あらすじ
旧友のカリーナから「あなたにしかできない」と頼まれて、コインロッカーにスーツケースを取りに行ったニーナ。そこに入っていたのは、素裸の3歳くらいの男の子だった。ニーナは、コインロッカーで今しがた自分が開けたドアを蹴り飛ばして怒る男を目撃する。そしてその男もニーナを見た――。とにかく、この幼い子を守るしかない。ニューヨークタイムズベストセラーをはじめ、世界で絶賛された北欧ミステリー。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
スティーグ・ラーソンの「ミレニアム」と賞レースを争ったというデンマーク作家二人による共作ミステリ。
友人から頼まれてコインロッカーから取り出したスーツケースに収められていたのは、全裸の少年だった。誰が、何のために?
物語は複数の主要な登場人物の視点に切り替わりながら進んで行く群像劇となっており、読者はある意味神の視点で物語を読むことができる。その意味で、少年が誰なのか、黒幕が誰なのかは比較的早い段階で想像でき、また明かされて行く。一方でなぜ?という命題は物語終盤まで明かされず、群像劇にもかかわらず、良質なホワイダニットのミステリとしてまとめられており、ミレニアムと賞レースを争ったというのも頷ける。
登場人物はいずれも精神的に問題を抱えていて、現代社会の暗部にも触れているあたりはいわゆる社会派ミステリとしての側面も併せ持ち、物語の説得性を高めている。
ミレニアムと比較すれば、テンポは圧倒的にこちらの方が良いが、面白さではミレニアムに軍配が上がるか。とはいえ、かなりレベルの高い勝負ではあるのだが。