あらすじ
粗野で狡賢い、冷血漢の兄・チャーリー。ふだんは心優しいけれど、キレると大変なことになる弟・イーライ。悪名とどろく凄腕の殺し屋シスターズ兄弟は、雇い主の“提督”に命じられるまま、ある山師を消しにカリフォルニアへと旅立つ――理由はよくわからぬまま。ゴールドラッシュに沸く狂乱のアメリカ西海岸、シスターズ兄弟は、この目も当てられないダメな旅路で、何に出遭い、何を得て、そして何か失うのか? 小説のあらゆる感情を投入し、世界の読書界に一大旋風を巻き起こした、総督文学賞など四冠制覇、ブッカー賞最終候補作!
...続きを読む
シスターズ・ブラザーズが荒野をいく。ゴールドラッシュに沸くサンフランシスコをめざして。彼らは金を探しにいくわけではない、殺し屋としてある男を消すために旅をするのだ。
ずいぶんと変なタイトルだと思ったが「シスターズ」は彼らの苗字だった。
粗暴で狡猾な兄と、内気だがキレると凶暴な弟の危険なコンビ。またビビットでダークな表紙からも、ついついバイオレンスな盛り上がりを期待しがちだがそういう方向には進まない。ろくでもない兄弟がだらだらと旅をし、ダメな連中と出会い、飲んで、もめて、勢いで殺しちゃったりする。
殺伐とした話だが、時にしみじみとあったかい感じが伝わってくるのはなぜだろう。
それはおそらくこの兄弟がつながっているから。ダメな生き方でつながり、戦うためにつながり、成功と失敗でつながっている。そして、つながりは二人の人生を良い方にも悪い方にも変えてしまう。
ラストに登場するおっかさんがいい味だしてます。だらだらしみじみ、でもちょっとハラハラしたい方に。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
時は19世紀の米国西部。
兄弟の殺し屋が一人の山師の殺害を命じられてカリフォルニアに旅立つ。
その道中 兄弟の力関係、頭の良し悪し、残忍さや温かさが明らかになる。
例え殺し屋でも人間だれであれ
何かにすがって 何かを手掛かりに生きている。
それは自分の腕であったり、将来の希望であったり、人間関係であったり
異性への愛情であったりお金であったりする。
結構 内省的な 主人公(弟の方)の視線で語られる本書は
そういった 人生を変えてくれそうな何かに振り回される生きざまを描いている。
先の読めない展開なのに、次が読みたくなるプロット。
構成力も表現力もなかなかである。
日本の小説だと主人公の独白のようなもので心理描写をするが
ここは行動で心理描写がされる。
例えば二日酔いばかりしている兄は現実から逃げようとしてる。
弱いものにやさしい弟は愛を求めている。
駄馬にも 行きずりの女にもやさしい。
それは 人に対する態度は 未来への希望から
くる。
お金やお宝を求めた兄弟が最後に求めたものは・・。
一日でよみました。なんという傑作。
素晴らしい読書体験。