【感想・ネタバレ】天体議会 プラネット・ブルーのレビュー

あらすじ

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水蓮との友情。兄との確執。自動人形と噂される謎の少年との不思議な出会い。そして少年たちをのせた船は、南へと出航したのか。兄を想う少年・銅貨をめぐって、星の少年たちの孤独を描いた、長野まゆみの"星の王子さま"。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

久しぶりに長野さんの本。
発売間近だった次に読む本との間をもってもらおうと読み始めた。理由は暑くて、薄い本だったから。

休暇終わりの地下鉄の駅での朝から物語は語られ始める。
銅貨は友人の水連を待っていたが、なかなか彼は現れない。
やっとやって来た彼の片目には眼帯が付けられていた。
理由は分からないが、朝起きると腫れあがっていたという。
端正な水連の顔が見られないことを残念がりつつ、二人は混みあう学生群をのせた地下鉄から撤退して、さぼることにする。二人が向かったのは鉱石倶楽部という石やそれを愛でる道具を扱いつつ軽い食事ができる喫茶がいっしょになったお店だ。天体と鉱石に強い興味を持っている二人はこのお店の常連だった。
店で朝食を頂こうとした二人はいつもの店番の大学生ではない人影に訝しむ。店番をしていたのは二人と同じ制服を着た少年だったからだ。少年は水連の眼帯を見て
「石が入っている」
という。まさかそんなもの入っていたら大変じゃないか!と言う水連と、治せるという少年を面白がる銅貨。やらせてみればいいという銅貨の言葉に、しぶしぶ水連は頷く。少年は果たして、手のひらに美しい碧色の石を水連の瞼から取り去って見せた。
いったい少年は何者なのか、問い詰めようとすると少年は風のように去っていってしまう。
青いインクと製図ペンで書かれた天体観測の誘い状で行われる天体議会。海のそばの気象台での集まり。高速軌道(カプセル)の信号燈(シグナル)の青ばかりを壊される事件。銅貨の兄との距離、水連と兄との関係性への嫉妬。水連との関係性の濃淡に、自分の心持も揺れる。銅貨の兄藍生のなかの父への渇望と反抗心。そして弟への接し方をうまくできない苛立ち。少子化のために作られた家族の形が故に血の繋がりをもたない兄弟である銅貨と碧生のお互いを大切にしたいし、されたいという感情の幼さとやさしさ。水連の銅貨へのまるで憧れのような友情。銅貨のもつ劣等感さえ、水連は良しとしているように思う。銅貨というものがあるがまま好ましいような。二人の割れた花瓶を大切に繕い続ける関係。お祭りの夜の、変わり玉の交換。幾度も現れては消える少年。南にいる父と、その場所へ思いを馳せる。そして雪の早朝、兄との会話。万華鏡へこめた祈り。
少年たちの不思議な邂逅と別れの物語。

長野さんの描く少年しかいない世界は不思議とくっきりと存在する。そこに置かれている様々な印象的で美しいものたちに囲まれて、うつくしい少年たちは生きている。たくさんのルビをふられた文章なのにとても読みやすい。純文学にくくられるのか、幻想小説に分類されるのか、それなのに夢見心地ではないお話。起こる様々な行事たちは全く身近ではないのに、目にその光景は眩しく浮かび上がった。灯された灯りのやわらかなオレンジと、その奥の深い深い藍の空。飛び立つ衛星の放つ光。見上げる天体のはるか遠い光。それらが鮮烈に網膜に映った。ぐいぐい読ませるお話ではないのに、読んでいると心地よくてついつい読んでしまう、そういう本だった。
長野さんの書く少年たちの名前は、どこのいつという設定から解き放ってくれるし、少年と言い切られているのにどこか性別を失わせてしまう効果があるように感じた。

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2021年07月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

言葉だけでいかにきれいな世界観を出せるかを教えてくれた本です。水蓮と銅貨という三日月少年にでてきた二人が登場するので手に取ってみた一冊。なんとドラマCDもあるそうな。近代未来都市っぽい雰囲気も出しつつどこか昔っぽいところもある不思議な感じです。友情や、家族との確執など、人間関係に重きをおいた作品に感じました。水蓮の銅貨との仲直り仕方に脱帽。

0
2014年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まず近未来的な世界がすばらしい。
代理母出産が当たり前になっていて、家族のあり方が現実の世の中とまったく異なる世界観に引き込まれた。
水蓮の性格が好きなのだけど、自分と銅貨が似ているからだろうか。
銅貨と水蓮の友情が少し友情以上の気もするが、13歳くらいのときはこんなものかなと思った。
嫌な感じはせず、すっきりしたきれいな感じがした。
少年たちがみんな不器用で、それぞれの思いがうまく伝わらないことにもどかしさを感じた。
相変わらず不思議な雰囲気を残して終わる文に、またかと思いつつも惹かれてしまう。

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2012年05月31日

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