【感想・ネタバレ】子どもが減って何が悪いか!のレビュー

あらすじ

少子化が進んでいる。このままでは日本が危ない。そう危ぶむ声もある。これに対し、仕事と子育ての両立支援などを行い、男女共同参画社会を実現させれば少子化は止まる、と主張する人たちがいる。本書は、こうした主張には根拠がないことを、実証的なデータを用いて示してゆく。都市化が進む現代にあって少子化は止めようがなく、これを前提とした公平で自由な社会を目指すべきだと主張する本書は、少子化がもたらす問題を考える上で示唆に富む一冊である。

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Posted by ブクログ

この本を読んで、改めて、少子化対策がことごとくうまくいっていないのは、「各対策にそもそも効果がない」、あるいは「前提が間違っている」という思いを強くしました。

少子化は、ある意味、自然な流れなので、それを前提にした社会設計には大賛成です。
もちろん、男女平等の実現は大前提。

以前読んだ、『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』や『デフレの正体』の内容とも合致しており、非常に納得できる内容でした。

「誰が正しいか」ではなく「何が正しいか」という視点の大切さを改めて感じた、という意味でも有意義な本でした。

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2017年02月12日

Posted by ブクログ

リサーチ・リテラシーについての本。
データに騙されるな!という『社会調査のウソ』の実践版という感じかな。

著者は問いと答えを以下のように記している。 p.24
・男女共同参画は少子化対策と結びつくべきなのか。→「否」
・少子化は問題なのか→「多少、問題」
・仮に少子化が問題だとして、出生率回復策で対応することが容易ことなのか→「否」
・出生率の回復よりも、優先すべき課題はあるか→「ある」
・少子化を食い止めることは可能か→「不可能」
・人口減少社会が到来する今後、どのような政策が望ましいか→「出生率低下を与件とする制度設計が望ましい」

これらの問答に「えっ」と感じた方は是非読んで欲しい。

少子化のメリットデメリットについての言説も興味深い(私も著者もそれを支持しているわけではない)。 pp.119-121

【メリット】 
・住宅問題の解決
・財政の好転
・通勤地獄の解消
・レジャーをより楽しめる
・高齢者や女性の基幹的雇用が確実になる
(森永卓郎『<非婚>のすすめ』 pp.175-177)

【デメリット】
・人口減少、若年労働力の減少により、日本経済社会の活気が失われ、衰退する。子どもや若者をターゲットとした産業(教育市場やおもちゃ産業)が衰退する。
・若者は新たな産業への順応性が高く、新製品開発などの創造性が高いと考えられるため、若年労働力が減少すると、全体の労働生産性が低下する。
・高齢化に伴い、年金や社会保障費が増大する。が、少子化のため給付が減る。

これらについてさらに突っ込んで議論している。特に年金制度に強い思い入れがあるのか詳述している。私も著者同様に積み立て方式を支持したい。いままで割賦方式で払っていた人たちの年金をどうするのかという問題には答えられないが、私がもらうならこれがいいな。変に長生きしたら大変そうだが。

最もに興味深いのが、第6章。特にハイパーガミー(女性が自分より地位の高い男と結婚する)が面白い。経済が低成長に転じると、自分の父親より経済力がない男が増える。そんな男と結婚して生活水準が低下するくらいなら、実家で両親と暮らした方がまし、という説は経験からしても納得。まぁ、お金だけで決めるのではないことはわかっているが。『結婚の社会学』と『パラサイト・シングルの時代』が読みたくなった。

(まっちー)

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2014年02月13日

Posted by ブクログ

全ての章に渡って、データを慎重に見ること、算出された数値をいかに解釈するか、子供を持つ・持たない家庭、結婚の意思がない人への配慮など、選択の自由に重きを置いて男女共同参画社会と少子化の関係について批判的に論じている。「子供を育てやすい社会になれば一件落着」とマスコミが伝える情報を鵜呑みにしていた自分に、衝撃と自分で考えることの大切さを気づかせてくれた一冊。

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2012年10月28日

Posted by ブクログ

名著!!

