あらすじ
今の日本政治論議に欠けている思想はこれだ。欧米では現在、実効性のある思想として評価されながら、なぜか日本では古い保守思想として誤解されてきたコミュニタリアニズムの思想を紹介する入門書。(講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
「共同体主義」と訳される「コミュニタリアニズム」という考え方を解説した本。これを一言で表現するなら「共通善の政治学」である。
もっと詳しく言うと、共通の言語、歴史、伝統、コミュニティ、倫理を前提とし、自己と他者との関係性や共通性を意識して自分の属するコミュニティを形成して「共通善」の実現を目指してコミュニティに対して責任を負うという考え方。ここでいうコミュニティは家族や、町内会や自治会のような近隣の組織である。マッキーヴァーのいう「地縁に基づく共同体」ということである。
この本を読む限り、コミュニタリアニズムという考え方は興味深いし、これからの社会で役に立つものだと思う。だが、この本に「どのように共通善の政治学を実現していくか」という重要な部分が抜け落ちていることが残念だった。それが重要なことなんじゃないか、と。
まあ、従来の閉鎖的かつ排他的な「ムラ社会」でも、砂粒のように孤立した個人の集合体である「都市社会」でもない、緩やかなコミュニティというのが、目指すべきだということは考えた。