あらすじ
共存? 共生? コミュニティは誰のもの?
芝園団地をめぐる葛藤と努力は、移民社会を迎えようとする
私たち一人ひとりの羅針盤だ。
――星野博美(作家)
2016年の米大統領選挙で排外主義の台頭を目の当たりにした著者は、
取材から帰国した後、住民の半数が外国人の芝園団地(埼玉県川口市)に移り住む。
日本人住民の間に芽生える「もやもや感」と、
見えない壁を乗り越えようとする人々を描いたノンフィクション。
芝園団地やほかの外国人集住地域に関する報道や研究は少なくない。本書に独自性があるとすれば、外国人住民が増えた地域で暮らす日本人の「感情」に焦点を当て、掘り下げようと試みたことにあると思う。
外国人に対する不安や不満といった住民感情は、否定するだけでその人たちの心から消えていくものではない。向き合い、そうした感情を生み出す根源を探る。そのことに意味があるはずだという思いは、この団地に住む中で、そして世界でますます反外国人・移民感情が広がる中で強まっていった。(「あとがき」より)
日本人と外国人が同じ場所で暮らすとき、何が起きるのか。
住民には、どのような感情が生まれるのか。
そこで起きること、芽生える感情に対して、どうすればいいのか。
これは、そんなことを問いかけながら芝園団地で暮らす、一人の住民の記録だ。
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色々と、色々と考えさせられた良書であった。
自分は、多様性とは真逆の環境で生きてきた。均一な人が多い小学校で、中学受験をしてそれ以降は自分と似たような境遇の人ばかり。
今も周りは子育て世帯ばかりの場所に住んでいて、それが比較的ここちいいと思う。
だからこそ反動で、自分の子供には多様性を感じられる環境に身を置いた方がいいよ、と頭では理解するが、とはいえ同質の人の方が楽じゃないという思いもあったり。
とはいえ、日本において海外にルーツを持つ人が多かれ少なかれ増えていくのは確実だろう。
結局は、国籍ではなく、人と人とのコミュニケーション。
UR団地に関わるものとして、問い続けたい課題を提示してくれる本であった。
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誰でも心の中に小さなトランプを抱えている…というのは、トランプ大統領が当選した時にメキシコ人記者が書いていた文章の一部。たしか、メキシコ人が「bad hombre」と言われて公然と大統領の敵意を受ける相手となっていた頃だが、一方でメキシコ国内では他の中米諸国からの移民を排斥しようという動きもあることを批判した内容だった気がする。この本の筆者も、自分の家族が米国でアジア系マイノリティーとして生きていくことについて考える際、マイノリティーとしての立場から訴えるのではない。自分がマジョリティーである日本の中で、まずは日本人の心の中にある「小さなトランプ」に向き合っている。すごいなあ。
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この団地、中国人が多数住んでいることで有名だそうだが、初期のゴミ捨てなんかのトラブルをうまく解決し、学生ボランティアらによる交流活動も盛んだったりで色んなグローバルナンチャラ的な賞をもらうほどになった。著者は新聞記者として実際にこの団地に住み、自治会活動にも参加しながら、住民だからこその目線で等身大の団地の姿を描く。
それは必ずしも理想の共生社会とかではなく、それぞれ(特に日本人側)のモヤモヤが鬱積しお互い距離を取り合う2分割されたコミュニティだったりする。理想論だけでは片付かない旧住民側の本音は突き詰めれば「この団地は自分たちのもの」という団地愛なのだが、それが一転して排外的にもなりかねない、微妙な空気をはらんでいる。
「それは差別だ」的な正論で押しても解決にはならない、旧住民が守りたい本当の価値とは何かを辛抱強く探り続けることが大切だというインター・カルチュラリズムに立つ社会学者の言葉が印象に残る。
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外国人の人口が増える中、日本でも「多文化共生」を目指そうとする声があがる。しかし、そもそも「多文化共生」は人々から求められているのか、またいかにそれが険しい道のりであるかということが、象徴的に描かれている。
下記はメモ。
「共生」と「共存」の違い、また後者を望む住民を否定することは出来ないということ。
外国人:日本人という単純な構図で分けられないこと。そもそも、世代も職業も異なる両者を、無理やり交わらせる点に、かなり無理がある。