新書でここまで説得力のある
本に出会ったのは久しぶり。

リサーチリテラシーの観点から、
「男女共同参画が進めば、出生率は上がる」
という欺瞞を見事に暴いている。

フェミニズムについても言及しており、

『「性からの自由」と「性への自由」は等価であることが理想である』

は至玉の名言。
その他にも

・男女共同参画と出生率回復の理念的欺瞞
・特定ライフスタイルへの政府の偏った支援
・子育てフリーライダー論
・保育・育児支援政策の欺瞞と偏り
・アファーマティブアクションの矛盾
・「無限という病」=アノミー論
・「産みたくても産めない」の嘘とメカニズム

etc...興味深い考察が目白押し。
統計の解説部分は文系にはちょっとしんどいけど、
そこさえ飛ばし読みすれば文章も明確で◎。


少子化を是と捉える筆者の哲学にはそもそも異論があるが、
それを差し引いてもほぼ満点を差し上げたい。

女性の社会進出、高学歴化、晩婚化が進めば
子どもは減り少子化は加速する。

女性を犠牲にするか、時計の針を100年戻すか、
少子化を受け止めて新しい世界を築くのか。

近代社会の明日はどっちだ。

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2012年09月22日

Posted by ブクログ

タイトルがトンデモ本のようでアレなんだけど、中身はちゃんとしたもの。
インパクトを与えたかったんだろうね。
社会学者が社会学的に「少子化は何の問題もない!!」と斬っている。
しかもこの先生、社会学でもこの分野は専門外らしい。
それだけ少子化対策とかジェンダーフリーに疑問を持っていたのだろう。
自分も少子化は問題ないと薄々思っていて、何か学術的にそういう本が読みたいと思っていた。
思想としてそういう本はあるんだけどね。
そして実際にこの本を読んで納得した、と。
まあ、でもこれは思想的に偏りのある人からは攻撃、もしくは黙殺されるだろうね。
実際出版から数年立っているけど、少子化はこれから更に進行するものと考えて何とか対策を立てていこう、って流れにはなってないもん。
未だに「どうしたら若者は産むのか」なんて議論をしているでしょ。
これ読んだことあるかなー、小渕の娘(笑)。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

少子化と男女共同参画が一緒くたに論じられることについて厳しく批判した本。労働などの面での男女平等をはかると出生率があがるということで「男女共同参画」を推し進めたフェミクラートへの批判も含むので、業界ではいろんな評価がある。でもワタシは自分でこいつを読んで、この人は基本的には正しいと思った(細部ではまぁ、いろいろあるにしても)。どちらにしたって、こどもが増えようが減ろうが、不平等はあってはならないし。少子化は女性労働の変化によるものでなく、都市化現象の一つなので、少子化傾向を労働に関する政策やましてや倫理道徳では解決できない、少子化を視野にいれた政策を立てるほうがいい、というのはわかりやすい。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

刺激的なタイトルの少子化関連の新書。昨今の少子化議論に違和感を感じている人も感じてない人も一度は読んでみるべき新書です。さまざまな統計手法(主に重回帰分析)が使われているが、そこは読み飛ばしても大丈夫かと。少子化は都市化の規定路線か、それとも防ぐべき課題か、学問的にも実感的にも考える契機になる良い本です。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

煽り系のタイトルに驚きますが
中身はいたってまじめな統計のからくりを
ほどいていく本でもあります。

有意差等懐かしい言葉が出てきて
ちょっとにんまりした本でもあります。
(一応多少なりとも統計学は学んだので)

要するに、いかにも説得力がありそうな
少子化に関する統計が
ちょっと条件を変えてみるだけで
データなんぞはいくらでも都合よくできるということ。

そしてそれを鑑みて大事なのは
どの選択肢を選んでも、問題ないような
社会を作らねばならないということ。

ま、今の上世代のがいたら無理だわな(笑)

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2020年01月02日

Posted by ブクログ

リサーチリテラシーを軸に、子供が減るということの本当に意味するところを問い直す。決して少子化を積極的に推進しようとしている訳ではなく、あくまで少子化の意味するところって、本当に世間一般に言われているようなものなのですか?ってことを、真摯に再考している内容。

