あらすじ
ブッカー賞受賞! 近未来アイルランド版『一九八四年』
近未来アイルランド。全体主義国家へと変貌を遂げていくなか、生物学の研究者で四人の子供の母でもあるエイリッシュは決断を迫られる。国家警察に連行された夫を待つか、子供たちを守るためカナダへと亡命するか。2023年ブッカー賞受賞の傑作ディストピア小説
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読み始めたら止まらないページターナーで流石は2023年のブッカー賞受賞作品。
極右政党が政権与党となり全体主義へと社会が変容していくことに主人公が翻弄される様を描くのはミシェル・ウエルベックの「服従」を思い出した。「服従」は露悪的で皮肉めいたユーモアも強かったけど、本作の不穏なトーンで徐々に普通の家族の日常が崩れてゆく語りは一貫してシリアスだ。
政府軍に与しある種幸せな飼い犬になるか、民主主義や自由という理想のために多くを失うかを読み手に突き付けてくるようで落ち着かない読後感がある。
物語後半の主人公エイリッシュの覚悟を決めた様子は痛切で胸を締め付けられる思いだった。ラストシーンには冒頭のエピグラフが響いてきてこの物語が特別なことではなく誰しも起こり得ることであり、パレスチナやウクライナで起きているという現実とも重なって物語から現実に引き戻されるような感じがした。
Posted by ブクログ
職場の仕事仲間の推薦図書。最初は正直、あまり入り込めなかった。他のディストピア小説、例えば1984年とは異なり、既にディストピア的社会が成立しているところから小説が始まるわけではなく、この小説では平穏な状況から徐々に変わっていく。が、極右政党が政権をとり、国会緊急権法といういかつい法律が成立したタイミングで普通大騒ぎになるはずだが、その描写は小説のなかに無い為、当初は違和感がぬぐえなかった。途中からは気にならなくなったが。
国という土台が崩れ、家族がバラバラになってしまう。戦時下の恐怖で心をすり減らす。冒頭の警官がやって来て家庭に入り込んだ暗黒は、ラストシーンでは暴力的なほどに一面を覆いつくしていた。
この状況を避ける為にはこうするべきかを考えるのも良いし、戦時下の市民の恐怖・悲しみはイランやガザで起こっていることとして考えたい。
ベイリーの拷問死以降のエイリッシュは心がズタズタになり、生きながら死んでいるようだった。我が子の拷問死した体を見てしまうなんて地獄だ。想像出来ない。その後のモリーの謝ることなんて無いという声も涙ぐましい。髪の毛を無理矢理切らされているのに。
世界の終わりは一部で起こっているように、こんな絶望も現実のどこかで起こっていると思うと、やっぱり戦争反対なんて基本のキなんだ。
Posted by ブクログ
正確に言うとアイリッシュ・ディストピア文学。
早川書房の新シリーズ第一作目として手に取ったが、重くて陰鬱な気持ちに圧倒されてしまった。昔は?、まだ学生の頃はディストピア小説を読んでも距離が保てていた気がするが、いつの間にやらずぶずぶするようになって、今回はヒイヒイ言ってしまった。重すぎ、、
でもこうやって独裁政権に滑り落ち、監視社会になっていくんだろうと思うと、本当に人事じゃないし、こうなった瞬間に国を出ないと(いつも思ってる)、どうしようもなくなってしまう。
拷問された息子の死体を見つけるシーン、壮絶だった、、
…自分が生きている間に何か突発的なことが起きて世界が終わる、などと考えるのおはうぬぼれにすぎない。終わるのは個人の命であって、それ以上ではない。預言者達が歌うのは、時を超えて歌われてきたひとつの同じ歌である。剣の到来、炎に食い尽くされる世界、正午に地球めがけて落ちてくる太陽、暗闇に放り込まれる世界。何らかの神の怒りが預言者の口の中でことばに化身し、やがては視界から消えていく悪に向かって怒鳴り散らす。預言者が歌うのは世界の終わりを歌う歌ではなくて、一部の人々に対して過去・現在・未来においてなされた行為を歌う歌である。世界の一部は何度も何度も終わる。世界の終わりはいつも限られた地域のできごとである。世界の終わりはあなたの国や町へやってきて、あなたの家のドアを叩いたあげく、あなたではない他の人々に向けられた短い警告、短いニュース、語り継がれるできごとの遠い響きになり果ててしまうのだ。…(p.336-7)
Posted by ブクログ
自分が主人公の立場だったら?‥妻として親として、個人の立場として、初っ端からどん詰まりと言うか、他人事とは思えない現実味にどんよりして、なかなか読み進められない。一旦休憩して、あとで読む‥(しばらく放置)
こんな未来が来るとは思ってもみなかった‥淡々と静かに意味がわかるほど怖い。
Posted by ブクログ
もっと悲惨で劇画チックなものを期待していたので余計にがっかり↓
※形而上学的なものを期待している人には読み応えがあるのかな(まぁ表題が「預言者の歌」なので本筋はこちらの方なんだけれども…)
ましてや最期が糞詰まりで読後感もスッキリしない。
※私は読後も嫌な気分が消えないようなインパクトを期待してたので…
具体的には…
ディストピアものとの前触れだったのに、グロい展開は次男が…になった最終版から。
特に反乱軍が威勢を振るう中盤は「もしかしてハッピーエンド?」と思わせるようなユル~い展開。
独裁政府やそれにたなびいていく人間の汚い部分をもっと露骨に描写する場面が欲しかった。
あと結局父はどうなったかとか、カナダの妹が何だったのかも分からず仕舞い
特に最後の出国は妹の計らいだったはずなのに、なぜあんな風になったのかがイミフ
※どうせなら妹は実はナショナルアライアンス党を支持する人物であり、ラリーやマークが消されたのも妹の策略なんてオチでも良かったかな
Posted by ブクログ
政権が変わり、昨日まで正しかったことが悪になり、さまざまな権利が剥奪され日常が崩れていくというディストピア。
「 」がなく、段落の区切りもほとんどない。
ひたすら文字が攻めてくるような文章は、イカつい内容にあっていると思う。
Posted by ブクログ
全体主義に侵されてアイルランドがみるみる壊れていく様を、夫と四人の子を持つ一市民の視界だけで息苦しく描き、泥沼の地獄を見せられる小説。分断が怒りを生み溝を深める様は、現実世界でも、冷静なはずのリベラルな知人にさえ起きていて、引き金はそこにあるように思えて怖くなる。