【感想・ネタバレ】高学歴大工集団のレビュー

あらすじ

大工は超エリートだ! IQの高い若者こそ大工になれ!不況真っ只中にある建設業界で一人気を吐く建設会社がある。『カンブリア宮殿』でも話題になった平成建設だ。建築の全工程を外注せず、完全内製化している平成建設は業界の異端児と呼ばれているが、東大をはじめとする一流大学・大学院生が大工になりたいと入社を希望してくるのだ。このままでいくと日本に大工はいなくなる。日本建築のすばらしさを世界に、そして後世に伝えていくために会社をつくったという秋元久雄が、大工育成だけでなく、「部長は部下の選挙で決める」「社員が社長を査定する」など、不況をものともしない驚異の組織力のすべてを書き尽くした。

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Posted by ブクログ

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秋元久雄
株式会社平成建設社長。1948年10月15日静岡県生まれ。韮山高校卒業後、自衛隊体育学校入学。ウエイトリフティング選手としてオリンピック出場を目指す。その後、大手デベロッパー、ハウスメーカー、ゼネコンに在籍し、トップ営業マンとして活躍。89年、静岡県沼津市に平成建設を設立。大卒・大学院卒の大工や職人を正社員として採用し、自社で育て、建築のほぼすべての工程を内製化する業界初の試みに挑戦。エリート建築技能集団として注目を浴び、成長を続けている

建設業界では、営業や設計、施工管理以外の工程をすべてアウトソーシングしています。何も知らない新人を大工や職人として会社で雇って一から教え込むより、すでに技術を身につけた外部の職人を雇うほうが時間的に早いし、コストもかからない。必要なときに必要なスタッフだけ集めるほうが、明らかに合理的なのです。

「うちの息子は頭も悪いし取り柄がないから、大工でもやらせるか」 「今どき大工なんて 流行らないよ。きつい・汚い・かっこ悪いの3Kなんだから」  そんなやりとりを、たまに耳にすることがあります。とても悲しいことです。日本ではいったいいつから、「大工は取り柄のない人がなる職業」「危険でわりの悪い職業」などという誤ったイメージが定着したのでしょうか。どうもみなさん、大工という職業を誤解しているような気がしてなりません。

かつての建築現場は、大工の 棟梁 を頂点として、その下に大工や職人、さらにその下に大工や職人の手元となる作業員がいました。下に行くほど人数が多くなり、ちょうどピラミッドのような形をしているのです。

「大工ってそんなに地位が高かったの? まさか!」  みなさん、そう思われるかもしれません。でも、よく考えてみてください。  飛鳥時代の法隆寺、奈良時代の正倉院、平安時代の平等院、室町時代の金閣寺や銀閣寺、大名の権力の象徴である城など、日本が世界に誇る歴史的な神社仏閣や建造物はみな、時の為政者が当時の超一流の大工に命じてつくらせたものです。為政者のところに出入りしなければならなかったから、官位も与えられたのです。

幅広い知恵と教養・知識、直感的な計算能力、美的センス、全体像を見通すバランス感覚、人を率いるマネジメント力、人間的な魅力など、すべて備えていないととうていできる仕事ではありません。生半可な凡人にできることではないのです。

ひと昔前の大工は、木のことなら何でも知っていました。  家を建てることになったとき、大工はまず山へ行きます。そして木を1本1本見ながら、「はい、この木とこの木は使う。はい、これはあと 10 年寝かせておいて」と木こりに指示します。 「この枝は、切り落としておいて」と枝打ちの指示も出します。

日本書紀に、「木は宝」と記されています。大工とは、その木を活かすために生きている人。つまり、大工は日本の宝を守る人なのです。

 首都圏と並び、視野に入れているのが京都です。  職人として技をきわめるには、本物の大工のいる京都で修業するのが一番と私は考えます。京都は日本文化の集積地ですが、特に建築文化において、はずすことのできない特別な場所です。ここで技をみがかずして、一流の職人になることは不可能でしょう。

京都で一流の技を身につければ、国際的にも通用します。欧米人にとって、京都は日本の文化を代表する都市です。東京の秋葉原に来て感銘を受ける外国人はそれほどいませんが、京都は西洋文明に匹敵する圧倒的な美と迫力と説得力を備えています。  日本の芸術、伝統の技の集積地と言えば京都なのです。

