【感想・ネタバレ】巴のレビュー

あらすじ

バブル崩壊後の東京。ジゴロになって虚しく日々を送る男、大槻俊一は金蔓の一人としていた女を見送った後、偶然かつての仕事仲間と再会した。その仲間に強引に紹介された書家の篝山柾道という老人、その孫娘の朋絵という少女との出会いが、その後の大槻を翻弄することになる。
篝山は日本では公開不可能と思しきエロティックな映画制作を目論んでいるというのだ。朋絵はその映画に出演していた。大槻は映画制作に関わることを篝山に求められた。
大槻は気乗りのしないまま、映画制作に引きずりこまれていく――。
官能と暴力、謎と幻想……その後の著者の小説世界を予見させる、知的でありながら娯楽性をも湛えた著者初の長篇小説、初の文庫化。

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Posted by ブクログ

頽廃した性空間
 導入から非日常で、このひとは文章がうまい。主人公のくづ男がひょんなことから昔の知り合ひに出会ひ、とある書家の家に招かれ、一本の映画を見せられる。その映画は老人が自分の孫娘・朋絵(=巴)に撮らせた✕✕✕で……

 内容は作家本人がいってゐるとほり、上田秋成、ジョイス、石川淳を混ぜたやうなどこか幻想風味の頽廃した空間を描いてをり、谷崎めいてゐなくもない。
 一方、ストーリーを丁寧に追へばそこにひろがるのは通俗ドラマの世界だ。性、暴力、頽廃。しかし頽廃は頽廃でも、それは想像上の頽廃であり、西村賢太と比較しては生半可なところがある。
 文章の揺曳した心地よさがありつつ、見合ったストーリーかどうかはわからない。が、つづきが気になったことは確かだ。

 42歳のときの初長篇でこれだけ書けたのだとしたら大したもので、しかし内容が内容だけに売れはしなかっただらう。著者も自作のなかではいちばん好きだと言ってゐる。

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2026年04月29日

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