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2016年04月18日

Posted by ブクログ

再読。
一つ一つの主張にしっかりとデータをつけ、実名を挙げて反論する論の進め方は、やはり説得力があるし痛快。
ただ、今って著者の予想とはちょっと違って、ゆるやかに少子化は解消してきてるよね。
これをどう考えるべきか。「パート2」をぜひ執筆してほしいなあ。

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2014年09月26日

Posted by ブクログ

 少子化はたしかに問題であるかもしれない。しかし、出生率を回復させるための方策は、コストに見合わない結果しか残していない。それよりも、少子化は不可避の条件として、それを織り込んだ社会制度決定をするべきだ。
 という主旨を、衝撃的な裏付けをもって主張するのがこの本。いままでのデータ分析・およびそれに基づく政策の問題点を鋭く追求している。

 仕事と子育てのトレードオフを解決できれば子供は増えるか? 子育て支援をすれば子供は増えるか? 本書はこういった「少子化対策」について説得力ある考察をしている。のみならず、少子化によって起こりうるデメリットに対してもがんばって答えようとしている。

 統計の扱いなどに納得できる説得力があると同時に、読み物としても著者の思い入れやルサンチマンが強く表明されていて読み応えがある。読んで楽しい好著。

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2014年03月30日

Posted by ブクログ

タイトルはインパクトありますし、軽いタッチの文章も。ただし、男女参画をはじめとする昨今の「少子化対策」は、少子化を防げないと実証していくとても論理的な内容です。さらに印象的なのは、特定のスタイルを積極的に進めることへの違和感や、あるべき「自由な」社会への志向、さらに子ども関連の社会支出はその人権擁護以外に根拠が無いとする、筆者の価値観を簡潔に表明していくその勇気です。

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2011年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 普通否定的に捉えられる少子化の問題を肯定的に捉え、「少子高齢化に適応できる社会を目指すべき」と論じた本。タイトルは「機動戦士ガンダム」のブライト・ノアの「殴って何が悪いか!」のパロディらしい。

 著者は「男女共同参画社会の実現」、「夫の家事分担」、「専業主婦優遇(配偶者控除)の廃止」、といった方策に少子化を食い止めることができないことをリサーチ・リテラシーの視点から説く。さらに、このような方策を嘘や捏造を用いてでも確信犯的に推進されていることもまた批判の的となっている。

 著者の主張は首尾一貫している。その趣旨は子どもは産みたいと思って産むべきであり、この問題に行政が支援をするなら、周囲の大人ではなく子ども本人の利益に即するべきだというもの。

 そしてライフスタイルの選択の自由と世代間の負担(社会福祉費)の分配の問題をまず克服すべきであるということと同時に、少子高齢化が進むなら、それに適応できる社会を作るべき、と説く。

 それから、私にとって反省すべきことがある。『デフレの正体』という本のレビューを書いたとき、「女性の就業率と出生率が比例する」というデータがあることを述べたが、勉強不足の私はこれを鵜呑みにしてしまった。

 実際は比例するとは限らない。沖縄県、島根県のように出生率が高い県では出生率が高めの傾向が出る第一次産業の就業率が高いため、相関関係があるように見えるだけであった。都市化が進んでいるか否かの違いだけである。

 子どもは、子供を産み育てる覚悟がある人だけが産めばいいという意見には、新鮮なものを感じた。勉強になる良著だと思う。

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2011年06月06日

Posted by ブクログ

世に蔓延る少子化言説に警鐘を鳴らし、リサーチリテラシーの重要性を説く本。
筆者の「愛情をもって育てる覚悟をもてた男女だけが、子供を産めばよいのだ。そうした選択の結果、生まれる子供の数が少なくなったとしても、それはそれで仕方ないことだ」の部分には感銘を受けた。

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2011年11月05日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
少子化が進んでいる。
このままでは日本が危ない。
そう危ぶむ声もある。
これに対し、仕事と子育ての両立支援などを行い、男女共同参画社会を実現させれば少子化は止まる、と主張する人たちがいる。
本書は、こうした主張には根拠がないことを、実証的なデータを用いて示してゆく。
都市化が進む現代にあって少子化は止めようがなく、これを前提とした公平で自由な社会を目指すべきだと主張する本書は、小子化がもたらす問題を考える上で示唆に富む一冊である。

