あらすじ
友達もいない、恋人もいない、将来の希望なんてもっとない。
貧困にあえぐ苦学生の真央が出会ったのは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残り・四葉。
「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」
彼女に託された一つの宝石箱が、真央の人生を変えていく。
今度の柚木麻子は何か違う。
これがシスターフッドの新しい現在地!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
オールノット(All knot)とは、真珠のネックレスを作るときに、すべての真珠(珠)と珠の間に一つずつ結び目(ノット)を作って糸を通す仕立て方法のこと。
万が一糸が切れても真珠がバラバラにならない強い結び方のオールノット。
英語のall notは「少しも〜ない」「全く〜ない」という意味だけでなく「すべてが〜というわけではない」と希望が持てる言葉にも。
そして主人公を含め一見接点がなさそうな登場人物達が肝心の四葉とは疎遠になっていても、四葉を通して繋がっていること、紆余曲折ありながらもそれぞれに前を向いて歩きだしているところ、歩き出そうとしているところ、自分の人生を一度諦めた人でもall not「すべてがダメになってしまったわけではない」と思わせてくれるストーリーに、自分もこれからでも遅くない…全て無駄なことなんてない…と思わせてくれる作品です!
そしてなんだかんだ物語に出てくる四葉がどのキャラクターよりも、粘り強く這い上がっているのが最初に読み始めた時の四葉の印象と全く異なり
、好きだなぁとなりました!
感想を見ていると評価が別れる作品のようですが、私はとても好きでした!
Posted by ブクログ
自分とか自分が知ってる人が出てくるような本だった。ずっと家で読んでたら涙が止まらなかったと思う。
2026年読んだ本のベスト3に入る。カバーがかわいくて、著者がインスタに上げてた「女三代記が好き」というコメントがまさに有吉佐和子にはまった自分と同じだから気になってたら本屋さんでたまたま見かけて買ったんだけど、文庫買ってよかった、読み返したくなる本。平野啓一郎の本心とも重なる。女子校の感じが桐野夏生のグロテスクも思い出させるし。魅力的なキャラクターで笑いもあるところが桜庭一樹の赤朽葉家の伝説みたいで面白いんだけど、ちゃんと著者の意思も感じるところが好き。登場人物はみんな「そうそう」と思うところもあれば、「なるほどそう思うんだ?」と納得させるところもあって、それが生身の人間のようですごくいい。ああいい本だった。(語彙皆無)そしてほかはBUTTER くらいしか読んだことないけどとにかく料理がおいしそうな本を書く人だなーと思った。
Posted by ブクログ
単行本で一度読んでいたが、もう一度読み直してみると印象が全然違った。
前回読んだときは主人公は努力をしているのに全然報われておらず、四葉さんも元お金持ちで優しい人という印象しかなかったが、どちらも逞しく、逆境でも自分の人生の主導権を握っていく芯のある人だと思った。
物語の最後も希望が持てる展開でよかった。
Posted by ブクログ
BUTTERもそうだったが、洒落た料理や飲み物がたくさん出てきてお腹が空く。屋敷や四葉さんの部屋にあるインテリアが鮮明に描写されているので、なんかカラフルな小説!という印象。
繰り返し出てくる、寝れない夜に通販番組を見るというシーンがなぜかすごい好きだった。
Posted by ブクログ
◾️record memo
四葉さんがどんな場所でも浮かないし、地味だけれど、決して野暮ったくはないのは、着ているものの素材と縫製にあったことを真央はやっと知る。彼女の不思議な力を紐解いていくと、そこには必ず、明確な理由があった。
「なんか、あの時、自分のことは自分一人でやらないと、大変なことになるんだなって気がついた感じですかね。私が本当に相手が大切でやったことでも、感謝されるだけでは生きてはいけないし、感謝される可能性がゼロってこともあるから」
