あらすじ
若きレヴィ=ストロースに哲学の道を放棄させ、ブラジルの奥地へと駆り立てたものは何だったのか? 彼の構造主義を中心とする思考は、現代思想にも深い影響を与え、西洋の自文化中心主義への反省と主体の解体をうながす大きな役割を果たした。本書は、レヴィ=ストロースの代表作『親族の基本構造』『野生の思考』『神話論理』をとりあげ、彼が未開社会の親族構造や神話研究から汲みあげた豊かな思考の可能性の核心を読み解く。しばしば誤解されがちな「構造主義」を本当に理解し、ポストコロニアル論にも活かすための新しい入門の書。
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Posted by ブクログ
レヴィ=ストロースは、「悲しき熱帯」や「野生の思考」、インタビュー集などを読んだ事がある。私は、これらの本からにじみ出てくる人柄と知性のありようみたいなものが、とても好きなんだけど、結局のところ、何をいっているのかはよく分からない。というか、「分かる」ということに何がインプリケートされているかというと、哲学的な意味とか現代社会へのインプリケーションとかなんだけど、彼の本は、当然、人類学の本なので、神話だとか、親族だとかの構造がどうなっているという話がメインで、そこから性急にそういうことを直ちに読み取れないのは当然なんだけどね。
さて、「なぜ今、レヴィ=ストロースなのか」というと、個人的に、今「システム」ということを関心があって、「あれ? システムと構造ってどう違うんだっけ?」というのが気になって、構造人類学の創始者であるレヴィ=ストロースにあらためて入門してみたというわけ。
「システム」という言葉で、私は、要素と要素間の関係でできていて、要素間の関係が相互依存的であり、「どれが主要因だ」とか「どれが起源だ」とか言えないような全体性をイメージしている。そうした「システム」がレヴィ=ストロースの「構造」と同じかなと思って読むと、そういったものは「体系」であって、「構造」ではない、とのこと。「構造」とは、そういう「体系」を「変換」しても変らないようなもの。さらに言うと、体系と体系の類似点ですらなく、相違している対称性みたいなものの類似点みたいなものなんだそうだ。ということで、これだけでは大変分かりにくい概念なのだが、この本は、「親族の基本構造」、「野生の思考」、「神話論理」をそういう着眼点で丁寧に読み解いてくれるので、すごく頭がすっきりした気になる。
また、そもそも「構造人類学」とかいっても、他の人類学的な本をそれほど読んでいる訳ではなく、レヴィ=ストロースに対して、「歴史がない」とか、「文化相対主義を標榜しながら、結局、西欧的な理性中心主義ではないか」とか、「異文化の神話などについて、その異文化の中にいる人たちに気づかない構造がある、と指摘する事自体、一種の優越性を前提としているのではないか」とか、彼の批判者がいうようなことを、私も感じてきた。が、この本を読んで、レヴィ=ストロースは、そういうレベルのつまらん人間ではないことを納得させられた。むしろ、そういう批判をいう人間のほうが、自文化中心主義にはまっているのだ。この本は、レヴィ=ストロースをエドワード・サイードの「オリエンタリズム」に先駆けるような存在として位置づけているのも面白い。
長らく翻訳が待たれていた主著「神話論理」の4巻も、2巻まで出ているみたいだし、「読まねば」の気持ちになった。
Posted by ブクログ
最強の哲学入門、寝ながらわかる構造主義を読んで、なんとなくレヴィ=ストロースの考え方が好きだなと思い、悲しき熱帯、100分で名著を経てこの本を読んだ。
体系と構造の違いはよくわかった。
主体を解体するとか、その辺はなんとなく理解できた。
顔の見える関係性もわかりそうでわかってない。
完全には理解できていない。整理したい。
なんでレヴィ=ストロースが好きなのかがわかってきた。
Posted by ブクログ
人類学への興味から、レヴィ=ストロースの興味へ。
まだレヴィ=ストロースの本を読めていないので、1つの読み方であることを心にきちんと留めておく。著者自身も、他の人の一般的な読み方とは異なり、またレヴィ=ストロースへと偏っていると書いている。
