あらすじ
特に日本語は「正しさ」より「ふさわしさ」……場の空気を的確につかんだ言葉選びが重要だ。社会言語学では、生きた言葉が、出身地や性差、職業、社会階層、状況、手段、相手などにより多様に使い分けられていることを研究する。なぜ方言は羨ましがられたり馬鹿にされたりするのか。自分を「オレ」と言ったり「ボク」と言ったりするのはなぜか。上手に敬語を使うには? 身近な日本語を分析しつつ「伝わる」日本語のコツをつかむ。
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Posted by ブクログ
社会的立場を考えた上で正しい日本語を選択することは、日々社会で必要であるため、とても参考になった。アニメや漫画、身近なものを例としていて学生としては共感しやすくわかりやすかった。社会言語学への関心が深まった。
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<第二言語の能力は、表面的には第一言語の能力と違うように見えても、基本的な能力は第一言語と基盤を共有しているため(二言語共有説)、第二言語の能力は、第一言語の能力によって制限を受けているのです。そのため、第一言語の能力が不十分な段階で第二言語を習得しようとしても、弊害のほうが大きく、結果的にセミリンガルになることが多いと考えられています。
つまり、第一言語である「国語」力が言語能力の基本であり、つねに英語に触れていられる環境にいる子どもでもなければ、「国語」力に割くべき時間を犠牲にして、焦って英語を身につけさせようとしても、「国語」力も英語力も身につかずに終わるおそれが高いと考えている言語学者が少なくないのです。>(193〜194頁)
小学校での英語の教科科がスタートしようとするなか、英語教育の研究者が揃って述べていることが上記の内容だ。「早くから英語をはじめれば、容易に英語習得ができる」という考えは、たしかに一部には適用されるが、絶対ではない。むしろ、小学校時代の英会話や英語塾での経験が後の英語学習に全く効果を及ぼさないことを示す研究は多数ある。世間の言説にまどわされて感情的に教育を考えてはならない。だが、人々は理論よりも情動に影響を受ける。いくら科学的なデータを提示して説得しようと試みても、人々の考えを変えることはむずかしい。英語教育に携わるものとしてできることは何なのか、よく考えたい。
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チョムスキーはじめとする理論言語学が言語の普遍的な法則の解明しようとしていたのに対し、社会言語学が現実の物理現象を考察して法則を導き出す実験物理学と似たアプローチの学問であるとして、さまざまな事例をふんだんに紹介しながら、社会言語学初学者を導いてくれる良書。とても読みやすい。さすが社会言語学の先生だ。
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社会言語学入門としてお勧めの一冊。
読みやすく、社会言語学がどのような学問かわかる。
専門用語も出てくるが、分かり易い説明がされているので、知識がなくても楽しく読めるだろう。
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例文に古臭さを感じるという、この手の本にありがちなことはなくて、若者言葉の例文も新しい感じがするし、『トトロ』や『めぞん一刻』のシチュエーション例もあって好印象。一人称としての「こっち」や、女性が一人称として「自分」を使うことが最近増えてきているということは知らなかったので、世代差を感じた。
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社会言語学は、言葉選びの科学、と一言で言ってのける明快さが魅力。
社会言語学という、おそろしくその扱う領域が広い学問が、何となく一冊で概観できるような気になる。
最近話題の方言コスプレの話や、方言漢字、バイリンガル教育、危機言語のことまで、本当に幅広い。
社会言語学は、まだ日本では緒に着いたばかりの学問領域なのだとか。
この先、どのように進展していくのだろうか。
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サブタイトルにあるように学問の入門書。非常に読み易く学問に大変関心を感じる。なぜ言葉づかいが場面により変わるのか。敬語だけではなく、環境(社会)との関係、相手との親疎、距離感により言葉が変わるとは毎日のように感じること。それをポライトネス理論というという解き明しは痛快!。「俺、僕、わたし・・・」などの一人称の使い分けなどをドラえもんの登場人物のキャラから説明するのが楽しい。若者語の特徴①断定を避けるぼかし表現が多い、②強調する程度副詞の発達、③気持ちを伝える形容詞の多用、④テンポを速める略語が多い、⑤共感を持って相手の話を受け止める表現の豊富さなどの解説は確かに!と納得。「言葉選びの科学」という表現、その場「空気」に合わせた適切な言葉選びのセンスを磨く!というお奨めはぴったり。
Posted by ブクログ
理論言語学=記号としての言葉の内部構造を明らかにすることを目指す内部志向の言語学=正しさの言語学
社会言語学=発話された言葉と発話された外部環境の関係を明らかにすることを目指す外部志向の言語学=ふさわしさの言語学
社会言語学からみた「言葉」についていろんなことが書かれていておもしろかった
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若者言葉は断定、限定を避けるぼかし表現が多い
共感したり参加しやすくするため。
とか、たり、って感じ、-くない?
ぼく
のび太は子供っぽくて頼りない感じ「ぼく」
スネ夫は都会的なお金持ち特有なキザな感じ「ボク」
ドラえもんは消去法。わたしは大人っぽい、おれはのび太が立場上になる。から「しもべ」ともとれる「僕」
うち、あたし、おれ、ぼく、わたし、わし、おら、おい、自分、先生、拙者、ママ、お母さん、おふくろ
状況とどう見られたいかで人称変わる
英語は訛りたくさんあるから日本語訛りでも
たどたどしくても内容がある事が◯
Posted by ブクログ
鈴木氏の著作よりは書き口がマイルドで読みやすい。一般的な疑問「なぜ・・・なの?」といったところから各章が展開していきその疑問が自分も抱いたことがある物だったりすると、より興味をひかれた。
Posted by ブクログ
文法的な言葉の正しさを重視するあまり片隅に追いやられている「言葉のふさわしさ」。
生きた言葉が存在するのは人と人とがコミュニケーションを行う社会そのもの。社会の中で言葉がどのように使われているのか。これを知ることにより初めて言葉の真の姿が見えてくる。貴様、御前もかつては敬語。言葉の正しさは時代の変遷とともに大きく変わりゆく。言葉として決して正しくなくとも、時と場合によっては最もふさわしい言葉となることは、しばしば我々が日常経験すること。形式にとらわれることなく、おかれた場面で、空気を適切に読み、どのように言葉を選び使うかが最も重要だということである。