あらすじ
「彼は、ただの目障りなハエだ」。SNSの投稿がバズったのをきっかけに絡んできた粘着質なアカウント。誰彼構わず罵詈雑言を吐いてはブロックされている彼を、大学生の芽衣子はスマホの中で「飼う」と決めるが……。ネット社会に満ちる匿名の悪意を描く衝撃の表題作ほか、家族や友達、ご近所さんなどさまざまな人間関係のなかで、目を背けたくなる感情と対峙する女性たちをとらえた短篇集。(解説・宇垣美里)
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Posted by ブクログ
「 可哀想」という言葉は、一見、相手を思いやる優しい善意のように聞こえる。自分もそう思っていたところがある。
だけど、この物語を読み終えたら、今までの言葉のイメージは一変してしまった。
最初は「力になりたい」っていう善意だったはずなのに、いつの間にか「自分の方が上だ」っていう無自覚な優越感に変わっていて……。それが自分や周りの心をじわじわ蝕んでいく様子が、息苦しく背筋が凍るくらい怖いんです。
ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!
自分は善意のつもりでも、相手からすれば救いになることもあれば、ひどい屈辱になることもある。この本の主人公たちはみんな「自分はまともだ」とか「いい人だ」って思い込んでいるふしがあるんだよね。でも、その思い込みが、きっかけ一つで誰もが「可哀想な蠅」に化けちゃうんだなって。もしかして自分も?
結局、どこまでが純粋な善意で、どこからがただの優越感なのか、その線引きってすごく難しく曖昧だ。もし無意識のうちに誰かを見下しているのが「可哀想」の正体だとしたら、世の中の全員が「可哀想な人」になっちゃうんじゃないか……。
今まで何気なく口にしていた『可哀想』という言葉が、この本を読んでからは、もう容易には使えないなと感じてしまった。
相手を思う優しさのつもりが、一歩間違えれば相手を見下す武器にも毒にもなる。
「可哀想」っていう言葉の本当の意味を深く考えさせられた。人間関係って本当に一筋縄ではいかないままならさを思い知らされた一冊だった。