あらすじ
富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる時代。年収二百万円以下の給与所得者は、すでに一千万人を超えた。拡大する賃金格差は、能力でも労働時間でもなく、単に「入った企業の差」である。こんな世の中だから、仕事にやる気がでなくてあたりまえ。しかし働くよりほかに道はない。格差社会のなかで「就職」をどうとらえ、どう活かすべきなのか? マニュアル的発想に頼らない、親子で考える就職哲学。
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Posted by ブクログ
大学を卒業して数年、仕事に対しての「幻想」がようやく薄らいできた。
この本はそんな状況にいる自分の考え方に自信を持たせてくれた。
タイトルの「落ちこぼれ」というのが卑屈に見えるかもしれないが、書かれている内容は現実的で至極まっとう。説教くさくもないし、新卒のころに読んでもよかったかもしれない。☆5つなのは個人的なタイミングが合ったから。
レビューというより、ほとんど印象に残った点を引用するだけになってしまうが、記しておく。
まず、現代社会において就職というのがどういう意味合いを持つかについて説明している。このあたりは色々な本で言われていることなので省略。
p31「だいたい職業を自分で選ばなければならなくなったのは、ごく最近のことです」
p32「いわば『手本のない時代』に突入しているのですから、『がんばればなんとかなる』というのは過去の残骸です」
ではどうすればいいのか。
p37「仕事のイロハもわからないうちから、無性に『やる気』があるのは頼もしいものの、空元気に終わる可能性だってあります。下手に意気ごんだぶん、失敗したときのショックは大きいでしょう。(中略)大切なのは『やる気に執着することではなく、とりあえず行動することです』」
と、「やる気なんかなくてもいい」とバッサリ。適職信仰についても「時間のむだ」と切り捨てている。個性教育に関しても
「教育というのは、善かれ悪しかれひとつの方向に生徒を導くべきで、一本の線をひくから子どもの個性が見えてくるのだと思います。」と、至極まっとうな意見が述べられている。
下手にやりたいことがなかったために順調に仕事をこなしていった教え子の話はうなづける。私は「やりたいこと」を目指して仕事をしてはギャップに苦しみ、会社を辞めていってしまったので。一番長く続いた会社も「やりたいこと」がなかったためだ。
でもじゃあ働く目的ってなによ、という話になると
「最終的に仕事が目的になればいいが、まずは仕事を手段としてとらえる」となる。
「こんな人と知り合いたい」「こんな部屋に住んでこんな服を着たい」などでいいらしい。
難しく考えすぎていたなぁ…。
では手段としての職業をどう選ぶか。
これは学びたいことを学ぶために企業を活用する、くらいでいいようだ。どんな職業であれ、目的ではなく手段なので、考え方が楽になる。
実際に仕事をすると仕事のプロセスではなく、最短距離が求められることも忘れてはいけない。現実は厳しい。
第二章の「だめな企業ほど求人する」はほんとに目から鱗。具体的な会社の選び方なので、このあたりが気になる人は手にとって読んでほしい。
とりあえず、本当に人が欲しいところは求人広告を大々的に出さないし、衰退する専門職に手を出さないことも納得。自分を雇うメリットもしっかりアピールする。
三章は職場に入ったときのことだが、職場は演ずる場所、という割り切りが必要。そして、あまりにも理不尽な場合、怒るときは怒って、然る後謝るということも経験上納得できた。
最後に、p129「あのときやればよかった、の『あのとき』は今なのだ」(これは作者もどこからか引用してきたようだが)という言葉に「やる気」がふるい起された。
就職本としてだけでなく、仕事に疲れたら読み返したい。