[ 目次 ]
序章 世に溢れるトンデモ少子化言説
第1章 男女共同参画は少子化を防げるか
第2章 子どもを増減させる社会的要因は何か
第3章 夫の家事分担は子どもを増やせるか
第4章 男女共同参画は少子化対策ではない
第5章 少子化の何が問題なのか
第6章 少子化はなぜ止まらないのか
第7章 子育て支援はいかにして正当化されるか
第8章 子どもが減って何が悪いか!

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年10月27日

Posted by ブクログ

大学に入る前に読んだ本。
少子化と少子化対策について、よくわかりました。

それまで言われていた、保育所政策を拡充すれば(働きながら子育てできれば)少子化は止まる!わけじゃないと知って目からウロコ状態。。

統計の取り方によってこんなに違うものなんだ、と初めて知った。
タイトルで選んだけど、正解(勉強になった)本でした。

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2009年12月14日

Posted by ブクログ

個人的に、少子化・日米同盟・憲法9条・小泉改革・死刑制度・非正規雇用の
6つは、次の総選挙までに、一市民としてとりあえずの意見を固めておきたい
トピックだと思っている。

少子化問題というと、担当大臣のポストまで出来たり、移民の受入れ促進とか
ちょっと過激な話になってきたりすることが多いが、そもそも少子化がなぜ
問題なのかをきちんと問題にしている論説があまりに少ない。同じトピックで
あと数冊手にとってみる予定だが、本書は十分に「あたり」だった。

過激な語り口で、わりと穏当なデータ分析の妙技を見せてくれる一冊。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

