あらすじ
『ともぐい』著者が描く女性ハンター誕生
命を撃つ。その意味を、私は?みたい。
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大学生のマチが出合った狩猟の世界。
新人ハンターとして歩みを進める彼女の前に、
一頭の熊が現れる??
直木賞『ともぐい』の著者・河﨑秋子が北海道を舞台に描き出す、
狩猟と狩猟に携わる人々の物語。
それは、すぐ隣にあるリアルな現実。
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「撃たれる動物にとっては、撃った人間が男か女か、お金があるかないか、容姿がどうとか、関係ないんだって。そういうの全部、関係ないところに私は行く」
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Posted by ブクログ
装丁と挿絵の鉛筆画が内容とその雰囲気にとても合っていて章を追うのが楽しかった。
河﨑先生の作品、クマと戦う人の話は何作目になるんだろう?とふと思ったけれど、どれも違っていてどれもその作品なりの迫力があってその描写力と読み手を引っ張っていく推進力がだんだんと増しているように感じられ本当に圧巻。
主人公を取り巻くほかの登場人物たちのキャラが凄く際立っているのがさすがです。
ご両親の懐の深さ、友達との別離、ハンター仲間たちの温かさ、職場の人間関係、どれも自然に伝わってくるのが本当に上手いなぁ。
特に、考え方や境遇の差で離れてしまったけどずっと気になり続けていた親友との関係性が終わったままにならなかったことに救われました。
自分は主人公とは逆のことを友達に言われたことがあり「辛いことない恵まれた平和な家庭環境でずっと育ってきたから、辛い家庭環境で通じ合っているあなたたち(私と別の友達)と話しているとあんたには分からないって遠回しに言われてるようで入り込めない。仲間になれないって感じる。なんか平和でごめんって思う」というような。
環境や育ちの差って本人にはどうにもできなきことだから、そんなふうに友達に思わせてたのかと衝撃を受けたことがありました。
p92の主人公と友達のやり取り、自分の学生時代を思い出しました。
「うん、ごめん。分かんない」
わかろうとしてもわからないことってどうしょうもなくありますね。
特に若い時には。仕方ないこともある。
確かにこの主人公は恵まれている。この若さで狩猟がやれるというのは財力的に恵まれた環境にあるのだ、というのはこの若さの主人公を考えたときの設定として必要条件なのだろうけれども、そこにそれ故の人間関係の難しさを乗せてくるのがさすが河﨑先生だなぁと。友達だけでなく職場の新人研修というところでもそれに触れてくるところが良かった。
ところどころに孤独について触れられているけれども、改めて考えると本書のタイトルからもう孤独の匂いがしますね。タイトルうまいなぁ。
このご両親がいいですね。叱られないからこそ沁みるってあると思う。
心配は最大限しているけど決して娘のやりたいことを妨げない、怒られて当然の場面でも「もう大人だから」と娘の判断に口出ししない。
こういう態度は出来そうで出来ないことのほうが多いのじゃないかなぁ。こういう両親に育てられたらマチのように真っすぐで肝の座った人間が確かに出来上がるかもしれないですね。
三石という人物が登場したのが良かったなぁ。こういうやな奴がでてくると俄然物語は面白くなりますね。そしてこの、何だか最初から合わない、感じの悪い人物が実は人とコミュニケーションを取るのに不器用なだけでもしかして中身小中学生?ってなったあたりからちょっと見る目がかわります。
それから猟に対する姿勢には共感できるところが少しずつ見えてくるところに人物を描き出す筆のうまさを抜群に感じました。
口を開けばムカつくことしか言わないこの男が読み進めるにつれて段々と好きになっていくのが作者の仕掛けに乗せられていくようで楽しかったですねぇ。
特に第4章の山で二人になって一緒に熊を追っていくところからはグイグイと読まされて目が離せなくなっていきました。「腹を括れ」
このクライマックスへの持っていき方、そしてこの獲物であったクマの個体がどういう個体であったのかという事実、どうしてこのクマがここに現れたのかという人間の傲慢の結果だった因果、やりきれなさとともにこの猟の結果がどう決着するのか見届けるまで、途中で本を置くことができなくなりました。いやぁすごかった。
安易に何でもアップするSNSに対する批判も込められているようだし、クマとの共存、クマを駆除することの是非、小説として面白いだけでなくそういう社会問題もちょっと考えさせられます。
しかしあまり重くはせず、そういう現実もあるとそのあたりは筆致としてはカラッとしていたように思います。あくまでもそれは小説の仕掛けとして盛り込むのがメインで、そのあたりの混ぜ込み方?のバランスも絶妙。
河﨑先生の新しいクマとの戦いの物語もやはり最高に面白かった。
この人間模様、映画で見てみたいなぁと思うけど昨今の熊出没状況を見てたら実写化は危険過ぎて難しいでしょうね。きっと。
Posted by ブクログ
ハンターを目指す女の子の成長。
それなりに面白かった、という感じでした。同じ狩りを描いた作品でも以前読んだ「ともぐい」とは全然毛色が違って、女の子がひょんなことから狩猟を知りハンターとして熊と対峙していくことそのものが素直に描かれています。混乱するような心理描写とかひねた表現は一切なし。
でもうーん、ちょっと、マチの成長の過程がちぐはぐな感じがしました。初めて銃を手にするところや初めて撃つところ(は当然狩場でなく練習場でしょうが)などの場面は飛ばされていて、気づいたらもう鹿を打っている。クマを打つにはライフルが必要で10年たたないとと思っていたら結局散弾銃で行くんかい、など。
その辺は、話が面白ければある程度流せるところではありますが、ハンターとしての主人公の内面の成長とか、命を奪うことへの葛藤とかみたいな、精神的な部分の表現はかなり控えめだったように感じ、それがちょっと物足らなかった要因かなと思います。ある意味、ちょっと重めの「お仕事小説」みたいな感じでもあり。