構造主義の理解が少しは深まった。
人類学の意義は真正な社会を焦点に置くところとのこと そう考えると、人類学を自分の国でやるということへの違和感もなくなるかも
Posted by ブクログ
レヴィ=ストロースの思想についての入門解説書。レヴィ=ストロースのキーとなる概念を幾つか紹介し、それに対する批判を紹介し、さらに筆者によって反批判が繰り広げられる。
レヴィ=ストロースの思想に絞って述べられており、筆者の解釈で書くというスタンスが明確になっていて、それに沿って明瞭な構成をとっているので、非常にわかりやすい。
私個人の考えでは、レヴィ=ストロースは近代の通奏低音であるドイツ観念論を初めてまともに乗り越えた思想家である。彼はまだ死後間もなく、これから研究も進んでいくものと思われるが、その思想史的意義はこれからますます認められていくだろう。
その入門に最適な一書としてこの本をお勧めしたい。
Posted by ブクログ
構造主義の祖であり、一昨年100歳という長寿の末亡くなった文化人類学者レヴィ=ストロースの入門書。筆者はレヴィ=ストロースへの共感をもって書いているため、そちら側からの一方的な主張のように感じたが、読後感としてはその方向性はよかったように思う。
これを読んで、レヴィ=ストロースとは確かに構造主義の原点であり、本質的なものを取り出している、だから現在でも全くその価値は色褪せていない、そのように思えた。
入門書であるので『親族の基本構造』や『野生の思考』『神話論理』などレヴィ=ストロースの主著を取り上げて解説をしているが、本書のほんとうの主題となるのは「真正な社会」というテーマだ。
「真正な社会」という言葉じたいはレヴィ=ストロースからの引用である。この概念は「〈顔〉のみえる関係における多元的なコミュニケーション」を指している。筆者はこれを読み換えて、「野生の思考」に基づく「真正な社会」こそ、現代の国民国家・グローバリゼーションのどちらにも与さない、オルタナティブな社会のありかただと述べている。
Posted by ブクログ
「入門」とタイトルについているがおそらく初心者でなくても楽しめる一冊。レヴィストロースに関する誤読、誤解を正すために書かれた本であり主に構造主義を扱っている。島で育った日本の人には西洋思想よりこちらの世界観の方が馴染みやすいと思う。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
若きレヴィ=ストロースに哲学の道を放棄させ、ブラジルの奥地へと駆り立てたものは何だったのか?
彼の構造主義を中心とする思考は、現代思想にも深い影響を与え、西洋の自文化中心主義への反省と主体の解体をうながす大きな役割を果たした。
本書は、レヴィ=ストロースの代表作『親族の基本構造』『野生の思考』『神話論理』をとりあげ、彼が未開社会の親族構造や神話研究から汲みあげた豊かな思考の可能性の核心を読み解く。
しばしば誤解されがちな「構造主義」をホントに理解し、ポストコロニアル論にも活かすための新しいレヴィ=ストロース入門。
[ 目次 ]
第1章 人類学者になるということ―哲学の放棄
第2章 構造主義はどのように誤解されるか―変換と無意識
第3章 インセストと婚姻の謎解き―『親族の基本構造』
第4章 ブリコラージュvs近代知―『野生の思考』『今日のトーテミズム』
第5章 神話の大地は丸い―『神話論理』
おわりに 歴史に抗する社会―非同一性の思考
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
メモ)
(西洋の共同体観 固い統一性をもち、固定的で閉じられた社会←→遊動する集団=ノマド)23
「閉じられた共同体」からの開放という物語は、 1.≪近代社会が自らを開かれた進歩した社会とみなすことを可能にする≫ とともに、 2.≪共同体に縛られている非西洋社会や西洋内部の周縁を文明化するという観念≫をつくり、≪植民地支配を正当化する働きをしてきた≫25
「閉じられた共同体」(閉鎖的/均質/抑圧的)の観念は、近代以前にあった共同体間の交通や、雑種性を見えないものにする 25