社会調査の講義で、社会調査が世の中に与える影響力に関するディスカッションをやっていたら、乱入してきた変人・堀川教授がこの本を勧めてきた。今までの授業で読んできた文献が全て社会に影響を及ぼすものだったので、単純な僕は社会調査とは全て、社会へ影響力を持つことを意図して行われるものなのだと思っていたのだが、そういうことは誤解であると突っ込まれた。参考文献になった文献は社会に影響を及ぼすほど名作で、なおかつわかりやすいから参考文献になったのだ考えるのが普通だと、突っ込まれてやっと気づいた。
ハナっから社会へ影響を与えることを意図するか否かは調査者次第であるということ。調査者にはいろいろなタイプがおり、大きくは典型的な大学引きこもり派と、表舞台に立って議論する派と、その真ん中派の3派。教授は真ん中派であるらしく、世間に広く影響を与えようとするよりかは、あくまで学会の中で、あくまで調査対象との間での議論を主とするのだと言う。(おそらく法政の社会調査系の教授陣は真ん中派ばかりだと思う。)だから小樽の問題(教授は小樽の住民運動を専門に調査している)に関しても、大衆に向けた本を一冊と出していない。だから世の中の役に立ってないと言うのは大きな間違えで、問題を学者視点から整理することは、その問題を当事者たちがより円滑に解決していく上で大事なことなのである。
そこでプログラマーG(ディスカッション仲間である)がこんな質問をした。「どうして影響力を行使していこうと思わないのか?」その質問に対して「影響力を持とうとすることは即ち、メディアに訴えていくということになるが、その舞台で必要なのは学者としての資質と言うよりかは、政治力がモノを言ってくる。だからそこからさらに正確な研究を続けようとするならばかなり大きなリスクを背負うことになるし、実際ダメになった人をたくさん知っている。つまり影響力を与えようとすることは全然簡単なことではないのだ。そして僕にはまだその準備は無いから、現状の立場で頑張っていこうと思っている。」とまぁ、確かこんな話だったような。確かに有名になれば人と人との距離が重要な社会調査において、その図り方がかなり難しくなることは必至。そしてメディアに出てくる学者がだんだんと鼻につく人間になって、愚にもつかないことを言ったりしだす例はいくらでもある。影響力を与えようとすることが全てプラス要素になることは大きな間違えであるという、かなり平凡な事実なのだが、ついつい忘れてしまうことである。もし、影響力を行使しようとするならばそれだけ大きな力量が必要なのだ。
そこで、この本を勧められた。社会調査がどのようにして社会に対して影響力を与えるのかについて考えるのに参考になるとのこと。読んでみると、統計リテラシーの話である。前によんだジョエル・ベストと同じセンのお話である。ただこの本は統計学的な話がかなり入ってくるのでちょっと手ごわい。が、大した量ではないし、相関係数さえわかってれば理解できる。
題名からして大胆であるが、内容もまた大胆である。社会学者の典型、ひねくれ者(統計リテラシーの話をするひとのひねくれ度はハンパじゃないかと思う)の言説である。だからこそ、我々がどのようにして陽動されてしまうのかについての分析は詳しい。政治を行おうとする者たちは物事を単純化させて、スムーズにシステムを構築しようとする。そのため調査結果がその政策に有利に働くように意図的に操作されている可能性がある。我々としても調査結果が単純である方がとっつきやすいし、もしその調査の対象が社会問題に関することであり、それを解決する手立てとしてデータが紹介されたなら、ぜひともそれを利用して「社会問題を指摘できる人間」になりたいものだ。そして多くの人間がそうなる。「この調査結果が示すようにこれこれの問題はかくかくすべきだ!」と世論は動く。そこに「待った!君らは本気でその調査結果が正しいものだと確認したのか?え?」と突っ込みを入れるのがひねくれ者の役目だ。
かなりKYである。「問題を解決しようとしているつもりになるな!」と言っているのだから、言われた方はムカつく。「偽善者ぶるな!」と言われてるのと同じであるのだから。著者が述べているように、これはある努力を一気に無化してしまう可能性もある。だが、その姿勢は認められるべきものである。教授の話に戻るが、影響力を与えようとする人間には政治力が憑いている、だからその影響力に対してどっしり構えることのできる、ひねくれることのできる、そしてされにそれを感情的なものではなく、学問的知見に基づいた冷静な分析のできる人間の役割は大きい。より問題の解決を正しい方向に導くためにも。(ただ、赤川学はどちらかといえば影響力を持とうとする派であることも言えるが、統計リテラシーの話は日本であまりされないので、プラスの影響を与えたと思っている。)
後半のほとんどは、政策に対する批判と代替案について述べられているのだが、これに対して明確にYES・NOすることは少し自身のレベルが足りない。でも「選択の自由」というのはわかる話だと思う。価値観の多様化に合わせた政策が必要であることは確かだし、そもそも現状のシステムは金の無駄である。ニートに関する支援システムでもそれが問題視されている。的確なところに正確な量を支援することが、政府の役割なのだから、単純化された調査結果を基にシステムを構築することにそもそもの無理がある。これは変えていく必要があると思った。
だがひっかかる点もある。やはり子供を産むということは、生きとし生けるものの役割であり、自然の摂理であるのだから、それを頭ごなしに自由だ自由だと言いふらすのははたして正しいことなのだろうかと。セックスしない、子供も産まない人間の未来ってどんなものなのか、想像すると少し怖い気がする。まぁそこから得る幸福感・満足感を犠牲にしても(犠牲とも言わないのかもしれない)得られるものがあるのだから、個人の選択を重要視するのだろうが、何か不安だ。原理崇拝者と言われてもいいです。

そして、話はそれるのだが、反「近ごろの若者は」の話になるのだが、「日本精神自己批判」の高まりと「平均寿命」の高まりの相関を調べたい。平均寿命が延びているということは、世代間での価値観のギャップが激しくなるということである。そして過去ほど何故か美化される。そして若年世代へのバッシングがはじまる。もっとデータをしっかり分析すれば、若年世代も腐ったものではないのではないかと思うのだが、それはまたあとで。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

少子化が進んでいる。このままでは日本が危ない。そう危ぶむ声もある。これ
に対し、仕事と子育ての両立支援などを行い、男女共同参画社会を実現させ
れば少子化は止まる、と主張する人たちがいる。本書は、こうした主張には
根拠がないことを、実証的なデータを用いて示してゆく。都市化が進む現代に
あって少子化は止めようがなく、これを前提とした公平で自由な社会を目指す
べきだと主張する本書は、小子化がもたらす問題を考える上で示唆に富む
一冊である。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