「中国人」という大きい主語で語られることの多さ。
多数派で支配的だった人々が、少数派だった人々の割合が増えて来ると、「侵略されている」と感じてしまう。相手が自分と同様の義務を果たし、権利を持っていたとしても、自分たちに従うべきだと思ってしまう。
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中国人の居住者が半数を超える埼玉の団地。そこに移り住んだ朝日新聞の、記者が自治会に参加しながら共生を考える。まつり、行事、自治会費、生活空間だけに互いの生活様式の異なりで行き違いもある。例えば夜遅くまで公園で遊んだりおしゃべりしたりする中国人がうるさい、日本人。自治会活動に参加しない、手伝わないのに、遊びにはくる中国人。ルールを守らないのは一部だけど、みんな中国人でひとくくりにして嫌悪する日本人。そんなこんなが続いてるよう。共生したい若手と距離を置きたい高齢者という図も見えた。
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移民関連テーマとして、比較的近所にある芝園団地(団地内の外国人比率が5割を超えた団地)をテーマにしてる本があったので手にとった。
移民とつきあっていく上で複数の軸での課題があることがわかった。
・地域住民との「共存」か「共生」か
・「同化主義」か「多文化主義」か「間文化主義」か
・マジョリティが感じるネガティブ感情(マイノリティへのステレオタイプや、既得権益を失う不安)
日本特有、ではなくすでに他の国々でも同様の課題がでて考察されているようなのでそのあたりは理解しておきたい。
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おもしろっ。芝園団地、私も住んでみたいが収入が足りない。
マイノリティが増えることで何かを脅かされているように感じる、ってのがすごくわかった。
ときどき地位のある中年男性と話してると(この人は私に何かを奪われると感じているのでは?)と不思議な気持ちになることがあるんだわ。私はそんなつもり全然ないんだけど。
その人はたまたま貰えるケーキが多かったのだな。
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埼玉県川口市の、外国人居住者が多い「芝園団地」に住む新聞記者、大島隆氏の著書。日々団地で起こる、面白エピソードを紹介するような軽い内容…、を想像していたが中身は全然違っていた。
芝園団地には90年代頃から、中国人を中心に多くの外国人が住み始め、現在は住民の半数以上が外国人となっている。芝園団地が特に積極的に、外国人の受け入れを推進していたわけではないのだが、他地域に比べ入居の条件が比較的緩かったため、結果として大勢の中国人が集まってしまったようだ。
当初はゴミ出しのルールをめぐりトラブルもあったそうだが、中国語の注意書きを張るなどして、現在はトラブルも無いらしい。しかし団地に住む古参住人の中には、中国人が住む事に対し否定的な意見を持つ人も多く、大島氏はこの状況を、トランプ政権が助長する移民排斥や人種差別問題と重ね合わせている。自治会が中心となり、イベントなどで住民同士の交流を図っているのだが、なかなか難しい問題のようだ。
いま日本では高齢化や人工減少が急速に進んでおり、減少する労働力を補う手段の一つとして、外国人の受け入れは増やさざるを得ない。最近は自分の住む田舎町にも外国人を見かける事が多く、芝園団地が現在直面している問題というのは、これから近い将来に日本全体が経験する問題なのだと思う。
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日本の行く末の縮図な様相の、シェアが中国人優位となった団地内の人間関係と、住む人たちの想いと。
芝園団地の現状と課題は、世界がまさに直面し、日本がこれから本格的に直面しようとする課題であり、どう向き合えばよいのか、その答えと試みが参考となりました。
P165 中国人の思い
・日本人と比べれば、中国人住民の方が
「もっと交流を深めたい」と思っている人は多い。
・日本人ともっと話したいと、日本語教室にやってくる
中国人住民もいる。
一方で、多くの中国人にとって芝園団地を選んだ理由は
・中国人コミュニティがあるから。
共生→日本人住民と外国人住民が交流する団地にしたい人達
共存→お互いが静かにトラブルなく暮らせれば
特に交流が無くてもかまわないと思う人達
共存と、共生と、どちらを目指すのか?
