あらすじ
101歳。人間国宝にして随筆の名手が紡ぐ、色彩と言葉の織物
【言葉と色彩の、極上の織りもの】
世界の見え方が変わる文章です。
染織に興味がある方はもちろん、自然とは、生きるとは、仕事とは何かについて考えている方にはぜひ読んでいただきたいです。
――小説家・ほしおさなえさん推薦!
手仕事なくしては、一日も生きられない――
人間国宝にして『一色一生』(大佛次郎賞受賞)などの著書で知られる
染織家・志村ふくみの名随筆が、単行本刊行から20年以上の時を経て、
待望の文庫化!!
文庫版では、志村ふくみが京都・嵯峨野の工房で機織りをしている貴重なショットから、桜の枝(植物染料)で糸を染めていく行程まで、数多の撮りおろしの写真を堂々追加!
可愛らしく綺麗な小裂(こぎれ)、植物染料で染まった美しい糸、オリジナル機織り機など、カラー4色の写真ページ、必見です。
平凡な主婦が31歳のときに染織の世界に飛び込み、
日夜を忘れて仕事に没頭する日々を送っていた。
糸を植物染料で染めていたある日、風と光の中で新しい色が誕生した瞬間に巡り合う。
失敗を繰り返しながらも道を切り拓き、紬織の第一人者、人間国宝に。
植物が与えてくれる自然の恩恵、“母なる色”について綴る名随筆。
解説・田中優子(法政大学名誉教授、同大学江戸東京研究センター特任教授)
単行本 1999年4月 求龍堂刊
文庫版 2025年11月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
(文庫化にあたり加筆修正いたしました。文庫オリジナル版ビジュアルページを冒頭に追加しました。)
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Posted by ブクログ
紬織の第一人者で、人間国宝の志村ふくみさん(今年、101歳)の御心の奥深さ全てが、差し出されているような随筆。(70代の頃)文章が素晴らしい。未知の世界のことばかりで、目から鱗状態。背筋が伸びる言葉であふれていました。1994年、求龍堂から刊行された単行本の文庫化です。
近代文学、古典文学からの引用多く、著者の教養の深さがうかがえます。
志村さんの色の考察は、とても奥深いです。
志村さんの機織りの姿、植物染料で染まった美しい糸、桜の枝で糸を染める工程の写真もあり、必見。
【印象に残ったフレーズ】
・植物の色の本質はもも色
・植物の樹液から染まるもも色、これは母なる色以前の聖なる色
・我々はひとりひとり色彩環(オーラ)をもっているが、それはみることができない。
・人間の心に不純物があってどうして色を純粋にひき出すことができようか
・植物に魂があるなら、その色はピンク
・心につよく願うことがあれば、手がそれを追うという。「心慕手追(しんぼしゅつい)」という言葉があるという。もし手が追ってこなければどうなるか、といえば、その願いごと、「強固(しっかり)していない」又は「熟していない」「低い(次元が)」ということになるのだそうだ。
以下、余談です。
中学校国語の教科書の大岡信さんの随筆『言葉の力』で初めて、志村ふくみさんのことを知りました。大岡さんは、志村さんとのやりとりで、桜色に染まった糸で織った着物の色に感動し、その色をどうやって取り出したか尋ねます。その色は、樹皮を煮詰めて取り出したということでした。桜の花びらではないということ、驚きでした。
随筆中に、「少女の頃、生みの母をはじめて知った」とありました。志村さんは、2歳で叔父夫婦の養子となっており、織物については実母からの影響だということ。結婚、離婚を経て、31歳から染織の世界へ。平坦な道のりではなかったこと、本書を読んだことがきっかけで、調べて知りました。