あらすじ
人はただ、やつのことを「健」と呼ぶ。無籍者で、住所不定。どの組織にも属さない一匹狼だ。かつて「麻雀放浪記」のなかで、出目徳の死体を裸にひん剥いて、泥溝の中に叩きこんだ、あの健とご承知おき願いたい。但し、あれから十年たった頃のお話である――。種目は麻雀、チンチロリン、手ホンビキ。一匹狼達の、身を切られるより辛い金を張っての凄まじい闘いが始まる! 「麻雀放浪記」の阿佐田哲也が放つ、長編悪漢小説(ピカレスク・ロマン)。
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Posted by ブクログ
『麻雀放浪記』から、戦後混乱期のアナーキーな爽快感と、青春小説としてのあまやかさを除いた、共食いの閉塞感に満ちた夢も希望も何処にも無い剥き身のギャンブル小説。
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阿佐田哲也『ドサ健ばくち地獄』(角川書店、S59)
「麻雀放浪記」シリーズのスピンオフ。天涯孤独のばくち打ちドサ健とその周囲に群がるばくち打ちのお話。勝ったり負けたり、誰からカモられるか敵対関係の一方、結局こいつらとしか遊べないというゆるい仲間感。悪漢小説の本領が出ています。
登場するばくち打ちは誰もが一定の技量を持ってイカサマ上等、周囲もそれをわかっていて高度な心理戦が展開されます。イカサマしようがなにをしようが、カモになるやつがいればそれでいい、と博打の本義を忘れないおおらかな姿勢。
胴元が儲かる構図とそれに固執する者、一方で主催者の義務としての廻し銭制度、貸付を回収できるか腕が問われるところです。
【本文より】
◯金のケリは金でつけろ。それが一番簡単だ。金でケリがつけられないから負い目が大きくなっていくんだ。殿下、そこがお前にはわかっとらんよ。
◯「馬鹿いうな。ばくちのプロなんて居るもんか。コロしたり、コロされたり、俺はしのぎのプロなんだよ」
◯考えてみれば、北抜き麻雀に限らず、ばくちは、止めどきが大事なのである。止めようと思ったときに、すっと立てる人は、大怪我はしない。
◯考えてみると、勝負は常に、トップと、次位以下の三人がおり、その三人が諒承しなければ、決着がつかないのである。」