この本がいう「子どもが減って何が悪いか!」ってのは「減って悪くなってもいいじゃないか」ということで、「減って悪くなることはないぜ」ということではなかった。僕は後者の新しい見地を想定していたのでそこはちょっと残念だったけども、傾聴に値する本でした。/端的に言うとそのまんま、「減って悪くなってもいいじゃないか」っていうことなんですけども。もう少し丁寧に言うと「男女共同参画の達成、もしくはそれを組み込んだ少子化対策は、少子化を食い止めていない」というもの。そういうものにそういう視点(少子化対策)で税金を注ぎ込むべきではないし、選択に対してサンクション(懲罰や褒章)が与えられるべきではない、と。少子化というものは不可避のもので、少子化対策で対応するには費用が見合わない。/つまり男女共同参画と少子化が癒着しちゃってる現況に対する指摘というか批判ですね。男女共同参画は少子化対策にならないからと言って否定されるべきではない。これでは少子化が餌に使われちゃってるだけだぞ、と。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

男女共同参画社会になれば少子化に歯止めがかかるのか?
世の中で広く言われていることに対して疑問を投げかけた本。

さまざまなデータを用いて、少子化の原因を分析。
結論としては、男女共同参画社会と少子化対策を結びつけるのは恣意的な結論だと述べる。

少子化で何が問題かというと、年金の財源と労働力不足。
年金対策は積み立て方式にすればよいというわけでもないので難しいところ。

結局、産むも産まないも個人の選択であるから、それを強制されるのはおかしな話。
少子化を認めたうえで、対策を講じる必要がある。

データを丁寧に扱い、既存の分析データに疑問を提起しているプロセスがわかりやすくてよかった。

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2012年09月07日

Posted by ブクログ

「選択の自由」という理念を強調しながら男女雇用機会均等と少子化対策が如何にリンクしていないか論じられている本。

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2010年12月28日

Posted by ブクログ

少子化で日本の未来が危ない!というのが通説であるが、
この本はそれに真っ向勝負している。
というか、「別に子供うみたきゃ産めばいいし、産みたくないなら無理しなくていいじゃん!」って言ったほうが正しいだろうか。
男女共同参画社会が少子化対策になるのは嘘だよー
だまされるなー
って感じ。

前半は実証分析の良い勉強になります。
何にも勉強したことない人でもかるーく方法論が理解できる。
一度勉強した人にはおさらい。噛み砕ける。
後半はちょっとした精神論になっていきます。

とても読みやすい。
なかなか面白いです。

正しいと思われていることを疑ってみる目が養えるかも。

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2010年12月19日

Posted by ブクログ

なぜか、読みとおすのがつらかったです。意地で読みましたが。

データがサンプルの取り方によってここまで大きく変わる、有意かどうかまで変わってしまうというのに驚きました。
数値で出ていると信用してしまいがちですが、しっかりした裏付けのもとにサンプルが選ばれているのかにも注目してデータを見ていこうと思いました。

でも、筆者の意図が混じらないデータなんて、果たしてあるのだろうか、という疑問が。

男女共同参画社会が少子化対策のためのものだったというのは初めて知りました。確かに、本当にそれが社会のためになるならば、対策になるかならないかは別として、推進されるべきだと思います。

家族手当や子育て支援を不公平なものだと言いたいらしいのですが、そうしたら奨学金とかも不公平なものになるのでしょうか。
学校に行く人だけがお金をもらえるわけですから、学校に行かないという選択をした人や、奨学金をもらえるだけの成績・生活困窮度がない人にとっては不公平だ、という論理になりそうです。
「選択の自由」にこだわることが、必ずしも良いことなのかが分かりませんでした。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

2008年上野ゼミ指定文献?、少子化・社会政策・統計。
男女共同参画の下での少子化対策に対する反証がテーマ。少子化対策の原因の検証ではない。

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2009年10月07日

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