【感想・ネタバレ】核融合発電で世界はこう変わるのレビュー

あらすじ

燃料は海水から採れる重水素と三重水素。高レベルの放射性廃棄物や二酸化炭素も出さない。夢のエネルギー技術、核融合の実現は遠い未来のはずでした。しかし米国のスタートアップ企業CFSが、2030年代初頭に商業運転を開始する予定と発表し、にわかに2030年代の核融合の社会実装が現実味を帯びてきました。これまでの原子力発電は「核分裂」によりエネルギーを取り出す発電方式で、日本で行なうためには燃料のウランを輸入しなければならず、東日本大震災で安全性にも大きな疑問符がついてしまいました。さらに、高レベルの放射性廃棄物の発生も避けられません。しかし核融合発電の燃料は海水から採れるため、輸入する必要がありません。装置にトラブルが起こると、燃料のプラズマ自体が生成されず消えてしまいます。高レベル放射性物質も発生しません。さらに、核融合の価値はこれだけではありません。核融合炉を使えば、高温の熱と大量の電力を安定的に利用できるため、高効率かつクリーンな水素製造が可能になります。水素があれば、燃料電池(水素と酸素を反応させて電気を取り出す装置)を用いて、いつでもどこでも電気を生み出すことができます。つまり、水素を貯めることで、電気を「貯蔵」し、水素を運ぶことで、電気を「運ぶ」ことができるのです。地域単位のエネルギー自給が可能になり、地震や台風で送電網が壊れても、病院や避難所、通信設備を動かし続けることができます。さらに、現在世界で電気の恩恵を受けていない地域にも、送電線に頼らずに電気を届けることができるようになります。このように良いことづくめの「核融合」は、国の研究機関である量子科学技術研究開発機構における実験などで培ってきた技術を生かすことができる日本の得意分野であり、核融合の周辺技術で世界から注目されている日本のスタートアップ企業もあります。高市政権も、核融合を単なる研究テーマではなく、経済成長戦略や国際競争戦略の柱として位置づけています。エネルギー問題、環境問題を解決し、日本の将来を支える産業を生み出すであろう核融合について、かつて核融合の研究者であった小説家が万感の思いを込めて解説します。

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Posted by ブクログ

 できたて、ほやほやの本だ。本日が届いたので、すぐさま読み始めた。そして、一気に読めてしまった。やはり、著者の読ませる力はすごいものがある。
 核融合発電って、原発とどう違うのか?あまりよくわからなかった。
 もと原子力研究者だった著者が、想いを込めて、わかりやすく、丁寧に最新の情報と核融合発電が社会にどういう影響をもたらすかについて、物語風に綴る。最後の森本誠の章がすばらしい。

 ノーベル賞を受賞したアダムス博士の言葉。
「この受賞は、ここにはいない多くの人々のものです。途中で道を変えた者も、名を残せなかった者も、すでに亡くなった方たちも、すべての関係者が、この地上の太陽を支えてきました」
著者は、強調したかった言葉だ。科学の営みって、こういう連綿たる人々の営みで成り立っている。
 
 核融合とは「地上に太陽を」つくることだ。まさに、神を恐れぬ仕事だ。
鉄腕アトムを見てきた世代は、「原子力は明るい未来のエネルギー」と信じていた。しかし、フクシマの原発事故で、裏切られた気がした。明るい未来って、そうやすやすいうなと老人は独りごちた。
 福島原発事故において、止めることはできたが、冷やし、閉じ込めることができなかった。「最悪の事態に対する想像力の欠如」による人災であったと指摘されている。「原子力は絶対に安全だ」という神話を信じ込んでいたことが大きな問題だ。

 さて、地上に太陽をということは、一体どんなことなんだろう。
本書を読みながら、面白い時代がやってきていると思った。
 物質の状態とは、個体、液体、気体につづく、プラズマは、高いエネルギーを与えられた状態で、物質の第四の状態とされる。太陽は、プラズマの状態にあるという。このプラズマから、エネルギーを取り出すのが、核融合電力。核融合の燃料は、水素、重水素、三重水素(トリチウム)である。

 核融合反応を持続させるためには、1億度以上の超高温、1ccあたり100兆個以上、持続時間が1秒以上を満たす必要があるという。だいたい1億度を測る温度計があるのかと思った。粒子の運動の激しさで測定するという。よくわからない。

 核融合炉では、プラズマを閉じ込めて核融合反応を起こさせる。プラズマを真空容器の中に閉じ込め、容器に触れさせないで、反応させる。それが旧ソビエト連邦で1950年代に開発されたトカマク容器ということだ。それ以後、ヘリカル型、レーザー方式などが開発されている。原理は、本書に説明されている。そして、核融合から、熱エネルギーを取り出し、電気に変える。

 1985年米ソ冷戦終結後、レーガン=ゴルバチョフの核融合の平和利用の枠組みができた。太陽のように核融合でエネルギーを起こす技術を人類で共有しようと始まり、ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor:国際熱核融合実験路)がフランスに作られた。トカマク方式で、50MWの入力エネルギーで、500MWの出力エネルギー。加盟国は、アメリカ、ロシア、日本、EU 、中国、韓国、インドである。日本は、超伝導磁石の開発を主に行う。2034年に、プラズマ運転開始の予定となっている。
 テレビで『太陽を作り出す者たち〜ITER・地球最大の核融合計画』を見た。

 中国やアメリカのベンチャー企業と取り組みが紹介される。その中で日本の果たすべき役割というかポジションも明確に見抜いている。日本は、核融合の周辺技術にものづくり技術を生かすべきだという。少なくとも、核融合の事業は政策的であり、高市早苗総理の存在も重要な気がした。積極的な投資の中に、核融合事業は入るべき課題である。2番でいいという発想では、日本のポジションがなくなるような気もする。核融合は、資源小国である日本が、技術力によって「エネルギー産出国」に転換できる唯一の道でもある。

 ここでの中心的なことは、『核融合発電』は、『水素社会』と密接に繋がっていると強調されていることだ。核融合は電気を作る装置ではなく、巨大な熱を生む装置だ。核融合によって生み出されたクリーンなエネルギーを、水素という形で受け取り、水素を使いこなすことになる。

 そしてそのことで、エネルギーをめぐっての争いはなくなり、アメリカの石油・エネルギーを支配するための横暴がなくなることも意味する。トランプの時代は終わる。核融合発電が可能になれば、放射性燃料廃棄物さえもなくなり、原爆を作る原料もなくなる。その原爆の脅威が、失せていく可能性もある。確かに、大きな社会構造の変換となる気がした。核融合発電を技術だけで見ることなく、エネルギーと熱という観点から見ることで、新しい世界が生まれるような気がした。
 
 著者は、核融合は静かに実用段階に入っているという。そのためには、準備の必要性をいう。技術が先行すると社会は混乱するからだという。色々な問題は、技術が悪かったから起きた問題ではないという。なるほど。確かに。久しぶりに、いい本を読んだ。

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2026年03月19日

Posted by ブクログ

近未来のエネルギーの話です。
水素を核融合させてヘリウムを作る。そのときに発生したエネルギーを電気に変える。地球上に太陽を作るというものです。
原子力発電のような放射能汚染のリスクがなく、放射性廃棄物も出ません。
原料は水、すなわち海水を利用できるので、資源のない我が国でもエネルギーを作れます。
現すれば世界が変わります。大いに期待します。

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2026年03月19日

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