過ぎた願いかもしれませんが、私は、うちの大工には単なる「腕きき」で終わってほしくないと思っています。1人でも2人でもいいから、芸術家の域に達する腕前を持つ人間が出てきてほしいのです。  その域に達するためには、頭と体をフルに働かせながら、技術を積み上げていくしかありません。そうすればその技術の土台の上に、やがて美しい花が咲くかもしれない。  もしそういう人間を育てることができたら、それだけでも、私はこの世に生きた価値があると思うのです。

なにより、情報を収集したり知識を増やすことは自分の勉強になります。民法や税法、資金調達の方法などを勉強することで、自分はもちろん、相手の役にも立つ。  人が知らない情報を持っていれば、滅多に入れないような資産家の家にも気後れせずに入れる。情報を交換するのですから立場は平等、営業だからといってぺこぺこする必要もありません。

これからのきびしい時代、中小企業が生き残るにはどうすればいいでしょう?  答えは簡単、スペシャリストになればいいのです。つまり、大手が絶対に真似できないことをやるのです。そうでないと、資本と信用力を持つ大手に真似されて、あっという間に席捲されてしまうでしょう。  目指すべきは、ニッチな世界の金メダルです。人が大勢集まるところで中小企業が競争しても、勝ち目はほとんどありません。もの真似するより、自分しか持っていない価値で勝負するしかないでしょう。

私は若いころ、「どういう商売をすれば確実に儲かるか?」と考えたことがあります。その結論は、こうです。 「最も大きなマーケットは、衣食住に関するものだ。どんな時代が来ても、人間は衣食住を必要とする。だからそのどれかの業界の、上位にいれば絶対に儲かる」  私の場合は建設業に携わっていますから、「住」を扱う業界です。その業界の上位、つまり元請けのポジションにいれば、まず間違いないと思いました。  中小の建設会社はともすれば下請けや孫請けの扱いを受けがちですが、ピラミッド構造の下位に行くほど分け前は少なくなります。  そこで私は内製化というシステムを考え、元請けでいられる体制をつくり上げました。

世の中には背の高い人や低い人、力のある人やない人、いろいろな人がいます。背の高い人は高いところに手が届いて便利ですし、背の低い人は低い場所に目が行くのでそれはそれでまた便利です。力のある人は一度にたくさんのものが運べますし、ない人は無理して運ばず、頭脳労働や手先の技術をみがけばいい。それぞれ向いている場所に置いてあげれば、その人ならではの能力を発揮するようになります。

たまに「私は大工になりたいのです! 男なんかに負けません!」と志望してくる女性がいますが、そういう人にはご遠慮願っています。なぜなら、勘違いしているからです。  本来、男性と女性とでは役割が違います。男は男らしく、女は女らしくするのが自然の姿。無理に肩を並べ、力ずくで張り合おうとするのは無意味です。

うちで働く女性大工は、別に男女同権を振りかざして男性と一緒に現場に立っているわけではありません。本当にこの仕事が好きだから、自分の人生をかける値打ちのある仕事だから、やっているのです。

どんな人にも、いいところがあります。動作はのろくても力持ちだとか、あわてん坊だけどフットワークがいいとか、話すのは下手だけど仕事っぷりがまじめだとか、短所の裏には必ず長所があるのです。  ですからその人のいいところに目を向けて、足の速い人は短距離走、背の高い人はバスケットボールで競わせるというように、最も向いている種目を担当させれば、本人は喜んで力を発揮するでしょう。

 多くの人は、人から信頼されようとして一生懸命に努力します。しかし信頼されるということは、期待されるということ。過剰な期待は、重荷になります。疲れます。もし期待以下のことをしてしまったら、相手は「裏切られた」と思うでしょう。