ああ、この人もか、と胸が冷えた。同級生でもバイトの仲間でも、ある段階から、自分とは線を引く。真央が余裕がない目をしているから、歯止めが利かなくなるまで甘えられたらどうしよう、と警戒されているのだ。
宝飾品そのものより、四葉さんのこうした話を聞く方が真央ははるかに好きだ。毎日、あれももっていない、これもできない、と漠たる不安に押しつぶされそうになるけれど、四葉さんと一緒にいると、やるべき具体的道筋をしっかり示してもらえるし、それが押し付けがましくもない。
「真央さんは自分の人生を自分で支えられると思う。だから、これはあなたの失敗のために使って。失敗は誰だって、していいものなの。祖母も母も、喜ぶと思う。受け継ぐのなんて不眠だけでいいの。だから、もうこれからはそんなに、気を張らなくていいのよ。真央さん」
手取り十五万五千円。水道光熱費、家賃、スマホ代。さらに奨学金返済となると、学生時代とほぼ変わらない節約生活だ。いや、身なりに構わなくてもよかったあの頃の方がずっと生活は楽かもしれない。さらに、売れ残りのお惣菜ももらえないのが痛手だった。それでも、絶対に身体は壊せない。
実家から通勤していて給料はすべて自分で使える後輩、卒業した大学の入学金の額などまるで知らない新卒で入社した正社員が隣で働いていて、千五百円のランチに行かないかと声をかけてくる。まれに奨学金返済中の非正規社員を発見して、心を許しかけても、自分よりローンが少なかったり、家族と頻繁に連絡を取り合う様子を目の当たりにすると、どうしても好きになれなくなって、自分から距離をとった。
真央も四葉さんも頼れるものが自分しかいない。寄り添うことが危険になった以上、倒れないように自分でまっすぐ立つことでしか、彼女と繋がっていられなかった。
「わかる。うちの学校の子って、みんな優しいよね。のんびりしているっていうか」
と、実亜子が頷くと、四葉は少し考えてからこう答えた。
「優しいというより、全員満たされているんじゃないの?生活やお金で苦労してないから。自分とは完全に違う人がいて、わかりあえないとしても、何かが奪われる不安がない。別に心をかき乱されないんじゃないのかな。私もそうだし、ミャーコももちろんね」
「大丈夫だよ。オール•ノットの真珠にすれば。あんたみたいながさつな子も。これは絶対に切れない、そういうつなぎ方をしているんだよ」
「それはall notだよ。このつなぎ方はall knotね。あとall notは全部ダメって意味もあるけど、全部ダメってわけでもない、っていう意味もあるんだよ。そうだよ。全部ダメってわけじゃないんだよ。なにごとも」
なりふり構わず誰かをつなぎとめようとすると、心は寂しいままだよ。相手はあんたじゃないんだからね。あんたは世界に一人のあんたなんだよ。
自分には自分を見失わない強さがある。一体何を怖がっていたんだろうか。同時に何に対してこんなに申し訳ない、と思っていたのだろうか。
全身が強張って起き上がれない朝もあったし、何を食べても苦い味がこみ上げる時期も長かった。こんな暮らしは早晩立ちいかなくなるという予感はどんどん強くなる。
いつか、親も死んで、竹本さんも死んで、一人になるんだよなあ。そもそも私も、いずれ必ず死ぬんだよね。死ぬ時って、きっと全部、後悔しちゃうんだろうな。私、それに耐えられるのかな。
そう言ったら、四葉は不思議そうな顔をした。この人、本当に恵まれているんだな、と思った。ネットから距離をとって生活できるのは特権の証だ。舞にとって、インターネット黎明期から三十四歳の今日までそこは全世界だった。
「全部、私にください」
と、舞は声を振り絞った。十一歳からずっとこの言葉を、この女にぶつけたかったのだ。だから、自殺だけは踏みとどまってきた。
「あなたの人生、みんな私にくださいよ」
「ミャーコ、それは違うよ。目に見える傷がなければ、暴力じゃないなんてことない。あれは、暴力だよ」
「あら、私たち、素敵だと思うけど?」
ごく当たり前の調子で彼女は言った。言われてみれば、化粧気もなく、着古したカーディガンとブラウス、スカートといういでたちでも、仕立てがいいせいか、それともぴんと伸びた背筋や所作のせいか、四葉はこの空間で様になっている。
