あらすじ
その山小屋は尾瀬の名峰、燧ヶ岳が目の前にそびえ立つ尾瀬沼の湖畔にあった。昭和四十年――東京オリンピックが開催された翌年の、厳しい雪の訪れをひかえた十二月初旬。吹雪の晩、山小屋の離れに住む日田原聖太が頭を殴打されて殺された。山小屋にはそれぞれトラブルから、日田原に殺意を抱く複数の男女が宿泊していた。犯人は一体誰なのか。口々に自分のアリバイを主張する宿泊者たち。容疑者の一人でもある、刑事の津村武彦を中心に各々のアリバイを検証してゆく。最後の三行に潜む衝撃とは! 叙述トリックの名手として活躍した著者の遺作。
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Posted by ブクログ
なかなかに登場人物が多くて、関係性を把握するのが少々難しかった。誰もが怪しくかんじるけど、逆に怪しすぎる人こそ犯人じゃないんじゃないかと考えてしまうよね。
電報をトリックに使うの、正直電報自体がよく分かってないのだけど、そういう時代だったんぁなぁと思う。
尾瀬の水芭蕉は見てみたいです。
Posted by ブクログ
随分古い時代の叙述トリックミステリー。
「最後の3行に衝撃」とあって、歌野正午の「葉桜の季節に…」みたいな衝撃を味わえたらと思って手に取ってみた。
なるほど衝撃は衝撃である、作者はあとがきで「ラスト3行を長編改訂にあたって追記した」と言ってるが、この3行がないこの作品の読み所はどこだったのか?と思うくらいに重要な、文庫本1冊をこの3行のために読んでいるようなミステリーである。
ミステリー以上の小説ではないが、叙述ミステリーとしてはなかなかの快作。
余談:しかし、尾瀬って、ずっと長いこと布団1枚に複数人って混み方してんだなぁ(笑
Posted by ブクログ
尾瀬沼の湖畔に建つ朝日小屋で,日田原聖太が殺害される。朝日小屋には,日田原から脅迫されていた唐品由美,土地を騙し取られ,小説についてもこき下ろされている神崎良介,子どもの関係で脅迫されている津村武彦,日出原に騙され,美味い汁を吸われた山岸勝男,そして,時折挿入される謎の男のモノローグ。
物語が複雑さを増しているのは,この日田原をめぐる人物のほかに,三浦大次郎,熊谷咲子,塩見幸太郎といったメンバーが,三浦が前に宿泊したときに女を自殺に見せかけ殺害したという話を交えているからだと思われる。
また,村長秀一というカメラマンが動き回ったり,朝日小屋の主人の姪である野坂富美子の存在,朝日小屋の従業員である戸沢とよ,岡本花江の動きなども,読者の目を惑わせる。
骨格はいたってシンプルであり,電話、電報を使って殺人時間をずらし,アリバイを確保するというトリック。真犯人は神崎良介であり,動機は,日田原から受け取った小説の原稿を賞に応募し,受賞したことから,日田原を殺害し,原稿を完全に自分のものにしようとしたというものだった。
物語のオチは,神崎が日田原を殺害してまで手に入れた原稿が,海外ミステリの翻訳であったというもの
短篇で使うようなシンプルなトリックをうまく膨らませた秀作だとは思うが,トリックが今となってはやや陳腐。中町信の文章の文体が肌に合うので,その点は加点するが,★3止まりかな。
Posted by ブクログ
驚きはアリバイ崩しでも真犯人でもなかった。高みから一気に転落するラスト三行に思わず、ほぉ~っと息が洩れる。
クラシックで上質なミステリーの余韻。