【感想・ネタバレ】現代戦争論 ――ロシア・ウクライナから考える世界の行方のレビュー

あらすじ

次は日本が
当事国かもしれない──
不透明な世界を、
いかに生きるか?

わずか3日で終わると予想されたウクライナ戦争は、開戦からもう4年を迎える。なぜここまで長期化したのか。どれだけの人が死んだのか。米トランプ政権成立で激変した世界秩序の中、日本はいかにふるまうべきか。21世紀における戦争を私たちはどう考えたらいいのか。ロシア情勢の第一人者として悲惨な実態を伝え、ロシアへの無期限入国禁止処分を受けた著者が、詳細なデータとともに戦争の本質に迫る。著者個人の経験や信念までも込められた、今最も読むべき戦争論。

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Posted by ブクログ

さすがの小泉さんで、昨今のウクライナ情勢が分かりやすいタッチで語られている。また、内容はイラン軍事衝突が始まる前の物であるが、2026年の情勢を見通すのにも不可欠な論点が織り込まれており、まるで目下の状況を予見していたようである。
一例を上げると、今のイランに対する米国の姿勢は、まさに2章で議論されたスヴェーチンの消耗戦理論に陥っていないだろうか。また3章で語られるロシアの「ソフトな政治戦線運営」、反戦の動きをハードに抑えている訳ではなくある意味自然体で戦争を継続できているというのは大変悩ましく映るが、これが現代の戦闘的な国家の絵姿となってしまうのだろうか。
そのような環境下で我が国はどのように立ち振る舞うべきなのか。終盤に議論されたなかで筆者の提示した「短期的な利益ではなく、より長期の戦略的利益を織り込んだ狡猾さ」は目下のイラン情勢においてますます重要性を増しているし、かつ難易度を増してしまっているようにも思う。

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2026年03月11日

Posted by ブクログ

小泉さんの文章は、とても繊細で、配慮が行き届いていると感じる。自分の考え以外にも意見があることを踏まえ、それでも勢いに任せることなく、即座に否定することなく、知的な言い回しで自分の考えを並べていく。現代で信頼できる作家の識者のひとりだ。
ロシアという国、そしてウクライナ戦争の現座点の概観を学ぶことができた。特に日本がこれから何をするべきかの章がよかった。
「私たちにとってのリアリズム」

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2026年03月11日

Posted by ブクログ

現在進行形で行われている「第2次ロシア・ウクライナ戦争」を、2025年時点における筆者の考えをまとめたもの。筆者の一貫した主張、ロシアの一方的な軍事侵攻は認めてはいけない、ということに全くの同意。

個人的に関心を寄せて読んだのは、
「戦時下のロシアはどのような状態にあるのか?」
「日本はどのようにむきあうべきなのか?」

である。

前者はロシア、lとりわけ軍事を専門するだけあって、現地の資料、データに依拠しており、大変興味深かった。


後者は、この戦争が始まってから、日本国内で議論になっていることについて、筆者なりの考えを示しており、説得力のあるものだった。

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2026年03月10日

Posted by ブクログ

通しで読み、深い感銘を受ける。自分で答えを出そうとする胆力に。
軍事のことは僕にはよく分からないが、最終章の日本への問いかけの前提となっているアメリカの後退を現実とする中での重武装という方向性は、やむを得ないのではないかと思う。その際に、「弾がないのが玉に瑕」とならないようにする、というのもこれまた必然か。

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2026年02月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一章 どれだけの人が死んだのか
民間人 5万人  衛星画像分析
占領域内での拷問、処刑、子供の連行、徴兵
ロシア軍人 約20万人  貨物200
ウクライナ軍人 約10万人 交換比率は小さい

二章 なぜ終わらないのか 
破壊戦略、スヴェーチンの消耗戦争
開戦当初の空港占拠の遅れ→消耗戦争へ
ウクライナの政治戦線の強さ、士気の高さ
無人ドローンなどの新兵器→双方が使うことによって結局は膠着する(ノー・マンズ・ランド)
あえてロシア領内の重要地域を攻撃→ロシアが核使用に踏み切らないことからロシアの核の脅しが無効であることのアピール

三章 いかにして軍事大国となったか
徴兵を少なめに抑え、職業軍人や民間軍事会社にふってきたロシア軍
部分動員は行ったものの大枠は変わらず
兵力の少なさから電撃勝利に失敗
開戦以降は兵士の給料が平均所得の3倍にも
貧しい地域の死者数が多い デスノミクス
都会人の徴兵が行われないため公然とした戦争批判がおこらず