周囲を見渡してみても、カウンターには流行りの服を着た若い男女が一組、ふた回りは歳が離れた女性にカクテルのうんちくを聞かせている高価な時計をした中年男性、そして、隅のテーブル席で商談中らしき声の大きな軽装の男性客たち、いずれも、この空間を意識しすぎていて、芝居でも打っているかのようだった。
だんだんわかってきたが、四葉には揺るぎない自信がある。一葉さんにも、おそらくみつばさんにもないものなのではないか。彼女の隣にいると、自分まで謎の力に守られている気になる。
「舞さんの着こなしは、いつも素敵だわ。背丈があって、なんでも似合うんだから、おじいさまの服だけじゃなくて、もっと色々着てみたらいいのに。今度、元町にお買い物にいかない?よければ、オーダーメイドを作らせてちょうだいよ」
今日の舞は、山戸幸太郎のシャツの襟をぶどう酒色のベストから引っ張り出し、ベルベットのパンツを合わせていた。こういうところがお嬢様だな、と舞は苦笑する。家を売るまでに困窮していることなんて、もう忘れてしまったみたいだ。
自分に趣味や好みなんていうものはないと思っていたけど、山戸家で暮らすうちに、心惹かれるものや場所の特徴が浮かび上がりつつある。クラシカルで紳士然としていて、硬い様式美で守られた何か。優雅な鎧。あの中に入っていくと、舞は心からほっとする。
「ほら、宝石でピカピカに飾られた、王子の彫像の話。その王子には心が備わっている。そこにツバメがやってくる。ツバメは王子の指示で、王子を彩っている宝石、サファイアとかルビーとかを一つ一つ剥がし、貧しい人たちの元に届ける。自己犠牲の精神で町のみんなを幸せにしようとする。王子はボロボロになって心臓まで失って死ぬ。最後はツバメも死ぬ。バッドエンドのやつ。アンデルセンの童話だっけ」
「宝石の価値は普遍じゃない。時代とともに変わるのよ。今は三百万でも来年には三十円になったりするのよ。逆もまたしかり。一生モノなんてどこにもないのよ。真珠だって有機物なんだから。それだけじゃなく、売り文句ひとつで石ころにも資産にもなるのよ。宝石はね、何を売るかじゃない、誰が売るか、なの」
「幸福な王子のお話って、どうしてツバメも王子も不幸になったかわかる?宝石を人にあげるだけでやりっぱなしだったからよ。ツバメと王子が力をあわせて、宝石を一円でも高く売って、現金化して街にばらまくべきだったの。それをとっかかりに事業化して、自分たちも生きていけるようにするべきだった。世間知らずだったのよ。自己犠牲というより自己満足の物語よ。やり方が悪かったのよ。全員バカ」
「結局、あの裁判も女同士が代理で戦わされただけで、あの人は無傷だったんだよね。今では、なんだったんだろって思う。三千万だってあいつが私に支払うべきだったんだよ。山戸の家を慌てて売る必要もなかったんだよ。四葉さんや一葉さんを私が恨む必要もなかった」
なにかと間の悪い人生だったが、初めてこれでよかったと真央は思えた。野崎さんとの結婚をやめたことも、転職のタイミングが見つからず現場を離れても義務感で働き続けたことも、身体を壊した時に会社にしがみ続けたことも、今尚「ブリティッシュ•ベイクオフ」で英語を学び続けていることも。全部、悪くない判断だったと言えるのではないか。
でも、全部が全部ダメなんてこと、本当にあるのだろうか。
Posted by ブクログ
初めての柚木麻子さんの作品、この新作は広告で見て面白そうと期待して読んだ。
真央と四葉の2人に関する初めの章では、なにが起こるんかとワクワクしながら読み進めれたけど、コロナ禍〜疎遠になって四葉の過去・回顧的な章に入ると急に登場人物増えて、誰視点で語ってるのか分かりづらくなってしまった…
誰かに救いの手を差し伸べるのに、完璧でなくてもいい。という解釈には共感、良いなと思った。
Posted by ブクログ
大河なんだろうけれど、未来までとは…しかもだいぶ後ろ向きな未来で…みやこさんや舞さんの物語も必要なんだろうけれど、真衣と四葉のことをもっと知りたかった。ビーフティは飲んでみたい。