あらすじ
地球と太陽系を喪い、星の世界への進出を余儀なくされた人類は、生き延びるためにあらゆる形態の人間を生み出した。ぼくらもそうして生まれた宇宙船だ。そして今ぼくら2隻は特命を帯び、銀河中心にある巨大ブラックホールに向かって1600年に及ぶ旅を続けている――。弱冠23歳の著者が贈る、雄渾の遠未来ハードSF。第4回創元SF短編賞受賞作。巻末に選考委員、大森望・日下三蔵・円城塔の選評を付す。
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年刊日本SF傑作選2013。
今年は、かっちりとジャンルSFを集めた感じでしたが、逆に言えばそれでもこれだけの幅を出せることを証明して見せたのだと思いました。文体、テーマ、題材、文体、などなどで、これだけのバリエーションを出せるとは。
個々の作品では西崎憲「奴隷」の気持ち悪さと、乾緑郎「機巧のイヴ」のやられた感もなかなかでしたが、なんと言っても瀬名秀明「Wonderful World」が良かった。新幹線の中で読んでいて、涙ぐんじゃいました。
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『星間野球』宮内悠介 ★*3 SF度:低
宇宙ステーションで野球盤ゲームをする話 バトルもの
カードでも宇宙ステーションでも登場人物が変わっても問題なく
だからなんだという話ではあるがそつのない内容
『氷波』上田早夕里 ★*4 SF度:高
土星の衛星と輪の探索に人口知性同士の会話で進む話と
とてもSFらしい作品
人口知性の及ぶ範囲を自ら表現するところが機知が楽しい
『機巧のイヴ』乾緑郎 ★*4 SF度:中
双子の入替りと同様のアンドロイドの入替りが題材のミステリ
双子もミステリ枠内におけるファンタジーだが
アンドロイドがSFなのにファンタジーでもあるところが不思議なところか
アンドロイドを作る技術があるなら
他にいくらでも別の応用手段があるのではないかとか
バトルロボットものと同様に言ってはいけない事を書いてみる
『群れ』山口雅也 ★*3 SF度:低
ミステリ(謎を追う筋書き)であり
(表現の追う様子が)ホラーな感じで
ファンタジー(幻想的)な結末の作品
SFなのはファンタジーなお話とホラーな味付けに
現実味をあたえてミステリ風にしているもの
主体としてはホラーなふいんきの味わいだと思うので
ホラーがいまひとつ通じない身にはなんだかわからない
『百万本の薔薇』高野史緒 ★*3 SF度:低
ひとつ前の『群れ』とまったくおなじホラーなミステリ
感想同じ
『無常のうた『UN-GO』第二話』會川昇 ★*3 SF度:低
このシリーズも大概いろいろなところから引っ張ってきているが
アニメの脚本そのままとはさすがに驚き
アニメのことは詳しくないのでよくわからないが
脚本はこういう感じなのだろうか
もっといろいろ詳しく描かなくて良いのだろうか
戯曲と同様のものとして読むと
前提の舞台や登場人物の設定背景が良くわからないが
現代舞台の短編ミステリとしてわりとよくある話にしかみえない
アニメにすると映えそうだとは思う
『とっておきの脇差』平方イコルスン ★*3 SF度:低
わずか6pの短編マンガ作品
これらが一冊分集まったものを読めば
なんとなく作者の描きたいものがわかるのかもしれないが
これだけだとなんともかんとも
決闘に第三者の立会いがなくて問題ないのかしら
『奴隷』西崎憲 ★*4 SF度:低
作者が寓意はないとおっしゃっているので
描かれていることそのままなのだと思われる
前の作品と同じくこの作品だけだと見当違いかもしれないが
現代に奴隷制度があるのが
ファンタジー(含むSF)なのだと思われるものの
過去の奴隷制度があったころを描いている現代の小説も
現代の常識で書かれているのだから
何も変わらないのではと思わないでもない
『内在天文学』円城塔 ★*5 SF度:高
別格特別扱いしても良いのではと毎年思うが
今回も流石の内容
他と違いすぎる
『ウィプスィード』瀬尾つかさ ★*4 SF度:高
『約束の箱舟』より評価高
作者として創造世界をいろいろ描きたいのだろうけれど
小説としては無駄が多くて
こういう中編でこそSFとしての良さが出るのだと思う
そういう意味で小川一水作品や上田早夕里作品と同じなのではなかろうか
単に好みの問題という可能性のほうが高いけれども
『Wonderful World』瀬名秀明 ★*4 SF度:高
未来予想にまつわるしごくまっとうに昔なつかしな味わい
人間の高尚さの程度はないからこそ理想に見える