四章 この国はどこへ向かうのか
もとは武器輸出大国のロシア
欧米による禁輸政策も、インドは輸出先のまま
そのインドはウクライナに武器を輸出
北朝鮮の砲弾輸出量はロシアの年間消費量の半数から全量
ウクライナ嫌いのハンガリー、スヴァウキ・ギャップ
「トルコのスルタンに手紙を書くザポロージャ・コサック」

五章 日本はいかにロシアと向き合うべきか
NATOがロシアを敵国と認識したのはそもそもロシアが第一次ウクライナ侵攻を始めてから
ウクライナ侵攻までNATOはウクライナの加盟に否定的
→ウクライナのNATO加盟というロシアの論理は通らず
汚職対策をしつつ支援、建設機械の支援
「大国のリアリズム」は「日本のリアリズム」ではない

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2026年02月15日

Posted by ブクログ

ロシア・ウクライナ戦争についてオシントをもとに分析して、今後起こり得る展開を予測する。また、今回の戦争を教訓に、日本が今後取るべき安全保障の政策についても考えていく。ロシアによるウクライナ侵攻で、多大の人びとが犠牲となったが、その数には不確実性が伴い判然としない。それでも、たとえば衛星画像で墓地の拡大に着目して推定するなど、ある程度は公開情報から読み取れる。また著者は「降伏」や「平和主義」という言葉について見解を述べており、太平洋戦争時の経験や戦後日本が築き上げた価値観が今後も通用するとは限らないと警鐘を鳴らす。加えて、21世紀半ばに向けて米国の力が相対的に弱まり、世界は多極化へと進むと予測されており、ゆえに日本も安全保障の構想練らなければならない。戦争はもはや日本にとって他人事ではないことが本書を読むとわかる。

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2026年03月07日

Posted by ブクログ

ロシアのウクライナ侵攻後四年にあたり手に取った。
本書は、小泉先生が次の五つの問いに応答していくことで、第二次ロシア・ウクライナ戦争の姿を描き出していこうと目論んでいる。

◯五つの問い:
・どれだけの犠牲が出ているのか?
・何故こうも長引いているのか?
・戦時下のロシアはどのような状態にあるのか?
・世界の中でロシアの立ち位置はどう変化したのか?
・日本はどのように向き合うべきなのか?/


この本の紹介や解説は僕には手に余るので、そちらはもっと明晰な方達にお任せすることとして、例によってこの本に書いてあることないことを書きたい放題に書いて行こう。
まあ、そのようなよしなしごとにしても、この本を読んで考えたことには違いないのだから。/


◯天下三分の計とドンロー(鈍老)主義:
【(略)トランプ政権の成立は(略)米露関係の転換をもたらす可能性があるとロシア側からは見られていた。(略)ロシアが冷戦後に唱えてきた国際秩序構想である「多極世界」の実現で米露が協調できる可能性が出てきた(略)。
(略)この概念は、特定の大国による覇権を否定するものではない。世界に存在するいくつかの大国が、それぞれの隣接地域を勢力圏として従えて共存するという秩序が多極世界の意味するところであって(略)。ユーラシア大陸はロシアを中心とする旧ソ連圏、中国圏、インド圏に、欧州はEU圏に、北米は米国を中心としてそれぞれの勢力圏を形成することがここでは想定されている。】(本書)/

僕は、さらに進んでそこに、子どもの頃少年少女世界文学全集『三国志』で読んだ「天下三分の計」を見てしまうのだ。
ドン・トランプは、ドン・プーチン、ドン・習近平とともに、ヨーロッパはロシア、アジア(インドを除く。)は中国、南北アメリカはアメリカということで、手を打とうとしているのではないか?
そのためであれば、ウクライナや日本など小国の運命がどうなろうと、眉ひとつ動かさないのではないだろうか?/


◯日本の生きる道:
・日米安全保障条約:
《この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。》(同条約第十条)/

多くの日本人は、この国がアメリカの核の傘で守られているから、将来に亘ってずっと安心だと思っているかも知れない。
だが、たまたま現在のトランプ大統領が中国を仮想敵国とみなしているからいいものの、「アメリカ・ファースト」を掲げる強欲な武器商人が、その圧倒的な市場規模、アメリカに有用な資源の埋蔵量、今後の発展可能性などの諸般の事情を勘案した結果、中国と手を組んだ方がより有利だと判断したらどうなるだろうか?
(そうなった後のアメリカの態度は、ウクライナに対するトランプ大統領の態度を見れば、だいたい想像がつくだろう。)
しかも、おそらく「アメリカ・ファースト」とは、一トランプだけの専売特許ではなく、今後誕生するであろういかなる党派のいかなる大統領にとっても、その根っこに居座り続ける本心なのではないだろうか?

