【感想・ネタバレ】虚空蔵の峯のレビュー

あらすじ

一気読み必至! 江戸時代最大の裁判劇!!

その一行六人が神田橋本町の公事宿・秩父屋に着いたのは、雪まじりの北風が吹きすさぶ宝暦五年(1755)の真冬のことだった。数日降り続いた雪で道はぬかるみ、六人の草鞋も革足袋も泥にまみれていた。二日目の明け方に宿を出た六人は、闇が降りてようやく武家一人と足軽らに連れられ、宿に戻ってきた。武家は老中・酒井忠寄の家中を名乗り、六人が登城途中の老中の駕籠へ直訴に及んだことを告げた。
明朝、秩父屋の主人・半七は、武家の指示どおり訴願主二名をともない、神田橋門内の庄内藩酒井家へ向かった。美濃国郡上からやって来たという一行は、藩が出す通行手形も持たず、勝手に領外へ出てきていた。それだけでも罪となる。その上の越訴となれば、一行は酒井藩の調べの後、町奉行所へ身柄を引き渡され、そのまま牢屋に拘引されるものと思われた。だが、半七の案に相違して、酒井家は訴願主の二人を薄縁の敷かれた十二畳の間に、丁重に招き入れた。

いったい彼らは、何を訴えたのか?手に汗握る展開に、一気読み必至!
人の値打ちとは?生きる意味とは?その根源的な問いを投げかけながら、歴史小説の巨人が圧倒的な筆力で書き下ろした、江戸時代最大の裁判劇!

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Posted by ブクログ

★5 百姓総代たちの決死の覚悟に震えろ! 江戸時代最大の公事訴訟、美濃国郡上藩の一揆 #虚空蔵の峯

■あらすじ
江戸の公事宿である秩父屋にたどり着いた六人、彼らは美濃国郡上から来た百姓たちの代表であった。翌日六人は登城途中だった老中の駕籠に直訴を決行。その後幕府老中の調べを受け、彼らの訴えが町奉行所に伝わることになる。

いったいどんな訴えだったのか… 江戸時代起こった最大の公事訴訟、美濃国郡上藩の百姓一揆の顛末や如何に。

■きっと読みたくなるレビュー
★5 おもろかったー、もはや大学の研究資料すね。学生時代、歴史って苦手だったんですよね。でもこんな内容の授業だったら興味津々に学べたのになー

さて本作は江戸時代に実際に合った訴訟のお話。現在の岐阜県郡上市、美濃国郡上藩の百姓一揆です。

藩主である金森頼錦以下代官たちが悪政を振りかざし、百姓から搾取を行い、過酷な生活を強いていた。耐えかねた藩の百姓総代が江戸の老中に直訴。その結果、大名や閣僚たちが大量処分されるという訴訟事件。

まず江戸時代の訴訟についてですよ。10年くらい前にNHKで『タイムスクープハンター』ってドラマがあったんですが、あの面白さですね。タイムワープで過去に戻り、当時の職業、風俗、文化などをレポートするというドラマ。

江戸時代の裁判、訴訟なんて、遠山の金さん? なんとなく「お白洲」って言葉は聞いたことあるけど、そんな程度しか知識がない… 例えば公事師、公事宿、駕籠訴とか、恥ずかしながら聞いたこともありませんでした。

そして藩主に対する訴えはどんなものだったのか、その訴訟がどのように進んでいくのか。奉行所ではどんな会話がされるのか? どんな利害関係者がおり、どう繋がっていたのかなどが吟味されていく。まるで江戸時代の北町奉行にタイムスリップしたかのごとく、綿密に詳細に綴られていくんです。素晴らしい歴史体験でしたね。

さらに登場人物たちもリアリティ溢れんばかりの描写なんです。まず駕籠直訴にぶっ込んだ百姓総代たちの息づかいですよ、この本気度を目の当たりすると、自分のダレた生活が恥ずかしくなるよね。

そして悪者側の主張ですよ、自身の都合で権力や規則を振りかざす醜さ。その結果の悲惨さをどう思っているんだろうかと腹立たしくなるわ。

私のイチ推しキャラは公事宿秩父屋の主人である半七。公事師(江戸時代の訴訟手続を生業とした職業)である彼は、他人の不幸や災難に常に関わり、生き死に際を目の当たりにしている。本作で彼の役回りは狂言回しでありながら、この江戸時代最大級の訴訟事件、そしてその結果をどう見ていたのでしょうか。

33項目にもわたる訴状の内容に愕然としますよね… もはや悪政というより乱暴狼藉ですよ。如何に当時の民たちが冷酷な環境におかれていたのか、読むほどに深々たる痛みが肌身に突き刺さってきました。

あと田沼意次って経済で頑張ったという印象だったけど、こんなこともしてたのね。エンタメで楽しめる江戸時代の訴訟、裁判小説!とっても勉強になるし、おすすめですよ。

■ぜっさん推しポイント
いつの時代、どの場所であっても、人はそれぞれ生まれや環境に振り回される。時には巨大な権力によって災難に巻き込まれることもあるのでしょう。しかしどれだけ強要されても、尊厳までは奪うことはできないのです。

読み終わってタイトル『虚空蔵の峯』を眺めてみる… 私が胸を張って主張したいこと、守りたいことは何だっただろうかと振り返るきっかけになりました。

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2026年05月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どんなに願い出ても叶わないという世の憐れよ
たとえ受理され、お白州の上で詳らかになろうとも、訴え出た側が責を負い、時には死罪にまで至る

どんな因果が巡り合って、何百、何千という人々が藻屑のように消えていかなければならないのか

「逃げ場のない構造」の恐ろしさは、2026年の社会ともかなり重なる
は違っても、構造の圧力を個人が吸収しているという点で、決して他人事では済まされない
もはや歴史小説ではなく、現代小説として読めてしまう

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2026年05月08日

Posted by ブクログ

読み始めてすぐ思いついたのは、現在の中国の信訪制度である。様々な理不尽に遭う地方の人々が、地方政府に訴えると、公安によって即座に逮捕、強制収容所送りになる。そのため、北京の信報所に訴え、その判決を待ち望むため、多くの人が行列を作り、かすかな期待を寄せる。訴えが受理される確率は極めて低く、まして救済される例はほとんどないが、多くの人々は列をなすことになる。そこには地方の公安関係者が頻繁に訪れ、強制的な逮捕が繰り返される。
これは江戸時代の物語ではある事は承知しているが、強権制度の元では全く同じ状況が、司法は権力から独立すると言うのは幻想に過ぎないだろうと言うことを強く感じた。

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2026年05月03日

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