あらすじ
手を重ねて観える未来が心を癒す時代小説
深川佐賀町の水茶屋「ささげや」の女将・お玉。彼女は、人の掌に触れると、その人の「人生の束の間が観える」という不思議な力を持っています。悩みを抱えた人々が「豆は煮えたか」という符牒を合図に彼女を訪れ、その不思議な力に導かれていきます。お玉自身も、悲しい事故で夫を失っています。お玉をはじめ、人知れず特別な力を持つ者たちが織りなす連作短編集です。
ささげやの女将お玉は、名物の豆餅を売る水茶屋を営んでいます。しかし、彼女にはもう一つの顔がありました。訪れる客の掌に触れることで、その人の未来を垣間見る力。それは本人が望んだものではなく、彼女自身も「あまり気の進む生業ではない」と感じています。
しかし、夫と営んでいたささげやの名物、豆餅をお玉はどうしても上手くつくることができません。女の腕で餅をついても目指すものはできず、小豆を煮ても火加減、塩加減、砂糖の加減までまるで見当違いで、恋しい味にならないのです。客の評判も下がるいっぽうで、どのみち来ない客を待つならと、気が進まないながらも求められると占いをしています。
あるとき、親の決めた縁談と想い人との間で悩む娘、おこうが店を訪れます(「豆は煮えたか」)。お玉の力は、ただ未来を告げるだけでなく、相談者が自らの足で幸せな道を選ぶための、ささやかな道標となっていきます。
本作の魅力は、お玉だけにとどまりません。物語が進むにつれて、それぞれ異なる不思議な力を持つ人物たちが登場し、彼らの運命が交錯していきます。不思議な力を通して描かれるのは、懸命に生きる人々の姿であり、彼らを支える温かな人の縁。登場人物たちが紡ぐ優しさに触れるたび、心がじんわりと温かくなる。読み終えた後、ささげやの豆餅が食べたくなるような、滋味深い一冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
第1話 ささげやの名物豆餅はお玉の夫が亡くなってから、美味しく作れない。一方手相占いは人気で目当てで来る人がいる。夕刻、庭から指のちぎれかけた男性が入ってきて手当して匿う。
第2話 老夫婦がやってきて、娘夫婦はうまくやっているが、娘が遊びすぎてお金を使うので、お金の入った巾着を託された。が、どこにやったかわからないので、占ってほしいときた。街で占いをしているお玉の噂をきき、探し出そうとする。
第3話 花の苗を育てて売っている伊織。息子が出て行ってだいぶになる。ある日お玉に占ってもらう。
第4話 ちょっとばかし未来の見えるおかつは、そのために嫌われていく場所がなく、ささげやに置いてもらって2年になる。新次郎の昔の女がやってきた。
第5話 八斎はなぜか倒れた宝引きとその子供を世話することになった。
第6話 おかつは新次郎と結婚して子供を産んで若女房になっている。
Posted by ブクログ
『豆は煮えたか』を符牒を合図にちょいと不思議な力で家業の傍ら卜占者をする深川佐賀町の水茶屋「ささげや」の女将・お玉。
看板メニューの豆大福はいつまでたってもうまくはつくれない。
そんな彼女の下に集まってくる人々の織りなす人間模様と縁。
豆は煮えたか
身のほど知らず
いつ咲く
雲隠れ
宝引き
くらぶ者なき
の全6遍の連作短編になっていて『ささげや』に訪れた人にそれぞれクローズアップして展開。
最後、全てがつながるような構成になってます。
不器用だけど優しい人情に癒され、ちょいとドキドキする場面ありつつもほっこりする好きな部類のお話達。
カバー外すと表紙に見返しもついていて柄が豆絞りになっているのもなんとも粋でたまらない。
2編目に占いの仕方がでてくるので、あれはそうやって占うんだと勉強にもなる。
とにもかくにも豆大福が食べたくなる素敵な一冊でした。
Posted by ブクログ
一時は近世の実在人物を描いた歴史小説が多かったまかてさん、2023年の『どら蔵』に続く(間に『グロリアソサエテ』が入ってますが)、原点回帰的な人情物の時代小説~連作短編~です。
主人公の水茶屋・ささげやの女将のお玉は予知能力者。とは言え、ささやかな能力で、手に触ることによってその人の数年後の姿が思い浮かぶと言うレベル。持ち込まれる悩みも左程の事は無く、予知能力はあくまで背景です。物語は亭主を事故で亡くし苦戦するお玉と、それを取り巻く人々の助け合いを描く人情物の時代小説です。違和感を感じさせない話の持って行き方や、季節感の織り込み方など流石に慣れたものです。
ただ、ちょっと人名に苦戦。最初に登場した時に名前が明かされず、次回で明らかになる例が多く、途中で少々混乱してしまいました。