あらすじ
「応仁の乱がダラダラ長引いた本当の理由」「戦国時代、軍勢1万人の1カ月の必要経費は?」……。歴史学が長年見過ごしてきた鎌倉~戦国期の「軍事のリアル」とは? 書き下ろし論考「豊臣兄弟と軍事」を加えた新装版。
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Posted by ブクログ
著者は東大史料編纂所の教授として有名な歴史家だが、戦略・戦術・兵站などの視点から今まで深い研究をタブー視されていた日本史の軍事を再考しようと試みている。論としてはとても面白いが、非常に残念なのが個別の事例の説明の際に地図がないこと。地理の理解がないと展開される論が理解できずわかりにくくなってしまっています。新書という形式をとっておられるので歴史に興味があるような一般の読者を想定してわかりやすい文章で書かれているだけに、地図がないことだけが非常にもったいないと感じました。
Posted by ブクログ
鎌倉時代から安土桃山時代までをメインに、歴史上の戦いを戦略・戦術・兵站・大義名分というテーマで分析し、それらの戦いのリアルな姿を浮かび上がらせようという一冊。
特に期待したのは戦術・兵站に関する部分でした。鎌倉時代から室町時代ぐらいまでは装備としては刀、槍、弓矢ぐらいしかなく、安土桃山時代になってようやく火縄銃が登場します。刀・槍・弓矢がメインの戦場とはどういうものなのか、その辺りの記述を期待して読んでみました。当時は侍のような職業軍人なら刀を抜きあって殺し合いができたとしても、農民をかき集めて戦場に送り出しても、なかなか人を切り殺すという行為はできなかっただろうとの事。そこで、長距離から攻撃できる槍や弓矢、そして鉄砲が戦いの構図を塗り替えたとの指摘は腑に落ちます。
兵站に関しては、やはり軍を飢えさせないためには「100石=3人」というのが現実的との事。約1万人の軍勢を一か月運用しようとすると、馬や武器のメンテナンスを含めると現在の金額に換算して1~3億円はかかるだろうと。これだけの出費をしてでも戦うのか否か、という判断が求められたということです。
また、士気を高めるための”闘う大義名分”が重要というのは頷けます。やっぱり兵士一人一人が”こんな事してていいのか?”と疑問に感じながら戦うのでは、勝利はおぼつかないでしょう。その考察に、将軍や天皇といったかつての日本の社会の権威の存在など、多面的に考察されています。
日本国内の軍事に的を絞った著書なので、言及はありませんが、本書の考察をイラン攻撃に踏み切ったアメリカに適用すると、トランプ氏の戦略には、かなり無理があるように思えます。
大義名分、闘いの目的もトランプ氏がコロコロ変えてしまうので、”闘い”の定義があいまいで終わらせ方がよく分かりません。ダラダラと長期戦になだれ込んでいる今、あれだけの規模の軍隊をアメリカ本土から遠いペルシャ湾近辺に展開しつづける費用は相当なはず。トランプ氏の戦略の何がおかしいのか、本書が明確にあぶり出しているように思えました。