【感想・ネタバレ】荷風のリヨン : 『ふらんす物語』を歩くのレビュー

あらすじ

本書は資料的な裏付けに基づき、著者自身が一年かけて、実際にリヨンの町を歩きまわり、『ふらんす物語』と同じ百年前の、荷風が散策した当時の町を捜し求め、検証した記録である。

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Posted by ブクログ

ふらんす物語の主要な舞台であるリヨンの街をつぶさに検証して、永井荷風の生活したリヨンを具体的に現実の街に当てはめ、あぶり出してみようという本。

荷風の書いた「ふらんす物語」の著述が、現在でもリヨンの案内として通用するということにも驚きますが、それ以上に著者の検証の手順の確実性や周到さに尊敬の気持ちが湧き起ります。戸籍や国勢調査に目を通し、新聞記事を当たり、ふらんす物語も徹底的に精読する。実際に足を使って歩く。その場所に身を置いてみる。

さすが学究。

事実として確かめられることと、荷風の創作を実に鮮やかに切り込んでみせてくれます。でも、それは作家である荷風の創作を貶めるものではなくて。荷風が作家である以上、その創作された街にさまようこともちゃんと良しとしていて。その美しさや面白さ、芳醇さはよく理解した上で、荷風のあえて描かなかった部分にも光を当てていきます。

それは、街そのものだけでなく、荷風の内面に対しても理性的に筆が及ぶので、読んでいる方は大変面白いです。ふらんす物語と本書をともに携えてリヨンを歩いたら本当に充実した街歩きが出来ると思います。

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2020年01月26日

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