あらすじ
私たちの社会はあらゆる場面で「数字」「数値」「診断」「判定」「選抜」に取り囲まれている。学校ではテストの点数や通知表の評価、習いごとの級や段が、努力や能力の尺度として示される。受験期には偏差値や合格判定といった数値が進路を左右し、大学ではGPAが学業成績や将来を決める重要な指標となる。社会に出れば、売上や評価点、SNSのフォロワー数といった数値が人の価値を決めるかのように扱われる。こうした「数値化」は、客観的で公正な判断を支える一方で、人間の多様な側面を単純化し、息苦しさを生み出すこともある。数字が可視化されることで比較が容易になり、私たちは無意識のうちに他者と自分を比べて落ち込み、自己価値を数値に委ねてしまう。教育や仕事の現場でも、本来の目的よりも指標そのものを上げることが優先されることがある。たとえば、救急の「4時間基準」や「大学合格者数ランキング」など、本来目安であるはずの数値が目的化し、意味を失ってしまう現象が生じている。さらに、私たちの活動を支える「動機づけ」も、外発的な評価や報酬に依存しがちだ。内発的動機づけ――すなわち「好き」「楽しい」「意味がある」という思いからの行動――を重視することが、学びや働きの豊かさにつながるのではないか。勉強や仕事は「成果を数値で示すため」だけでなく、「生きることを豊かにするため」にある。この視点を取り戻すことが、数値に支配されがちな現代社会を見つめ直す第一歩となるだろう。
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Posted by ブクログ
195ページ、第5章「AIによる個人予測の進展」で、AIチャットボットに「あなたの長所と短所、性格の特徴、10年後の自分はどうなっているか?と質問を打ち込んでみて」とあったので、試してみました。
結果は...当たっている所もあり、ムッとする所もありました(笑)。しかし配偶者に言わせると「全部当たっている」と言われたので、余計に腹が立ちました(苦笑)。なので他人から見れば当たっているのでしょう。
でもAIは私の全てを知っている訳ではないし、納得できない部分に関しては、AIの指示に従ってチャットボットで勉強していた部分もあったので、鵜呑みにしてしまうと著者の言う通り「過去のデータに縛られた未来」を受け入れてしまいそうです。
以前「ファクトフルネス」と言う本が流行りましたが、データや数字もそれが公平性を保っているか、偏りのないものなのかは精査してみないとわかりません。目の前の数字(値)では表せない、「偶然や想像、選択の自由」を手に入れるために、人間は「誤差」や「揺らぎ」という不確実な領域を手放してはいけない、という著者の言葉は心に刺さりました。
さまざまな予測不能な偶然と選択を積み重ねて、人(私)の変化を楽しんで生きて行こう!と思いました。
不確実な現代を生きていくのに、複雑怪奇に設定された数値化社会に飲み込まれないために、参考になる本としてオススメの1冊です。
Posted by ブクログ
ジェリーz ミュラー著 測りすぎ は読みづらさを感じたが、こちらはとても理解しやすい。
AIについての考察は、大変参考になった。
自分のの人生を「物語として語る」ことについては、自分自身を捉えるときにはそれでよい 自分を正しく理解してるわけではないから
物語批判の哲学 読んでいたので、逆に少し凝り固まっていたかも
Posted by ブクログ
昨今、数値やエビデンスが重視されている世の中ではあるが、それが正義だと主張するあまりに、本質や目的を見失っているケースが良くある。
とくに、SNSでは、写真や数値など、インパクトのあるエビデンスが「バズる」という形で評価されるケースが散見される。
本書では「数値」にフォーカスしているが、少し広げると、「科学的思考」の外にも意味があることを忘れてはいけないのだと気づかされた。
数値で測られた集団最適化と個人の幸福を混同するとの危うさもあり、客観的数値だけが独り歩きせずに、その裏側にある人の顔を思い浮かべて行動・判断することは重要さが説かれている。
論理だてて説明されており、すとんと腑に落ちる内容でした。
Posted by ブクログ
・最初は「良い経験ができればいいか」と思って始めた習い事なのに、子どもたちが習い事に通い始めると、親は「どうしてうちの子は、あの子よりもうまくできないのだろう」「このまま習い事を続けても意味があるのだろうか」といったことが思い浮かぶようになります
・死亡率が医療機関の成果指標として機能すると、複雑で困難な治療を必要とする患者や、重症の患者を病院が引き受けるのを避けようとするようになり、手術に成功しやすいリスクの低い患者ばかりを選別する傾向が見られるようになりました。測定のための指標が行動の目標に転化するときに生じる問題
・絶対温度(ケルビン)は摂氏や華氏の温度とは異なり、絶対的なゼロが存在する尺度です。0Kは分子の運動が完全に停止した状態を指しており、これ以上低くならない温度を意味します。そのため、絶対温度では「2倍」や「半分」といった比率の表現が可能になります。このように、比率尺度は「0がいいのあるゼロ」を指しており、数値の差も比率も両方に意味があるという点で、最も情報量の多い尺度ということができる
・構成概念の可視化の前提となるのは「差(ばらつき)」が生じていることです。ある人と別の人との間に「何かしらの違い」が生じていることが、これらの構成概念を測定するときの前提となります
・うまく将来が予測できるものには「価値がある」とみなされる
・「予測できるもの」を評価する科学的思考は、知識を積み上げるうえで不可欠です。けれども同時に、私たちは「予測できないもの」にも意味があることを忘れてはなりません