あらすじ
北欧史に残る謎を子孫が描く、圧倒的野心作!
「自分以外には扱えない主題と、
それを実際に物語として形にできる筆力。
その両輪を備えた作家のみが作ることのできる物語。
うらやましい。」
――漫画家・幸村 誠氏(『ヴィンランド・サガ』)
1436年春、後にスウェーデン最古の貴族ナット・オ・ダーグ家として知られる一族の一人息子モンス・ベンクトソンが、反乱指導者エンゲルブレクト・エンゲルブレクトソンを斧で殺害した。モンスはエンゲルブレクトの忠実な従者であったが、殺害の動機は600年が経った今も謎のまま。その北欧史の謎を、モンスの子孫である著者が史実を基にフィクションという形で解き明かした野心作。
家族、戦争、反乱、愛と裏切り、権力欲と奸計。ブロマンス、シスターフッドも盛り込んだ圧倒的面白さ!『1793』三部作で北欧ミステリー界に実力を知らしめ、第76回日本推理作家協会賞(翻訳部門)を受賞した著者による傑作歴史ミステリー。
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Posted by ブクログ
本当に……とんでもない傑作だ。
舞台は15世紀のスウェーデン。
ただでさえ、この時代、この土地を描いた物語はそう多くない。
けれど本書には、もう冒頭から読者を引きずり込んでしまう吸引力がある。
『運命と希望』ニクラス・ナット・オ・ダーグ
荒廃し、死に絶えた土地。
靴や背嚢に重たい砂利を入れて歩く一人の青年。
彼はなぜ、このような苦行を自らに課しているのか。
またある場面では、
若き反乱指導者と、彼に心酔する美しい青年が
静かに心を通わせている。
その傍らには、憎しみに燃えた目がある。
日本の小説ではなかなか味わえない、
壮大な歴史のうねりのようなものがどろりと押し寄せてくる。
『運命と希望』を読んでいるあいだ、
心は完全に中世スウェーデンへ飛んでいた。
✧
本書が特別なのは、
これが実際に北欧史に刻まれた
ある衝撃的な事件をベースにしているところだ。
圧政に苦しみ、民衆も貴族も疲弊しきっていたスウェーデン。
そこへ追い打ちをかけるように、
ペスト(黒死病)が猛威をふるう。
そんな腐敗した時代に、
民衆を束ねたのが
カリスマ性を持つ若き反乱指導者エンゲルブレクト。
そして彼を支えたのが、
貴族の息子モンス・ベンクトソンだった。
しかしこの美しい青年は、
心酔していたはずのエンゲルブレクトを
なぜか斧で殺害したという。
この歴史のミステリーを小説として紐解くのが、
なんと当事者モンスの子孫である著者、
ニクラス・ナット・オ・ダーグ氏だというのだから驚く。
✧
いつの時代も、どの国でも、
人間の営みはそう変わらない。
愛憎、自己顕示欲、自己犠牲、欺瞞、諦観。
人は、自分が生きることだけで精一杯だ。
本書では、さまざまな人間関係が描かれる。
モンスとエンゲルブレクトの、愛情にも似た依存関係。
モンスの親友であり、兄の代わりでもあるフィンとの主従関係。
クリスティーナが息子モンスに向ける異常ともいえる愛情。
その一方で、クリスティーナから見向きもされない娘ブリータ。
……あぁ、これ相関図を描いたらとんでもないことになるな。笑
きっと、いろんな矢印がモンスの方向へ伸びている。
ハードカバー600ページ弱という鈍器本ながら、
ヘレンハルメ美穂さんの翻訳は驚くほど読みやすく、
しかも文体がとても美しい。
中世スウェーデンの凍えるような冷たさを肌で感じ、
欲望と愛憎にまみれた生々しい熱を浴び、
最後には儚い喪失感と、
その先に見えるかすかな希望まで手渡される。
至福の読書体験でした。
そして、続編『Vargars lek(狼の戯れ)』が
2027年に刊行予定だと知って狂喜乱舞しています……!
この先の彼らの物語が紡がれる日が、
本当に待ち遠しい。