるのであまりネット上ではおおきな事言えませんが…^^;
しかし、鎖国を祖法とした定信本人が消極的開国論者であったというのは、政治の中枢に立つ人間の、いかんともしがたい境遇が窺えますね…
しかし、定信を天女みたいに表現したり、定信の外交政策をハリネズミに喩えたり藤田さんの文章は期待を裏切らずに面白いので大好きです(笑 」
Posted by ブクログ
藤田覚「松平定信」(中公新書)
1993年初版なので最近の田沼ブームは反映していない。ただしバブルの頃も田沼意次は人気があったらしく、著者はそれに反発して松平定信を顕彰したい思いもあったようだ。
本書では商業優先の田沼政治が飢饉等の自然災害に対応できなかったことから、定信の重農主義的な政治が始まったという。具体的には農業の振興、さらに米穀を都市や地域で備蓄させることで飢饉を防ごうとした。また武士に商業的価値観が浸透することを嫌い、また幕府や武士の威信を回復するため朱子学を中心に武士への教育を浸透させようとした。その他、朝廷と幕府の名分論、京都御所の復興、朝鮮との国交などにもふれている。なお本書での記述は定信が老中として幕府を運営していた時に限られ、白河藩主としての統治には触れられていない。