あらすじ
イングランド北東部、ノーサンバーランド州。ある夏の夜、楽しい外出から帰宅したジュリーが見つけたのは、死体となった息子ルークだった。絞殺された彼の亡骸は浴槽の中に沈められ、水面には野の花々が浮かべられていた。友人を水難事故で喪って心を病み、数週間前に退院したばかりの少年がなぜ? 頑固で偏屈だが有能な地元署の名物警部ヴェラ・スタンホープが捜査を進めるうち、海辺で新たな他殺死体が発見される――大人気ドラマ「ヴェラ~信念の女警部~」原作にして、著者クリーヴスの名を一躍高めた傑作ミステリ・シリーズ、ついに邦訳。/解説=三橋曉
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Posted by ブクログ
シェトランド島シリーズの作者だったので。
冒頭で殺人事件が起きるが、
登場する人々はどこにいてもおかしくない普通の人々、に見える。
学習障害の息子と思春期を迎える娘を持つ母親。
その元夫と、現在の看護師の妻と幼い娘。
四人の子供を持つ初老の大学教授と専業主婦の妻と末息子。
教授のバードウォッチング仲間の男性たち。
若く美しい教育実習生と元恋人。
この中の学習障害の息子と教育実習生が、
それぞれ浴槽と海で死体でみつかる。
水に浮かんでいた花とともに。
二つの殺人の関りがつかめないまま、
隠し事や小さな嘘、不倫、偶然の出会いが積み重なり、
全ての人が怪しく見えてくる。
犯人と思しき人物が次々と現れるのも、見事だ。
しかしなんといっても主人公の刑事が秀逸。
独り暮らし、部屋は散らかり、酒飲みで、友達はおらず、
クレーンが必要かと思われる巨体、
捜査を通じて幸せな家庭を見るたびに、自らをふりかえったりする。
男性の刑事としてはありがちと言っても良いような主人公だが、女性。
素晴らしい。
そんな家庭生活とは無縁なヴェラ警部が、
事件関係者に好感をもたれる青年であり
初めての子供が産まれて喜びにあふれる若い部下を、
退屈な男と最後に切って捨てるのが痛快だった。
Posted by ブクログ
イギリスの女性作家、アン・クリーヴスのヴェラ警部シリーズ初邦訳。シリーズとしては三作目。
日常生活では少し問題があった少年が、自宅のバスタブで絞殺される。沈んだ死体の横には花が添えられていた。手がかりもなく、容疑者候補も見つからないまま、海岸で似たような死体が見つかり…
ペレス警部シリーズ、マシュー・ヴェンシリーズに続く第三のシリーズ開幕。作品自体はかなり昔からあり、ドラマ化もされている(すでに完結済み)。ジミー・ペレスほどクールでなく、マシューほど清廉でもなく、言い方は悪いが普通の中年女性が主人公。好みは分かれるかもしれないが、逆にリアルで新鮮だった。
展開としてはいつものアン・クリーヴスで、視点となる人物が数名で、ストーリーが進むごとに意外な素顔や事実がわかってくる。
ただ今作は意外にも、後味がそこまで良くなく、クリーヴス作品にしてはなかなか珍しいかもしれない(弩級の終わり方の作品は一つあるけど…)。
古い作品だが、風景の描写、鳥の描写は相変わらず。なにより抜群の読み心地。引き続き刊行していってほしい。
Posted by ブクログ
アン・クリーヴスのシリーズ最新刊と思ったら、全然別のシリーズの初翻訳。シリーズはドラマ化されて人気だそうだけど、有料配信サイトを契約する元気は起きず、今後シリーズの翻訳が進むことを期待するのみ。カバー絵にもあるとおり、鮮やかな絵画が連続殺人の見立てに使われているのは、ラファエル前派のミレーの代表作、オフィーリア。この作家の特徴である人物の心情や背景を描くスタイルが良く出ており、ドラマ化第1作に選ばれたのも納得できた。結末自体のすっきり感は少ないが、読後感は悪くない。もうすぐシリーズ新刊も出るし愉しみ。
Posted by ブクログ
2026年の21冊目は、アン・クリーヴスの「水面の弔花」です。25年の9月に読んだ、マシュー・ヴェン警部「沈黙」以来のアン・クリーヴスです。こちらもヴェラ・スタンホープ警部を主人公とする警察ミステリーとなります。
舞台は、イングランド北東部ノーサンバーランド州です。サッカーで有名なニューキャッスルの北と言ったら分かり易いでしょうか。西は、ワシントン・ポーで有名なカンブリアです。犯罪者にとっては、受難な地域ではないでしょうか。
自宅の浴槽で少年の遺体が見つかります。浴槽には、野の花々が浮かべられていました。更に、海辺の雨裂で若い女性の遺体が同じような状態で見つかります。何かに対してのオマージュなのか?2つの事件に繋がりは有るのか?(当然、有るでしょうね)アン・クリーヴスらしく、登場人物の性格が細かく、丁寧に描写されて行きます。加えて、イングランド北東部の田舎の景色が描写されます。人間関係も複雑です。最後まで、犯人の予想がつきませんでした。
派手さは有りませんが、それでも申し分ないと思います。それが、アン・クリーヴスだと思います。
☆4.7