信頼の頼は「頼る」。お客さまの依頼心をすべて背負ってしまうと、プレッシャーになります。それに、私にはお客さまの望みをすべてかなえる能力もありません。

 これは仕事関係だけでなく、夫婦関係においても言えることです。 「30 年以上、仲のいい夫婦でいる秘訣は何ですか?」  テレビの取材で聞かれたとき、私はこう答えました。 「お互いに信頼し合わないこと。信頼すると、だいたい裏切られますから。信用だけで十分です」  たとえば「今日は何時に帰ってきますか? お夕飯が冷めてしまいますから、8時には帰ってきてくださいね」と言われても、私は「うん、わかった」と約束することはできません。仕事が終わらないかもしれないし、誰かと飲みに行くかもしれない。あるいは何か、予測できないことが起こるかもしれない。  下手に約束してもし8時に帰れなかったら、「あなたの好物をたくさんつくったのに」と相手の心に怒りが生じるでしょう。人は何かをすると見返りを要求するし、期待がはずれるとがっかりするし、怒りも湧く。

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2024年01月15日

Posted by ブクログ

建設業界はアウトソーシングがほとんどのため、結局、実際に作業現場に係わる職人の収入は安く抑えられ安定しない。こういう状況で若い人が職人になろうという人は出てこず、現在は大工だけでなく他の職人も高齢化してきている。大量生産が可能なプレハブ工法では作業員ばかりが増え、大工や他の職人のレベルも下がっていく。いずれどんなに良い建物を建てようとしても、レベルの高い職人がいなくなり対応ができなくなる。そういう中で、全てを内製化し、優秀な大工や職人を育てている平成建設の存在に救われたような気がした。

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2012年07月27日

Posted by ブクログ

前4割が平成建設の紹介
後ろ6割が営業感と自伝
営業本だと考えるとさっと読んでもいいと思う

この爺さんメンドそう。言ってることと会社は好きだけど、
著書前半にかいてある仕事感がすごーく好きだった。
著書後半にかいてある仕事感がいまいち好きになれなかった。

同じ人が書いたほんでしょ!なんでぶれるの。
気分やさんですか?

他、気になる言葉がちらほら出てくる。
「かわいい人しかとりません」と書いていた。
女は女の行き方がある。男に張り合うことが道じゃない。との事。
正論だとおもう。
「かっこいい人しか取りません」とは書いていなかった。

また、
著書前半に「上司は投票で決めます!」「評価は360度です」「次の社長も・・・」といった言葉があり、著書終盤の違う項では「自分は多数決が嫌いです」だから逆を歩みますそうやって活きてきました。不思議と判断にミスったことはない。とかかれています。

どういうことだ。ん?おかしいぞ

受け入れられないところは山ほどありそうだけど、
自分の家をお願いするなら平成建設にしたいなって思った。
大工数の問題やゼネコン問題がすぽすぽ頭に入って勉強になった。
木の話は好きだった。
節の話が面白く、枝を切る作業の原理がわかった。


酷評はするが、言ってることは好き。
ただおそらく一緒には働けないとおもう。
自己満社長についていくことはできない。

技術者上がりと営業上がりの違いだと思う。

ただ、やってることと言ってることは好きだ。
よくわからんな。

個人的なものだろう。言ったことを忘れてえらそうに変更する年寄りが気に食わないってことかね。迷惑をかけられたから。著者とよく似た発想の人だった。 疲れます。

本は軽く勉強になるものでした。

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2011年08月21日

Posted by ブクログ

情報としてのインプットメインの本だが、他のビジネスにも転換できる考え方もある。

・情報
建築現場では、従来アウトソーシングを繰り返し、専門業者に作業をさせることで一つの物件が出来上がる。設計・基礎・足場・型枠・鉄筋・大工・アフターメンテなどすべての工程を別会社へ委託している。一般的な建築会社は、営業と施工管理を行うだけ。それはスピード・コスト的にもアウトソーシングが勝っているためである。
大企業も中小企業も同じビジネスモデルで競合している。重層下請け構造には、ひずみが生じやすい。お互いに協力関係にあるとはいえ、外注費用など利益が相反するためである。

効率重視のプレカット材などを使うことで、建築現場のスキルが低下している。また、後継者不足の問題も深刻である。


・考え方
設計から建築まで全ての工程を自社で請け負うことで、コストは割り高になるが、行き届いたサービスとアフターフォローまで行うことができる。
また、従業員の士気も高く維持でき、プライドを持って仕事に取り組むことができる。

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2009年12月27日

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