あらすじ
「なあ常悟朗。お前に頼んでいいことなのかどうかわからないんだが……小佐内を紹介してくれないか?」堂島健吾曰く、かつて絵の謎を解いた(ことになっている)小佐内さんに、もう一度知恵を借りたいのだという。──美術家の縞大我が、サンフランシスコ・ビエンナーレの黒熊賞を受賞した。健吾は地元のテレビ局に頼まれ学内を捜索、彼の在校時代の作品を発見するが、その作品は模写でありながら展覧会に出品された事実も掘り起こしてしまったのだ。果たしてこの作品は盗作か否か? 小市民を目指す小鳩君と小佐内さんの謎解きの日々。大人気シリーズ、待望の第二作品集。四編を収録。/【目次】桑港クッキーの謎/羅馬ジェラートの謎/倫敦スコーンの謎/維納ザッハトルテの謎
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Posted by ブクログ
4.5くらい。
どれも面白かった。
お菓子と謎解き。
謎がお菓子の構造とかかった構成で面白かった。
「桑港(サンフランシスコ)クッキーの謎」
1年の2月の話。
p.25
「よし、焼こう」
「ばかやろう」
返しのテンポがいいなあ。
p.32
「小佐内さんのタイプってどんなひと?」
「ええと」
ひとしきり考えた、ようやく出てきた答えは、
「エカテリーナ二世……?」
だった。どうして。
この二つの場面が特に好き。
丹念に調べ上げるのが高校生離れしているけれど、これくらいの胆力が無いといけないものだよなとも納得できる調査と推理で面白かった。
美術=絵画という固定観念を造形という立体物として打ち破り、その内奥を探ろうとするところが探偵の姿勢にも被って面白い。
結局、美術の先生は嫉妬で盗作という濡れ衣を着せたかったのか、どうか。
人の悪意を匂わせるラストで面白かった。
「羅馬(ローマ)ジェラートの謎」
1年の3月の話。
期末試験後にジェラートを食べに行く。
バスの遅延、開きっぱなしのドア、時計のズレなど、伏線の張り方が良い。ささいな違和感を繋げて目の前のジェラートの様子を見て正解へとたどりつく様子が面白い。
スーツの人は何者か、何をしているのか。
目の前のジェラートとスーツの人のジェラート。
小佐内さんは小佐内さんなりの復讐または落とし前をつけさせたんだろうなと思った。
「倫敦(ロンドン)スコーンの謎」
高校2年4月の半ば頃の話。
なぜ沢海さんのスコーンは生焼けだったのか?
小佐内さんは調理実習のレポートのためという言い訳(建前)を話すけれど、実際のところは沢海さんの言動が目立っていたため、今後利用できるのか敵になるのか、敵になった場合の弱みを握れないだろうか、それらを見越しての推理だったんだと思う。
実際沢海さんは後でやらかしていたので。
スコーンを台無しにしやがっての気持ちもありそうだけれども。
p.182
「青田川くん、不幸になるといいね」
「うん。なる」
既にそうなったかのように、小佐内さんは言った。
ここ好き。小佐内さん、何をしたんだ……。
「維納(ウィーン)ザッハトルテの謎」
高校2年6月の話。
美術の甲村先生は同学年で同じ美術だった縞大我に嫉妬しているのか?
嫉妬もあったし、俺のアイディアを真似しやがってという気持ちが残っていたのは間違いないと思う。
アイディアの話をわざわざ小鳩に話すくらいの自負心があったので。
ずっと忘れていたが、縞大我の受賞でそれを思い出し、困ればいい、くらいの気持ち。本気で追い詰める気はなく、縞大我へのヘイト感情を生徒達が持てばいいという小市民的感情。
だから、ヒーロー的行動をとれる教え子を守って教師を辞める。実家を継ぐという名目がある。小市民としての行動。
小鳩は相手を懲らしめてやろうという感情には乏しく、ただ謎を解き正解を当てたいという虚栄心。小佐内さんはやりかえさないと気が済まないので、相手を陥れるために推理力を駆使する。
p.277
「車に気をつけて帰りなさい。テスト準備期間は勉強に充て、特に夜遊びなどしないように」
甲村先生のこのセリフは夏季限定の前フリ?
