あらすじ
あの戦争の全体を俯瞰しつつ、ひとりひとりの運命に寄り添って大反響を呼んだ【NHKスペシャル、待望の書籍化!】
主婦、会社員、学生といった市民、最前線の兵士、政府や陸海軍のリーダー……人々は戦争をどのように捉え、何を書き留めたのか――? 個人がつづった日記・手記・手紙(=「エゴ・ドキュメント」)から見えてきたありのままの時代の空気、戦場と銃後のリアル
思わぬ大戦果に沸き返った真珠湾奇襲攻撃から、ミッドウェー海戦、ガダルカナル島の戦いを境に敗北への道を転がり落ち、本土空襲が本格化して戦火が市民に及ぶとともに、追い詰められた軍が人間を兵器にする特攻に踏み出した1944年末まで――戦局を左右した歴史的転換点や時代の大きなうねりを追体験
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Posted by ブクログ
「新ドキュメント太平洋戦争」は戦争を構成した個々人の経験を、日記・手記という一次資料から再構成することで、太平洋戦争期の日本社会を内側から照射する試みである。
本書に収録された兵士たちの記述は、作戦や戦果を語るものではなく、日常の感情や体調、家族への思念など、生活史的要素が中心となっている。これらの記録は、兵士が国家的事象の担い手であると同時に、私的な関係性の中で生きる存在であったことを示している。
戦争の非人道性や政策的失敗を評価することと、戦場に置かれた個々の兵士の行動や内面を理解することは、区別して扱う必要がある。本書が提示する日記群は、当時の情報環境や制度的制約の下で、兵士がどのように状況を認識し、与えられた役割を引き受けていたのかを具体的に示す資料として位置づけられる。
また、検閲や言論統制の存在を考慮すれば、記述されていない事柄や抑制された感情も多く含まれていると推察される。その意味で、これらの手記は、書かれた内容だけでなく、書かれなかった部分も含めて読解されるべき史料である。
なお戦時下において政府および国民が、いかなる思想や概念を共有し、どのような認識の枠組みの中で行動していたのかを理解するうえで、本書に収められた日記や手記は、読者に疑似体験に近い感覚をもたらす。
それは後知恵による評価ではなく、当時の時間感覚と情報制約の中に身を置くことによって初めて得られる理解であり、戦争を抽象的な歴史事象から、人間の思考と判断の積層として捉え直す契機となる。