あらすじ
大阪ディープサウスを描く驚嘆の傑作、大増補文庫化。資本主義の発達に伴い矛盾が爆発する大阪。通天閣は群集を惹き寄せる。その足元で、借家人、アナキスト(逸見直造、大杉栄ほか)、野武士組、女給たちが立ち上がり、繋がり、同盟し、訴訟する。傍らに生まれた遊廓(飛田)では、人々の生が濃密に交錯する。補論2本を増補。サントリー学芸賞受賞作。
解説 五所純子
カバー写真 毎日新聞社提供(完成から10年を迎えた2代目通天閣 1966年10月28日撮影)
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Posted by ブクログ
下巻は、とにかく訴訟を起こして権力に立てついたアナキスト(大杉栄と交流があった)について、それから、みんな大好き飛田について。『㊙色情めす市場』という、あまりにあまりなタイトルの映画を、釜ヶ崎から飛田の景色とともに論じている。ただの猥褻ではなくて、その裏の悲しみがわたしを惹きつけてやまない。観光地化している新世界で串カツを食べて、大阪を知った気になるなかれ。
ただ、あとがきに書かれているように大阪らしいディープな風景はどんどん消えていく。何年かぶりに訪れた天王寺に、てんしばなるものができていたのを知った時には、おどろくのとともに、残念な気持ちにもなった。「JR天王寺駅をおりたときから、この町はこれまでみたどの町ともちがっていた。~中略~少し歩くだけで町は無数の表情をみせてくれた。そしてそのそれぞれがなにか解きがたい秘密をかかえているようにみえた。(あとがきより)」怪しげで猥雑でどことなく湿った感じの大阪は、清潔で未来的で明るい都市に塗り替えられている。そりゃあ、ずっとスラムでおれ!というわけにはいかないものだから、変わるのはいいことだとは思う(が、排除された人がいるのも確かで)。
著者はこの本を大阪への「ラブレター」だと書いている。昔の時代を遺してくれているこの本に会えてよかった。