Posted by ブクログ
小市民シリーズの最新作。
今回は夏限定までに起きた出来事を描いている。今回は短編集ながらも縞大我を縦軸にした長編のような印象を受けました。様々な登場人物が最後のエピソードで収束していく。スイーツがテーマの作品ながらも真相や結末は苦いものばかり。そのギャップがこの作品の魅力なんだと思います。
この短編もぜひアニメで見てみたいと思いました。
Posted by ブクログ
甲村先生の去り際が切ない。
途中途中で鬱屈とした感情も匂わせていたけれども最後の甲村先生の言葉はかっこよかった。
小鳩くんが小佐内さんにありがとうと伝えるシーンがとても好き。
小佐内さんの時折見せる変な仕草が可愛らしい。
この終わりから夏期限定に繋がるの複雑な気持ちになる。
秋期限定や冬期限定の存在を思い出す事で平常心を保てる。
とても面白かった。
Posted by ブクログ
面白かった。毎度のことながら全部のスイーツが美味しそう。スコーンとナポレオンパイを食べたくなった。甲村先生の結末はちょっと寂しい。ビターだ。
最後まで読んだうえでちょっと読み返して、「青田川くん、不幸になるといいね」で唸らされる。ジェラート(少なくとも2号店の)店長はどうなったんだろうか…。
Posted by ブクログ
今回のお話もよかった!
特に最後の『維納ザッハトルテの謎』、小佐内さん
と小鳩くんの2人の雰囲気が特に可愛くてホッとした。
小市民シリーズ大好き!
今後もずっと読んでいきたい
Posted by ブクログ
『倫敦スコーンの謎』は、米澤穂信さんの〈小市民〉シリーズの短編集。
⚫︎桑港クッキーの謎
⚫︎羅馬ジェラートの謎
⚫︎倫敦スコーンの謎
⚫︎維納ザッハトルテの謎
以上4編が収録されており、食べ物をきっかけにさまざまな謎が展開されていきます。
まず、国名が難しくて少し戸惑いましたね。笑
小市民シリーズは、やっぱり小佐内さんと小鳩くんの掛け合いが最高に面白い!
今回の作品では、特にその魅力を強く感じました。
短編集ですが、それぞれの物語が少しずつ繋がっていて、最後にほろ苦さを残しつつも、良い終わり方でした。
謎解きパートのテンポもよく、読んでいてとても心地よかったです。
そして何より、小佐内さんの「えへん」という表現が脳内再生されて、それはそれは可愛い……。
「わたし、だれにでも公平でありたいと思ったことは、一度もない」
この言葉が凄く好きです。
可愛いのに、冷血な小佐内さんが大好きです。
そんな小佐内さんを、やれやれと優しく見守る小鳩くんの構図がまた最高で、この二人の関係性が本当に好きです。
続編を期待
Posted by ブクログ
小市民シリーズの短編集。夏季限定トロピカルパフェ事件の前というのもあってか、小鳩くんと小山内さんの関係性に初々しい部分があり、互いの抱える業とでも呼ぶべき性質に対しても親近感と他人事がほどよくブレンドされた感じがあり、それだけに夏季限定の互いに踏み込んでしまった構図が際立つように思ってしまう。
表題作「倫敦スコーンの謎」はなぜスコーンが上手く焼けなかったのかという謎はわりと読みやすいというか、料理が失敗するのはレシピを守らなかったからで、普通の料理と違って製菓はその辺がよりシビアであるからこそ、論理的に帰結するなら家から生地を持ってきたぐらいしかない。そしてよかれと思ってこっそりダイヤルを弄った生徒の心境が最悪の結末につながる苦さがある反面、美味しいスイーツを一緒に食べる行為は大切なものを分け合うこと、という答えに行き着く小鳩くんがたまらなくいじらしい。
正直な話、ミステリとしては表題作よりも「羅馬ジェラートの謎」が個人的には一番で、「語られざる事件」をベースにした論理構成と伏線回収の妙に唸らされてしまった。ジェラートを食べない客=ジェラートが食品サンプルということまではすぐに分かったものの、なぜ待っているのか?という謎や冒頭の停電などが繋がっていき、それがこちらでは窺い知れない店主個人の信頼へと鮮やかに繋がっていき、最後はリドルストーリーのようにオチる様は見事としか言いようがない。もう一つ気に入っているのは最後の「維納ザッハトルテの謎」で、書き下ろしらしく他の短編を繋げる役目でありながら、動機がとても面白い。壊れた美術品。それに嫉妬する先生、という風に先入観に振り回されながら、実は生徒を守って責任を取ることを美徳とする先生だったというのが面白い。生徒には決して見せない顔でありながら、そこに辿り着いた猜疑心の強い小鳩にだけ見せる本当の顔。「いい大人になりなさい」は色々と感じいる台詞でもある。
総じて久しぶりに読む小市民シリーズには満足感があり、シリーズが終わってもこうして短編集が読めるのは嬉しいサプライズである。古典部氏リーフも早く続きが読みたい