あらすじ
知識経営理論の第一人者による「知の方法論」の書き下ろし。ナレッジワーカーとしての個人が知識創造の本質的理解を深めるための、知の作法を論じる。
【主な内容】
序 知の方法を身にまとう/1 新たな経営の知/2 ナレッジワーカーの時代/第1部 知の方法論の原点/1 哲学にみる知識創造の知/2 知識創造理論で見た知の型/3 知識創造プロセスと弁証法のダイナミズム/第2部 社会科学にみる知識創造の知/1 科学の知の方法論の意味合いとその変遷/2 社会学の知のアプローチ:構造・行為・意味・統合/3 潜在的メカニズムの発見へ/4 新たな経営の知に向けて:綜合の知/第3部 「コンセプト」の方法論/1 コンセプトとは何か/2 「観察」の方法論:アイデアの源泉としての経験/3 「概念化」の方法論:意味の発見と形成/4 「モデル化(理論化)」の方法論/5 「実践化」の方法論/6 日常的行為へ/第4部 経営と知の方法/1 企業の知の型(組織的知識創造)/2 ナレッジ・リーダーシップ
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Posted by ブクログ
知識の方法論についての本。知識経営についての指南本。
相互継続的な学習 検証につながり、発見・体得につながる。
ドラッカー指摘の知識労働の生産性向上の条件
・タスク定義(仕事の目的は何かを主体的に考える)
・自律性(働く者自身が生産性向上の責任を負う。自らをマネジメントする)
・継続的イノベーション(継続してイノベーションを行う)
・継続的学習とコーチング(自ら継続して学び、人に教える)
・量より質(生産性は量よりも質の問題である)
・自己選択(知識労働者は組織にとってのコストでなく、資本財であることを理解)
日本人は無思想で技術がある。日本は暗黙知を駆使してテクノロジーを取り入れる反面概念化を経由せず、思想は輸入しない。理性的な概念化が課題とあってしまう。
知識創造のモデル
・共同化(socialization)暗黙知から新たに暗黙知を生み出すプロセス
・表出化(externalization)暗黙知から新たに形式知を生み出すプロセス
・連結化(combination)形式知から新たに形式知を生み出すプロセス
・内面化(internalization)形式知から新たに暗黙知を生み出すプロセス
あわせてSECIモデル
・共同化はフェイストゥフェイスで暗黙知の共有、獲得、増幅を行うプロセス。主客を越えた共通の経験や直覚。OJT、顧客との共体験により自分自身を環境の内部に組み入れ、全身で環境の知と一体になって知を獲得するプロセスなど。
・表出化は個人と集団の相互作用が媒介となり、思い(暗黙知)を持つ個人が討議などを通じて、他者の思いを共有し、より高い理念やビジョンと結びつけながら、言葉にする。さらに、言葉を磨き新たな観点を持つ概念へと産出していくプロセス
・連結化は形式知の獲得、結合。形式知を体系的に結びつけ、構築的に新たな形式知を生み出すこと。表出化された概念を操作的に再構成していくプロセスでもある。
・内面化は形式知を自分自身のものとして身体的にとりいれること。実験や現場での成果の反省が重要となる。思いの結晶物として市場に投入され、顧客、競合企業などと新たな知を触発し、SECIを回し続けることになる。
・ヘーゲルによる弁証法的運動の一般法則
1量から質、および質から量への転化。2対立物の相互浸透。3否定の否定。
・綜合の知
整理一環させる。まとめる→電気メーカーの総合に近いレベル
科学的結合→新しい構成物を生み出す。次元は変わらない
相乗効果
弁証法的綜合→相互に矛盾する定立と非定立から仮説やコンセプトを生み出すこと。話題が一義的なら対話は生まれない。対話が成り立つには、前提も疑うことのできる開かれた思考でなければならない。コンセプトを創っているとアイデアが出ることもある。次元の高まり。
・コンセプト 新たな思考形式。新たな視点と物事の本質を掴み取ることができる観点。アイデアが結びついてできるもの。それがコンセプト。新しい洞察があること。それが結びついたものが理論。
・メタファーの知 メタファーを用いて新たなコンセプトの発見を行う。商品開発に留まらず、事業戦略や事業構想、組織設計、経営戦略のレベルにおいても重要な役割を担う。
・創造性を高めるために重要なポイント
・創造的なエネルギーの獲得(開放)
・好奇心と関心を持つ
・日常生活の中でフローを育成する
・習慣化した強さ(創造性の維持)
・創造的属性や行動の内面化
・4つのリーダーシップ
・プラトン的リーダー 経営理念、収益以前の会社の存在意義、失敗から学ぶ発送。経営美学。問題提起、本質追求をめざすような「なぜ」という問いが企業成員に自問自答されることを目指すリーダー
・デカルト式リーダー 分析的戦略計画、ベストプラクティス 企業の生命線である損益について企業成員に明晰かつ判明に提示する姿勢や、ベストプラクティスの賞賛とそれを理論家する能力、論理的合理的な考え方を奨励する経営
・デユーイ的リーダー マニュアル化、反省的実践の中からの知の練磨 自ら率先して実施することで、部下の観察眼を刺激するやり方、部下が実践しやすい環境づくり、理論やノウハウを伝授する場づくり
・西田幾太郎敵リーダー 職人的な熟練の知。現場知の重視 関係性の中での自己認識、情や連帯感の強調。身体、感情レベルでのコミュニケーションの醸成など