そう考えたとき、わが国に残されたものは、旅立ちの歌などではなく、「スイミー※になる」ことではないだろうか?

※スイミー:
レオ・レオニ作の絵本。
小さな魚スイミーは、大きなマグロたちに食べられることなく自由に海を泳げるように、みんなで集まって大きな魚のふりをして泳ぐことを提案する。/


◯一つの変化:
2月24日、BBCニュースで、ロシアのウクライナ侵攻後4年となるこの日に行われたウクライナのための将来の安全の保証の提供実現を目指す「有志連合」会合のライブ中継をやっていた。
もちろん、会場にはゼレンスキー大統領が招かれていた。

2022年2月24日に、いったい誰がこの光景を想像しただろうか?
ロシアの侵攻直後に見た一つの風刺漫画がある。
それは、ロシア軍戦車の砲塔の列に周囲を囲まれたウクライナ兵を、NATO諸国が輪の外側から遠巻きに眺めている絵だ。
あのとき、おそらく欧米諸国首脳の誰もが、ウクライナは一、ニ週間で降伏すると考えていただろう。
いまや、ウクライナは「有志連合」の輪の中心におり、

《会合で共同議長を務めたイギリスとフランス、ドイツの首脳は声明で、ウクライナについて「ヨーロッパの自由を防衛するために戦っている」とたたえ、軍事・財政の全面的な支援を改めて約束した。》(〈ウクライナ「有志連合」侵攻4年で会合 英仏独首脳「ウクライナは欧州の自由を防衛」〉(テレ朝NEWS2/25)/

と、最前線でロシアの侵略からヨーロッパの人々の自由を守る守護神となったのだ。
これは、明らかにプーチンの大きな誤算であり、敗北だろう。/


◯テレビ朝日報道ステーション(2月24日):
《大越キャスター:
「ウクライナ国民が戦いに疲れてどこかで限界をむかえてしまうのではないかということを心配しています。(略)ウクライナの国民がこれからもしっかりと戦いを続けることができるとお考えでしょうか?(略)」

ポドリャク ウクライナ大統領府顧問:
「(略)ウクライナは 確かに戦争に疲れています 友人や子どもたちの家に 毎晩ミサイルが飛来する 非常につらいことです 同時に単純な問題です 国の存亡に関わるからです 選択肢はありません 「耐え抜くか滅ぼされるか」 「ロシア世界」とは 侵略 拡張 戦争のことです ロシアの侵略の根底にある 「暴力が支配する」という原則を ウクライナでいま止めるのか 拡大させるのか みなさんと欧州 私たち全員しだいです ウクライナは すでに決心しました」》/


《『遺言』
 わたしが死んだら 
 なつかしい ウクライナの 
 ひろい丘の上に 
 埋めてくれ 
 かぎりない畑と ドニェプルと 
 けわしい岸べが みられるように 
 しずまらぬ流れが 聞けるように 

ー中略ー

 わたしを埋めたら 
 くさりを切って 立ち上がれ 
 暴虐な 敵の血潮と ひきかえに 
 ウクライナの自由を 
 かちとってくれ 
 そしてわたしを 偉大な 自由な 
 あたらしい家族の ひとりとして 
 忘れないでくれ》
(タラス・シェフチェンコ『コブザーリ』/黒川祐次『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国』/中央公論新社/2002年。より)/


ウクライナはまだ戦っている。
僕もまた僕の戦いを続けなければならない。
「ウクライナに栄光あれ!(Slava Ukraini!)」/


◯蛇足:
巻末の参考文献に、東野篤子「日本のウクライナ支援の実態とその課題」『ROLES COMMENTARY』No.35(2024年10月15日)と、平木忠義『ウクライナを巡る動きと日本の対応』(独立行政法人経済産業研究所、2025年5月13日。)を掲げて頂いたのはありがたい。
常日頃ウクライナ関連ニュースの激減に残念な思いを抱いていたのが、いくぶんか解消されそうだ。

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2026年02月25日

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