社会の真正さの水準 26
1.非真正な社会 間接的コミュニケーション(書物、新聞、テレビ)によって結ばれる大規模な共同体 国民国家のなかのネイションやエスニックグループ等
2.真正な社会 顔の見える関係による小規模なローカル諸社会
身体的な相互性を含む<顔>のみえる関係における多元的なコミュニケーション ←→ 法や貨幣、メディアに媒介された間接的で一元的なコミュニケーション 27
両者の差異は規模の違いからではなく、「社会の想像の仕方」からくる 28
cf.ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』
構造の定義(『構造・神話・労働』)46
1.要素と要素間の関係は同一平面に置かれる。ある観点から形式と見えるものが、別の観点からは内容とみえる。
2.不変性。構造は「変換」を経てなお変化せずにある。(「他の一切が変化するときに、なお変化せずにあるもの」)
(構造は体系、要素間の関係ではない。)
変換のないところに不変なものは見出せず、したがって構造もない。(構造がみつかる場は体系と体系の間である 51)
“ある変換”‐“ある構造” cf.『はじめての構造主義』
二項対立の導入 71
ブリコラージュ(『野生の思考』)とシュルレアリスム(エルンストのコラージュ)の親近性…断片の思いがけない繋ぎ合わせ(「手術台の上での…」) 62
「無意識にはたらく二項対立(差異)群」 個別の音素ではなく、音素相互の対立を重視するヤコブソン
→ひとつの項の実体としての≪意識的な≫把握から、項と項の差異関係がはたらく≪無意識≫の場の把握へ
言語活動は「差異の体系」によっている ソシュール 69
インセスト・タブーと婚姻
互酬的交換(女性の贈与)は、≪自立した主体の欠如を合理的に補うための経済的交換≫ではない。
(社会を生成する)互酬的贈与交換は、女性を贈与し女性を獲得する「同種のものの交換」であり、≪「交換のための交換」(関係をつくるためだけの交換)≫である。87-88
家族関係は交換関係(連帯、交通)のための様態 88
『野生の思考』
野生の思考は失われた過去の思考ではない
1.野生の思考/近代科学の思考 は共存する 2.両者のうち、野生の思考がより普遍的な思考である
(タカとカラスの名で呼ばれる二つの母系外婚半族
二つの鳥は隣接関係(メトニミー)にありながら対称的に対立する記号:共通点―肉食 タカ=猟をする←→カラス=腐肉を漁る
タカ/カラスの対立と、それらの名を持つ半族の類似は、それぞれのカテゴリの相違点にある)127
隠喩と換喩(<ヤコブソンの詩学) 130
隠喩(メタファー)=類似性による結びつき(他カテゴリー間)
換喩(メトニミー)=隣接性による結びつき(同カテゴリー内)
近代の知‐「概念」←→野生の思考‐「記号」139
概念―現実に対して全的に透明であろうとする(シニフィアンとシニフィエの一致、シニフィアンの出来事性は消される)
記号―現実の中に人間性のある厚味をもって入り込んでくることを容認する(シニフィアンの特質や出来事性が前面に押し出される)
(ゼロ記号 = x (マナ、「ツキ」)143
「ゼロ象徴価値の記号」はそれ自身の意味を欠く。シニフィアンの過剰による不整合、空白を埋める不在)
断片の思想
ポストモダンの特徴―異質な断片を全体に統合しないこと(全体=「大きな物語」<リオタール)146
モダン・ポストモダンの知に対する、普遍的思考としての野生の思考 148
ヘゲモニーに対する抵抗としての「臨機応変の戦術」、ブリコラージュ 150
(エリート文化の自分たちの規則への改変、組み入れ)
(戦略と戦術 ミシェル・ド・セルトーによるブリコラージュの新しい用法 153-154
戦略―主体が環境から超越することで可能になる力関係の計算(支配的文化が「周縁」の断片を取り込むこと、一義的な意味づけ)
戦術―全体を見通すことのできる場所を所有しないが、何とかして計算をはかること(ヘゲモニーの法/制度/表象を受け入れながらも、その意味や機能の多義性を引き出して流用するブリコラージュ)
真正な社会に生きる「弱者の技」、ブリコラージュ)
