あらすじ
「人生案内の回答者をやりませんか?」。突然かかってきた一本の電話。人生に不案内な人間に、ひとさまの人生の道案内など、つとまるわけがない――そう思っていたけれど……。亡き母への後悔の思い、恋を失った胸の痛み、進学に悩む若者の不安、愛犬を看取れなかった悲しみetc.老若男女から届くひとつひとつの相談に、これでもかと本気のこころで向き合った、4年間にわたる珠玉の回答集。
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Posted by ブクログ
いしいしんじさんの人生相談。新聞の連載らしいけど、読んだことがなかったのでまとめて読めて良かった。
悩みへの回答には、いしいさんの小説の世界のにおいがどこか漂っている。いのちはすべて響き合っている、つながっているという世界観が、たびたび顔を出す。
50代にして膝を悪くし不整脈も患って健康不安から鬱っぽくなっているおじさんの相談にも、いしいさんはいきなり、死を超えた百千億兆の生命とのつながりを説く。おじさん、新聞読んでぽかんとしただろうな(笑)。健康不安からこの境地に至るまでには何ステップも階段を上らなきゃいけないと思うけど、いきなりこれを読んで得心するのは難しかろう。このズレが面白い。
罪のない人が死に、犯罪者たちがのうのうと生きている現実に義憤に駆られる人の相談にも、彼らは幽霊である、彼らにつきそう僧侶のようになれ、と回答していてすごかった。いしいさんは自分の回答をマップを拡大したり縮小したりするような作業に例えているが、まさにマウスをゴロゴロしてたっぷり拡大したところから回答している感じ。
でも2年目くらいからはこなれてきたのか、相談者に寄り添うような回答も増えていく。失った誰かやペットに優しくできなかったことを後悔する相談には、あなたの声は届いていますよ、亡くなったひとの声もあなたに届いていますよね、と語りかける。家族関係や人間関係に悩む人たちには、相手の反応を変えるには自分のアクションをまず変える、ということを優しく伝える。どの相談も孤独のつらさがあふれ出ているが、単にべったり寄り添うのではなく、いのちの響き合いを信じること、言葉を丁寧に使うこと、そういう信念をぶらさずに励ましているのがいしいさんらしい回答でいいなと思った。
まだ連載しているのだろうか。優しい回答はたくさん読んだので、ファンとしては正直もっとぶっ飛んだ相談と回答が見てみたいと思っちゃうな。続編にも期待。