あらすじ
「あなたに特別な力を授けます」。天使か悪魔か――謎めいた美少女が人々に授けたのは、たった1度だけ時間を1分間止める能力だった。世界のすべてが静止する60秒。誰にも知られず、邪魔されることもなく、思うがままにどんなことでもできるのだ。大金を強奪する。憧れの女性を恣(ほしいまま)にする。憎い男を抹殺する……。欲望と妄念に翻弄される男女の姿を描く、異色連作集。
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Posted by ブクログ
いつもの大石圭のテイストとは少し趣を異にした短編集。不思議な少女が与える1回だけ60秒時間を止めることができる能力。選ばれる人に共通点はない。従って、彼らがそれを何に使うかは様々となる。その使い方が本書の面白さである。1話目が意外に前向きな話だったので、おぉ、こんな感じかーと思いきや、以降はその大半が暗い欲望に従っている辺りは安心のクオリティ。第10話でこれまでの話に微妙に触れられていくような繋がりが見えるものの、結局は人間の醜さを見るばかり。個人的に好きなのは大石圭らしさを裏切る第1話、殺人というミスリードとメジャーがないという伏線が生きる第5話、いい事をしようと回顧した結果満たされていたはずの人生が崩れていく第9話。最終話はおまけ的な話とは言いつつも、問いかけられたら自分だったらとやっぱり考えちゃうよね。でも、多分、自分だったら何が得かを迷った挙句、一生使わずに死んでしまいそうな気がするのだった。ちなみに毎回重いあとがきは今回は特に重くて、しんみりしてしまった。
Posted by ブクログ
特別な力を授けられる男女の話。その力とは60秒だけ時間を止められるというもの。たった60秒。けれど、様々な使いかたによって、人の本性を暴き出す。とはいっても、使い方は自由だし、それが幸せととるのか、不幸なのかは判断しかねるよね。私が一番人を殺めたいと思うのは、通勤で、一瞬だえけ殺意が芽生えてしまう。
だからといって、この60秒でどうにかしようと思うほどの強い気持ちはないと思うのだけど、根底には人を殺めてのいいとするそれを肯定する気持ちがあるわけで。
この話の中にも無差別に人を殺すチョイスをする人がいるんだけど、すごく普通の生活を送っている人だったんだよね。え、こんな残酷なことができるの?っていう。
でもできちゃうんだよね。
全員がいいことに使うわけないし、他人を巻き込まないなんてきれいごともない。
その点ではリアリティがあるかな。
自分だったらどうするかって思うと、60秒の時間を止めても仕方ないかな。できれば過去に戻りたいと思うかも。