主体の解体 204-
神話=「自然→文化」―連続/不連続の調停 204
神話が人間の中で思考する。「私」はものごとの起こる交叉点 205
無意識という空虚な場での他社との交叉 特殊な自意識的主体の解体 207
神話の特徴―≪複数のコードの使用≫ 212
記号は複数のコードの間をうつることにより、≪諸‐二項対立の隠喩にも換喩にもなりうる多価的な記号≫となる
蜜…料理のコード、動物学的コード、家族のコード、性的コード
<隠喩や換喩への変換は、項と項の置き換えではなく、コードのあいだの移動なのであり、調停不可能な根源的対立の調停を行うための二項対立の隠喩的な置換や換喩的な中間項の挿入はコードのあいだの移動によってなされる>213
(分析者は超越的な主体ではない)232
分析者=空虚な場所=無意識―象徴機能(象徴的効果、『構造人類学』)
歴史意識への批判 216
西欧―「単一の歴史」意識(主体 identity を形成する、単一のマクロな歴史の連続性 ヘーゲル、マルクス、サルトル 進歩史観)216-217
「純粋歴史」(『野生の思考』、「独自性の歴史」 個々の出来事の独自性、出来事の<顔>を表す不連続性 体験できるミクロな歴史)219
「単一の歴史」は、近代の非真正な社会ができて初めて創られうる特殊な歴史(「日本国民」の発展の歴史という連続性への出来事の統合)
「冷たい社会」―歴史に抗する社会←→「熱い社会」―偶然を発展として取り込む
非同一性の思考=「中間性」の思考 228
中間性の思考―二項対立を小さな対立で媒介し、対立を反復させる(二項対立の増殖)←→弁証法の思考―二項対立を止揚し、<一>へと統合する(二項対立の消去)
自然と文化(連続と不連続)の媒介…「蜜」 統合/同一性の原理の拒否
「ゼロ記号」は自身が<二>のまま中間にあるものであり、全体を統合する超越的価値ではない
Posted by ブクログ
レヴィ=ストロースが亡くなったので、拾い読みで再読。橋詰大三郎さんの「はじめての構造主義」でも構造は数学的な概念だと説明してあったけれど、具体性に欠けた。(新書の入門書だしね。でも、これも名著だと思う)
本書に知的興奮を味わった。読みやすく、数学の知識がなくても具体的な神話バリエーションの変換例で、構造が数学的概念だと納得させられる。橋詰さんの本の後に読むことをお勧めする。
巨人レヴィ=ストロースに合掌。
Posted by ブクログ
腑に落ちるには、この本だけでは難しそう。でも、ぼんやりとした輪郭は見えてきた気がする。構造の意味を真に理解するにはまだ勉強不足。ただ手札は増えた感じはする。
Posted by ブクログ
「はじめての構造主義」の後に本書を読んで正解だった。いきなり読んでも全然理解出来なかったと思う。内容は「はじめての~」とほぼ一緒。レヴィストロースについての再確認になってしまった。でも、神話の構造分析について実際の分析例を通して詳しく紹介してあったのはありがたかった。これが一番知りたかったから。
Posted by ブクログ
2014.05.10 いまさらながらといわれるかもしれないが、構造主義をもう少し詳しく知りたくて、その代表的な研究者であるレヴィストロースを探求。少し深く理解することができたかな・・・構造主義はなかなか手ごわい。
Posted by ブクログ
構造主義の大御所、レヴィ=ストロースの入門書。ただ、入門とはいうものの、ほとんど理解できなかった。
①構造(主義)とは何か
②何のために「ブリコラージュ」を提唱したのか
③レヴィ=ストロースの考え方(社会学)から現代の問題を視る切り口はあるのか
この3つが曖昧なので、他の本も読み進めたい。
Posted by ブクログ
小田亮というひとの本をちょっと読んでみたいかなーと思っていたところ
いえの本棚に発見した。ので読んだ。
解説本(といっても、かなり小田さん独自の読みではあるらしいが)であって、
小田さん自身による研究成果(まぁ解説も、まして独自のというならば研究成果でしょうが)ではないから、何とも、ですが。
わかりやすかったけども原典も、他の「入門書」もほとんど読んでないので、へぇ、というところまでで終わってしまいました。