あらすじ
幻の名作「あわせ鏡に飛び込んで」をはじめ、瞬間接着剤で男をつなぎとめようとする女が出てくる「あなたをはなさない」、全編、悩み相談の手紙だけで構成されたクライムミステリー「書かれなかった手紙」など、選りすぐりの10編を収録した文庫オリジナル作品。精緻に仕掛けられた“おとしあな”の恐怖と快感!(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
2017年42冊目。
んー、やっぱり引き込まれてしまった。
何だかどれもラストがスッキリしないんだけど、あーやっぱりこれが井上夢人なんだなぁ・・と。
そしてやっぱりあたしは、岡嶋二人の方が好きだなぁ、と。
でもどれも秀逸。
特に、書かれなかった手紙、が好き。
Posted by ブクログ
ロアルド・ダールの作品のような,「奇妙な味」の作品ばかりを集めた短編集。井上夢人になってから,いろいろなところで掲載していた短編の寄せ集めなので,作品のバリエーションも豊富であり,作品のデキも玉石混交。さすが井上夢人といえる物語作り,小説作りのうまさは感じるが,いまいちの作品もある。一番面白かったのは「千載一遇」かな。評価は…★3で。
個々の短編の感想は以下のとおり
○ あなたをはなさない
別れ話を切り出された女性が,男と自分を接着剤で張り付けてしまうという作品。もし,コメディタッチでこの作品を描けばシチュエーションコメディになっていただろうから,強いていうならシチュエーションホラーか。接着剤を利用して,女が自殺するというオチ。あらすじだけ聞くと,たわいもない話だが,そこそこ楽しめるのは井上夢人のうまさか。
○ ノックを待ちながら
夫によく似た人間を殺害し,保険金を奪おうとする夫婦の話。最後の最後で,妻が自分も殺そうとしているのでは?と疑いを持った男が,妻が毒薬にすりかえ可能だった「砂糖」が入っているはずの袋を飲むのか,飲まないのかというシーンで終わる。リドルストーリーのお手本のようなオチだが,途中の展開など,アラは多いかな。
○ サンセット通りの天使
「誰が書いた小説か当てる」というテーマで書かれており,翻訳もの調で,井上夢人っぽい文体ではないが,物語の骨格は井上夢人らしい「よくできた作品」である。配達員を装って脱出しようとしたら,もう一人の配達員が,すでに殺し屋に入れ替わっていたという話。小説巧者が書いた作品っぽい。
○ 空部屋あります
一転して,奇妙な味の作品。ファンタジーというかホラーというか。ミステリ的な解決はなく,まさに奇妙な味。世にも奇妙な物語のネタなんかになってもよさそう。デキとしてはふつうかな。
○ 千載一遇
倒叙モノとして始まるが,途中からの展開は新鮮。双方が双方を殺そうとしているという展開はありがちだけど面白い。オチの妻が裏切っていたという部分は伏線がないのが残念だが意外性はある。そこそこのデキ。
○ 私は死なない
ホラー。これは怖い。霊のような存在になるが,死ぬことも気絶することもできず,苦しみだけは感じる。そういった存在になった死体が,解剖され,火葬されるという…。怖い。
○ ジェイとアイとJI
評価が難しい作品。プログラム言語などが登場し,取り扱っている題材はとても好みだが古い。一転,オチは,よくある妄想モノ。伏線もないし…及第点以下かな。
○ あわせ鏡に飛び込んで
ちょっと込み入りすぎていてすっきりしない作品。自殺である証拠を探す…と見せかけて罠をしかけていると見せかけて実は死んでいませんでしたって…。うーん,これも及第点以下。ジクソーパズルと組み合わせた作品ということで制約がおおかったのかも。
○ さよならの転送
日常の謎系になるのか。留守番電話を使ったトリック(トリックとも言えないか…)も陳腐だし,オチもよく分からない。凡作と言わざるを得ないか。
○ 書かれなかった手紙
さすが物語巧者の井上夢人と思わせる技巧的な作品。こういう作品は好き。小説としてではなく,ミステリとして読めば面白い。