【感想・ネタバレ】芸術の価値とは何か AIが奪い尽くすからこそ、アートに〝解〟があるのレビュー

あらすじ

なぜ人は芸術に巨額を投じるのか。
なぜビジネスの最前線で、アートが求められるのか。
市場は何に反応しているのか。
そして、芸術の真価とは何か。

「ベネッセアートサイト直島」のプロジェクトを成功に導き、金沢21世紀美術館館長、東京藝術大学大学美術館長を歴任。
アートの真価を問い続ける伝説の美術評論家が、アートを読み解くための「見取り図」を提示する。
AIがすべてを奪ってゆく時代だからこそ、アートに意味がある。

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Posted by ブクログ

「アーティストは炭鉱のカナリアのようだ」17

現代アートが生まれたのは第一次対戦大。価値観が崩壊して生まれた。モネは現代アート前の画家どあり、個人用に小さな作品しか作らなかったが、大戦後、「多くの人々の心を癒す」に目覚め、晩年をオランジェリー美術館の巨大絵画制作につぎ込んだ24

現代アートとは「芸術は社会と向き合うもの」というスタンスのアート26

単なる装飾や鑑賞物ではなく、今を生きる私たちの「社会現象を考える」ことが、今現代アートを観る醍醐味。それを楽しむためには、もはや美術史や美学といった知識よりも、むしろ社会学や政治学、あるいは人類学などの文脈が必要になってきている37

アートは非営利の文化活動であると同時に、資本主義の中では「金融商品」のように流通している現状がある42

ミリオネアはアート市場の主要な顧客。2000年からの20年間で世界のミリオネアの数は4倍に増えた。しかし物故作家や歴史的価値のある作品、「市場価値をもつ商品」の流通量は限られている。そこで美術マーケットは「現代アート」に目を向けた。現在アートならば作家は生きており、どんどん作品を「増産」できるからだ54

プライマリでは「より多くの人に作品を知ってもらう」目的のため価格は抑えられている。しかしこの作品がセカンダリに行くと価格が桁違いに高くなる。さらに値上がりを期待してセカンダリ市場では売買が加熱し価格はどんどんはね上がる。最近では購入希望者(投資家)は儲けを期待してプライマリでの「買い占め」まで起きている55
有名なバンクシーの作品は2004年当初1万5千円で販売されていた。これば2018年に2億1千万、ニュースになった「オークション細切れ事件」後は29億円になった。56

当初プライマリ(画廊)とセカンダリ(オークション)は利益相反する関係だった。ところが2010年頃から両者は手を組み始めた。すると、よりプライマリ市場で購入する者があふれた。その中には転売ヤーのように作品には全く興味がなく売却益だけ求める「ファンド系投機筋」的人間が現れた。
プライマリ側はこのような人間に購入されないように「10年は作品売買禁止」の同意書を用意したが、法的拘束力はなく、お構い無しに売買する猛者もいる59

アート市場はプライマリ(ギャラリー)とセカンダリ(オークション)だけではなく「美術館」も特別な存在。美術館は公的な機関であり、作品評価をする部門でもある。したがって美術館は「機関投資家」であり「銘柄格付け機関」である60

アメリカの美術館の館長の最も大切な仕事は2つ。今の時代を切り開くクリエイティブな経営と、最も重要なのはスポンサー作り。資金集め。そのため館長がまず魅力的な人間であることが必要62

アートはここ数十年、アートインダストリーと呼ばれるくらいビジネス化した。ビジネス化は2010年代ころから加速。株や金と同様の動産として、資産形成のアイテムとしてポートフォリオ入りした。美術品の値段はロングスパンで見ると常に右肩上がりで、2000年以降は2200%の成長。歴史的に評価されている作品だあれば超安定商品。また作品ばローカルなものでなくグローバルな作品であれば、国の景気に影響されず安定している。68

アートには一度途切れてしまった歴史の線を、結び直す力がある99

SDGsのような「多様性と包摂」が広く知られ、国際的な枠組みとして整備もされたのは、アートが長年にわたり、社会の周辺を可視化し続けたことが貢献しついる112

アーティストが普遍的に「売れる」状態になる法則がある。それは時間とともに「アクが抜ける」が起こること。草間彌生やルイーズブルジョアは、その幻視体験や精神不安、トラウマが色濃く出た興味深い作風だが、初期はグロテスクだった。これが年を重ねアクが抜け社会性を帯び、直島のカボチャや六本木のママンのような「ちょっとかわいい」になり大衆化が起こって売れた149

他の商品とアートの価格形成の違いは、その作品がもつ独創性や普遍性という数値化出来ない要素があるから163

またアートは「お札」のようでもある。それ自体に「使用価値」はほぼ無いが、国家の代わりに市場が保証する「交換価値」により存在する166

「高額な作品」を買った人物は知性や経済力、美意識を持った「名士」になれる。そのため高額なほど価値が上がる。2817年サザビーズで前澤友作氏はバスキアの作品を123億円で落札した。彼は「あのバスキアの作品名を史上最高値で購入した初のアジア人」という称号を得た名士になった174

「日本ではアートと経済が分断されている」と言われている198

世界ではアートを買い支える富豪たちがいるが、日本にはいない。日本ではアーティストか買い支えている。村上隆司は現代美術から曾我蕭白までコレクション。杉本博司は私財をなげうって江ノ浦観測所を作った。彼らは「日本文化を支えなければならない」と言っている。残念なことに日本の経営者にはこういう気概や危機感を持つ者がいない。217

日本が世界から評価されたアート形態は「具体」と「もの派」

ビートたけしやドリフ、吉本興業の笑いは日本のアートから生まれた。ハイレッドセンターのパフォーマンス(東京五輪のため強引な美観作りを皮肉って、白衣を着て街を無意味に消毒する)の無意味さ、ナンセンスさ、これなどが元になった。
日本のお笑いは奇妙なほど現代アートに近い。私たちは知らず知らずの間に現代アートを受け入れてる226

海外でブレイクする可能性がある日本のアートは「マンガ」と「工芸」だ。
これを国の文化政策で行うべき。国立美術館に「建築」「デザイン」「マンガ」「工芸」の総合部門を設けるべき229

[感想]藁の作品には具体美術協会の「アートの破壊」、もの派の「マテリアルそのもの。完成から崩壊が始まる」、建築の「ノウハウ、物理的大きさ」、マンガ・デザインの「hawaii」、工芸の「精巧と繊細」、日本社会の「協働」が全て宿っている。

今や作家はただ「つくる人」ではなく「語る人」としての側面を持つことも求められる。現在世界で活躍している作家は例外なく高度なコミュニケーション能力を持っている245

ギャラリーのオープニングパーティーの後の「食事会」は貴重な機会。作家から貴重な話が聞ける248

縄文土器を「美しい」「かわいい」という視点で観られるのは、岡本太郎が1952年に縄文土器の論文を美術雑誌に寄稿したことにより始まった266

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2026年05月16日

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