『銀河風帆走』宮西建礼 ★*4 SF度:高
ひとつ上と同じく夏休みの夢てきな宇宙探索もの
日本SF周辺の季節は今夏らしいのにあまりふさわしくない気もする
まとめ
あまり目新しくこれというのはないものの平均点の高さは流石
短編ひとつでも強烈に引き込まれる個性を出すことと
短編単独でそれなりにわかったきになれるようまとめることの
両方ないと興味惹かれないのだから難しい
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2012年度の日本SF傑作選。
あいかわらず高クオリティで楽しめた。
創元SF短編賞受賞作の「銀河風帆走」はガチで深宇宙探査SFをやっていながら、作者は23歳! SFの夏は近いですなぁ。
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夏合宿課題本
担当は『ウェイプスウィード』
瀬尾つかささんということで特に中身読むことなく担当に決めたが、この中でもかなりの良作だった。
群体で異質知性体とか完全に俺の好みと一致。
さぁ、どうやって人類に侵略してくるのかと思ったら、まさかのリアル侵略ということになるとは。
昔から思っていた異質な存在に対して人類の前提条件で相対するのが間違っているというのがあってその点同感。
SF的視点除けば野球盤もアツかったし、
円城先生も読みやすかったし。
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今回もヴァラエティに富んだ面白い作品が集まっていて楽しめた。
宮内悠介「星間野球」
上田早夕里「氷波」
乾緑郎「機巧のイヴ」
山口雅也「群れ」
高野史緒「百万本の薔薇」
會川昇「無情のうた「UN-GO」第二話」
平方イコルスン「とっておきの脇差」
西崎憲「奴隷」
円城塔「内在天文学」
瀬尾つかさ「ウェイプスウィード」
瀬名秀明「Wonderful World」
宮西建礼「銀河風帆走」
「星間野球」
野球盤をテーマにしたお話。「盤上の夜」のゲーム連作のためのアイディアだったらしいが、これは設定といい、話の雰囲気といい全然合わない(笑)
宇宙ステーションにいる二人の男が地球帰還をかけて野球盤をする。
ほとんどそれだけの話なのに、相手を騙そうと知恵を凝らして次々に様々な手が繰り出され、読んでいてずっと楽しい感覚。ちっぽけなゲームに本気になるっていい。
「機巧のイヴ」
この作者の作品は初めてかつ、「時代ミステリ+ロボットSF」とのことで、どんなものかと思ったら拾いものをした気分に。時代小説として江戸時代の闘蟋の描写やあれこれが面白かった。全体的に上手いと思う。
「無情のうた「UN-GO」第二話」
やったらクオリティが高く、とても好きだったUN-GOの脚本。
脚本で読んでもやっぱり面白い。脚本だからこそ、どういう意図があったのか新たに解ることがあった。
「Wonderful World」
もうトリにはこれしかない!という作品(本書の構成上、最後に短編賞受賞作がきているけど)。
未来というマクロシステムと個人個人といった無数の要因=ミクロシステムとの間にあるものを倫理感と看破し、未来予測が可能になるという世界前夜の物語。震災以後、科学にとってのSF、SFにとっての科学などを正面から描いている。「SFは未来をつくる」。この作品自体がとても「倫理的」なものに感じる。
「銀河風帆走」
滅ぼうとする銀河系から別の銀河へと銀河間航行を実行している「人類」の姿を描いた力作ハードSF。往年のSFを今の科学知識からアップデートしたかのような作品。マグ・セイルのアイディアもSF的なロマン?があっていいなあ。
今こういうのを書くSF作家が新たに登場するのも面白い。
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宮内悠介「星間野球」
上田早夕里「氷波」
乾 緑郎「機巧のイヴ」
山口雅也「群れ」
高野史緒「百万本の薔薇」
會川 昇「無情のうた 『UN‐GO』第二話(坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖 ああ無情」より)」
平方イコルスン「とっておきの脇差」
西崎 憲「奴隷」
円城 塔「内在天文学」
瀬尾つかさ「ウェイプスウィード」
瀬名秀明「Wonderful World」
宮西建礼「銀河風帆走」(第4回創元SF短編賞受賞作)
「機巧のイヴ」が割と面白かった。今日泊亜蘭っぽい。「ウェイプスウィード」は雰囲気がいいな。