あらすじ
生涯をかけて各地を旅し,人々の声に耳を傾けつづけた宮本常一.『忘れられた日本人』をはじめとする仕事は,従来の日本像を見直す民俗学の成果であるとともに,民俗学を超えて,多大な影響を与えてきた.網野善彦,司馬遼󠄁太郎ら,宮本の言葉と行動を受けとめ独創的な仕事を成した人々を通して,今に生きる宮本民俗学を考える.
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Posted by ブクログ
自身の卒論のテーマは今和次郎であり、宮本常一もまた柳田一門の一人であることは周知の事実である。師の衣鉢を継ぐことなくアカデミズムから一歩引いた彼の姿勢に興味を抱き、他の著作を読み進めてきた。
格別な学歴を持たず、メインストリームを歩むことのなかった両名は、しばしば「思想がない」と評され、アカデミズムの世界で正当に評価される機会は少なかった。私は当時、抽象的な思想を突き詰めることよりも、時代の空気感を記録する大切さ、すなわち「事実のありのまま」に重きを置きたいと考えていた。
さて、本書は宮本が後世の人々にどのような影響を与えたかを記した著作である。その対象は、鶴見俊輔、安丸良夫、網野善彦、鹿野政直、司馬遼太郎、本多勝一、宮崎駿、「思想の科学」など多岐にわたる。
ジャーナリスティックな視点に立てば、安易に「絶大な影響を与えた」と結論づけたくなるものだが、本書は影響の濃淡を事実に即して記述している。蔵書への書き込みなどから客観的にその足跡を辿ろうとする姿勢には、好感が持てる。
「忘れられた日本人」は確かにジャーナリスティックな側面が強く、厳密な意味での論文とは呼べないかもしれない。しかし、それで良いのだ。読む者の心に深く刺さり、その思考方法が血肉となって残るならば、いかなる高尚な思想よりも有益であるはずだ。
それこそが、名もなき民衆にスポットを当て続けた宮本が真に訴えたかったことだと理解しているが、いかがだろうか。
Posted by ブクログ
宮本常一だけの説明ではなく、関わりが少しでも会った有名人との関連を説明したものであった。それは、鶴見俊輔、安丸良夫、網野良彦、谷川雁・島尾敏雄、石牟礼道子、本多勝一、司馬遼太郎、鶴見良行まで様々な人である。
教員養成系大学の学生にこの本を薦める前に、宮本の忘れられた日本人をまず読むことを薦める。
Posted by ブクログ
日本の民俗学といえば、まずは柳田國男が思い浮かぶ。宮本常一については、今でこそ再評価がはじまっているとのことであるが、1960年代から1990年代はほとんど見向きもされなかったという。
その理由は本書の序盤に書かれているが、民俗学の本流からは忘れられながらも、宮本常一の影響を受けたのは民俗学以外の分野に複数いたという点が興味深い。
中には、宮崎駿や司馬遼太郎といった多くの日本人に知られる著名人も含まれている。
また、草野マサムネや後藤正文といった日本ロックシーンにおける重要人物からも関心を持たれており、そうなると、私たちは間接的に、宮本常一の成し遂げた仕事の一旦から微かに影響を受けていると言ったら言い過ぎだろうか。
宮本常一については以前、佐野眞一の『旅する巨人』を読んだ事もあり、宮本常一について読んだのは2冊だけたが、そこから見える宮本の印象はは、人に対する優しい眼差しである。
民俗学的な業績について私は分からないが、一つ言えることは、宮本が訪れていなかったら現在は忘れ去られていた話や道具、文化がいくつもあったということである。