お互いうまく住み分けをしていく共存、
共存と比べると相互の関係や協力というニュアンスのある共生。
P186 芝園団地の現状と課題
・トランプ大統領の誕生
・欧州における反移民政党の伸長
は、ポピュリストたちは、
彼らの都合の良いように不安感を掻き立て、
その感情をフラストレーションに変化させ、
移民の人々をスケープゴートにして
利用した結果であった。
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新聞書評欄か何かで知り手に取った。
元々、異文化共生に興味があったが、芝園団地という存在は本書で初めて知った。
本書の話は今ほど外国人排斥の空気が広がっていないであろう2017年からのものだが、当時から日本には外国人(主に中国人)が半分以上を占める団地があった。
そして、その団地で起きていることは、今まさに日本の至るところで起きていることと同じだ。
つまり、芝園団地で起きたことは日本の縮図であるとも言える。
外国人の行いに対して、文化の違いが引き合いに出されるが、実は原因が文化の違いではなく、ルールの周知がしっかりなされていないということだったりする。
例えば、ゴミ問題。どのようにゴミを捨てるかそのルールを知らなければ、ルールに則った捨て方は出来ない。それを外国人だからちゃんとしないと考えるのは間違っている。まず相手が分かるように、彼らの言葉でルールを説明したりすることが必要だ。
それは日本人同士でも違う自治体でゴミを捨てるときに起きたりする。ルールの説明がなければ、間違った捨て方をしてしまうことだってあるだろう。
実際、私自身他の自治体に滞在したとき、よくわからずに間違った場所にゴミを出した経験がある。
私は外国人の多いエリアで暮らしているわけではない。その意味で、実際にそのような環境に身を置いて体験している著者は素晴らしいと思う。
本書を読む前は「芝園団地」というワードをネットなどで見たことはなかったので、芝園団地に特定のイメージは持っていなかった。
だが、ネットの世界では芝園団地は現実と乖離した誹謗の対象として扱われているようである。
実際に現場を見ることなく、伝聞のみで決めつけてしまうことは非常に有害であると思った。
そして、何故相手との齟齬が起きるのか、その原因はこちら側にあるのではないか、そんな風に考えながら相手(外国人に限らず)との溝を埋めることが大切だと思う。
お互いに、配慮しながら上手く共生していくのが理想的だ。
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個人的にこの団地の近くをときどき通るので気になっていた。
筆者はこの団地に住んでいる方なので生の声と言えそうだ。
外国人が多いというのは聞いていたが、芝園町の人口の半分以上が外国人とは。
ヒャッハーな感じのトラブル劇のようなことはあまりなくて、静かに分断されている団地という印象をもった。
日本人と外国人という人種的な分断に加えて、高齢の日本史と若い外国人の年齢的分断も感じた。
住人の外国人は中国系のIT技術者が多いのだそうだ。だが、中国のIT産業が栄え日本が没落したいく今後は、中国の若い技術者はわざわざ日本に来ないだろうという意見が印象に残った。
蕨の駅前などではイランやバングラデシュの方をよく見るが、また別のコミュニティがあるのだろうか。
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蕨に近いURが所有する芝園団地。
かつては、中堅サラリーマンが我が家を構える場所だったが、今や、単身高齢者が主体。そこに若い中国人IT技術者が多数住むようになり、コムユニティーが激変。その中で、住民同士の対立が生じ、外野が色々口を出し、自治会が融和を画策し、近年では、中国人よりベトナム人がの増加が目立つ、というグローバリズムの中の日本の縮図を描く。