あらすじ
私たちは日々、何気ない瞬間に“心を奪われる”体験をします。
街角のポスター、SNSで偶然目にした一文、パッケージの色使い、会議での一言、自然な言い回しの営業トーク、ママ友の集まりでの話題の切り替え方、あるいは誰かのちょっとした振る舞い。そうした場面には、必ずといっていいほど「ハッとする」瞬間が潜んでいます。
この“ハッとする”体験の裏側には、共通して「センス」があります。センスを身につけると、今までモヤモヤしていたことが解決して、胸の内がすっと晴れるような体験ができるようになります。
そんな「センス」は、生まれつきの才能でも、特別な能力でもありません。
(1)知覚=世界の「普通」と「半歩先」を知る
(2)組み替え=世界の「普通」と「半歩先」を組み替える
(3)表現=「調整+伝わり方」でセンスの精度を上げる
という3つのステップで生み出される「スキル」です。
本書では、マルちゃん正麺、AKB48、フェンシング日本代表の「JAPAN」の新国章デザイン、アミノサプリなど、「世の中を動かすムーブメント」を数多生み出してきた著者が、「センスがいい人」になるための方法を再現性のあるかたちで紹介してきます。
※カバー画像が異なる場合があります。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「センス」という言葉は、私がかつて、最も嫌いな言葉だった。
努力をすれば夢は叶うと信じていた若い頃。
「持たざる者は、生まれつき持てる者に敵うことがない」ということを、センスという一言が示しているように感じていた。
「センスがいい」という言葉で他者や作品を褒めそやす人も、その努力を否定するようなその無慈悲な言説に加担しているような気がしたのだ。
デザイナーである妻と出逢い、センスとは何かについて考える機会に触れるにつけ、その考えは変わっていった。
今はもうセンスという言葉にネガティブな気持ちは持っていない。
そんな経緯の先に、私は本書と出逢った。
「センス」を取得し、鍛えることができるものであることを、論理的に解説してくれている。
デザインというものは非常にビジネス的だ。アート的な発想力をエッセンスとして用いながらも、知識と技術で、センスのいいアウトプットを生み出し、人に伝え、人を動かすことができる。
私は、余分な情報を削りに削って本質だけにすることを至上とすることを「センスがいい」とする風潮にはやや疑問を持っている。
ジョブス以降、ロゴもファッションもプロダクトもサービスも、装飾、カオス、余剰、そうした枝葉を落とした飾り気のないものばかりになってしまった。
本の表紙もそうで、書店には総白地に黒いサンセリフの文字がドンと配置されただけの「シンプルイズベスト」なものが氾濫している。
本書でもそうした、ひたすらシンプルにしたものを賛美している部分が気になりはするが、その思想を理解すると、そうした帰結になることも理解できるようになった。
本書の構成も、そのメッセージに呼応するようだ。
分かりやすいメッセージに絞り込み、繰り返し、常に主張から逸脱しない。
いかに読者にメッセージを伝え、読者を動かすかを考え尽くされているのが伝わる。
文章でも、ビジュアルでも、映像でも、マテリアルでも一緒だ。
現代アートには目的のないものが少なくないが、多くのアウトプットには何かしらの目的が伴うことが多い。
目的を達成するための技術の良し悪しを示す指標として、センスが存在する。
そしてこの本もそのISSUEに沿った書き方をしているのだ。この再帰性が快い。
未だつらつらと長文を流しているこの感想も、センスに欠けていて嘆息ものだが、アウトプットとそのフィードバックを重ねねば磨かれようもない。
半歩ズラす視点で以て、知覚、組み換え、表現する。
自分には文学が足りていないようだ。