あらすじ
医学生・張田雅之は、アルバイト先の店長の招きで、友人の久郷一と共にとある離島を訪れる。店長の父・柏谷高視は大手ゼネコンの会長でもあり、自身が所有するこの島で、親類や知人を招いて年末を過ごすのを習慣にしていた。集まった人々の前で高視が病気で余命幾ばくもないと明かされた翌朝、彼は四肢を切断され、池に浮かべられた死体となって発見される。高視の部下の男も同様に惨殺されていた。屋敷内のすべての通信設備は壊され、船も二日後まではやって来ない。出入り不能の孤島と化した中、猟奇的な事件を調べるために、張田は医学生としての知識を活かしたある提案をする──。『そして誰もいなくなるのか』でセンセーショナルなデビューを飾った著者による、第二長編。
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Posted by ブクログ
クローズドサークルでの本格ミステリ。
遺書の不自然さには気が付いていたし、死亡推定時刻の根拠も不自然には感じていた。それでも犯人は分かりにくかったし、ロジカルで面白かった。
ただ探偵役の最後がキャラクター的には不自然に感じた。自分に影響が無いなら放っておくのであれば、犯人告発のデメリットを考えたと思う。
Posted by ブクログ
医学生の張田は、バイト先の店長に招かれて、友人の久郷と共にある離島を訪れる。そこは、店長の父である柏谷高視の所有で、家族、友人・知人を招いて年末を過ごすことを習慣にしていた。
到着した日の夕食の席で高視は、自分の余命が半年余りだと告白する。
そして翌朝、高視は、四肢を切断された死体となって、池に浮かべられていた。招かれていた高視の部下も、同様に殺されていた。通信手段も絶たれ、2日後に迎えの船が来るまでは島を出ることもできない。クローズドサークルに島と館。猟奇的殺人。王道とも言えるミステリーだ。
館に招かれた客は、医学生の張田、高視の主治医、警察官、と役者が揃っている。張田の提案で、死亡時刻を割り出すために解剖を行なったのには驚いた。ちょっと前のめりな張田と、どこか達観していてシニカルな印象の久郷は、良いコンビ‥というよりはお互いを牽制し合っているようにも見える。
解剖結果と状況証拠で、張田は犯人を特定するが、ある理由で一線を引いていた久郷が、またある理由により異議を唱える。「自分には関係ないからどうでもいい」→「やっぱり犯人挙げる」の流れが、超自分勝手!そんな自己チューの久郷には、人並外れた嗅覚があり、真相解明に役立っている。しかし、判明した真犯人は自死を遂げた。
久郷が一線をひいていた理由も、真犯人の動機も、常人には理解し難い。
張田は今後も、久郷と友人関係を続けられるのか??曖昧なまま、物語は終わる。これが、タイトル回収なんだろう。
張田が最初に主張した犯人像やトリックは、いや、さすがに‥う〜ん?ていう感じだったし、物語中盤でもう解決?もないだろうし‥。案の定、もう一波乱あるわけで。久郷が推理した内容も、犯人認めてるからそうなんだろうけど、なんとなくしっくりこないというか、モヤモヤが残るというか。真犯人にも久郷にも共感できないからかな‥。
フィクションに突っ込むのは野暮だとわかっているけど、読み終わってから、これってどうなの?と思う箇所がいくつかあって、とにかく読後感がスッキリしない。
シチュエーションと事件の内容は面白かったので、どうだったと聞かれれば、まあまあかな、と答える。
Posted by ブクログ
本作、何とか爪痕を残そうと、読者に何らかの問いを残させたい感は伝わってきましたが、物語の内容でそんなに深い問いにまでは発展させられなかったかな、という評価です。
舞台は陸の孤島の洋館、クローズドサークル。
そこで起きる連続殺人と、密室の中の自殺遺体。
定番の舞台で定番の探偵の推理劇、探偵小説を例に挙げた際に喩えられるような世界で事件は起きます。
発見された二つの遺体は、四肢が切断されて、一方の胃の中にもう一方の心臓が入っていた。
癖の強すぎず、弱すぎない猟奇感もしっかり出して退屈はさせるつもりはないよ、と事件からも礼儀正しく挨拶されます。まるで甲子園の高校球児のようです。
トリックは死亡推定時刻の誤認ですね。
あまり取り上げられることの少ない要素だっただけに、本作は推理小説の造詣を深める良作とも思えました。
本作曰く(本当のところは知らないよ)、
・血液凝固による死斑
・眼球の白濁具合
・直腸温度の低下(最速1時間1度下がる)
・胃の消化物
を参照して死亡推定時刻は割り出されるから、その参照元を破壊し、操作すれば、死亡推定時刻は誤認され、アリバイトリックに持ち込めるよね、という内容です。ユニークでいて理論的でグッド。大変勉強になった気がします。
さて、ここまでは非常によくある洋館ものですね。
本作はタイトル「そして物語のおわりに」とあるようにここからが肝腎となります。
一石を投じようと、わざわざタイトルにせしめるくらいに重要視させたい、らしいです。
それがどんなものかというと、本作、探偵である久郷は、序盤で犯人に気付いており、自分自身に危害が加わらないことを把握したので、そのまま殺人事件を友人が巻き込まれるかもしれないのに続行させていたということがラストで発覚します。
……ふむ、作品によってはまぁそういう探偵もいるのでは? という心地ではありましたが、「さて、ところであなたはそんな彼とこれからも友人をやっていくわけですが、本当にこれまで通り付き合えますかね」と問うてくるわけですね。
事件が終わって、物語が終われば、それがどんな人でなし探偵による解決でも、面白い話の探偵だったね、と済むことも多いですが、今作はそれを大真面目に「え、あなたの人生は終わりませんよ、ほらこの異常人間との付き合い方を考えなさいよ。傍観者として逃げちゃダメだよ」と言ってくるわけですから、「え! そ、そんなこと考えたこともなかったよ!」と我々は青天の霹靂なる衝撃を受け、深く自省しながら探偵性とは、なんという異常性なんだろうと等身大の感想を受け取り、これをテーマにしたのならなんて中途半端な構成なんだ、と本を閉じます。
はい、中途半端です。
物語の終わりに、物語の終わりを越えられていないです。自分で出した命題を自分で超えられてないで他人に問うも何もないでしょう。
「物語は終わらないよ、なぜなら登場人物の人生は続くからね!」とドヤ顔で言われても、だいたいどの作品でもそうですよ、と返すだけです。それは、本作を読んだ人だけが気付く事象ではないです。
視点を提起するだけで問いになるなら、重量の存在に気付いた人からノーベル賞ですよ。
恐らく作者はその視点を発見できたことが嬉しくて本にして伝えたかったのかな、と思います。
何だか可愛いですね。