【感想・ネタバレ】国の死に方のレビュー

あらすじ

そんなに国を死なせたいのか? 歴史はやはり繰り返すのか? リーダー不在と官僚組織の弊害、出口の見えない不況、未曾有の震災と東北の苦境……鬱積する国民の不満を受けとめられない政治は、相次ぐ国難にも右往左往を繰り返すばかり。近年、この国の有り様は、あの戦争前後の混迷に驚くほど通底している。国家が自壊してゆくプロセスを精察し、暗雲漂う現代の「この国のかたち」を浮き彫りにする。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

江戸期に水戸学で確立された国体論(「君臣相和し頭を垂れる」)が第2次世界大戦以後まで続くのだが、その国体論を実践し維持するには必要不可欠な要素があった。「犠牲を強いるシステムとしての国体」の側面だ。国体論が語られる際に表だって言及されなかったが、これこそが無条件降伏をした後でさえも維持しようとした国体を陰で支える要素だった、と片山氏はいう。しかし、この犠牲を強いるシステムはポツダム宣言(から、日本国憲法の制定ももしかして入るのか?)における軍国主義の除去と平和主義の徹底により機能停止される。《みんなで仲間意識を持ち、天皇を愛し相和せ君臣一体となる国体》を維持するには犠牲のシステムが不可欠なのに、「新たな犠牲の論理」を国家が生み出さぬまま戦後の日本は歩んできている。映画「ゴジラ」のように、犠牲は国家が強いるものではなく自発的に行うもの、というのが戦後なのかもしれない。しかし、国体を維持不能にするような装置(=原発)を作り続けている国が、国体を担保する犠牲の論理を成立させずに時計の針を前に進めるというのはどうにもおかしいことではないか?という論調。それはつまり、第2次世界大戦さえもくぐりぬけてきた国体が、今回の原発事故、あるいは今後も起こる可能性のある原発事故によっていずれ死を迎えるのではないか?という予測でもある。

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2013年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3.11のあと被害規模が明らかになるにつれ、また、被災地とは離れた首都圏や西日本にまで影響が出てくるにつれ、"日本が非常事態に陥った"、"いよいよ滅びの一途を辿るのか、"と不安に感じた人は少なくないと思う。
非常事態、国の滅亡――「現在から想起される過去について書くことで、現在を思う糧が得られるようにやってみたい」(p.217)
・・という考えの元、行われた連載をまとめた一冊。
中世~近世~近代の日本、加えてナチスドイツ・ソ連の政治史をかいつまみながら、国家の衰亡をプロセスを辿る。

面白かったです。
特に6~8章の保険と関東大震災・戦災について書かれた部分は、こういう視座での考察には触れたことが無かったので新鮮でした。
あと、ゴジラ。
水爆実験がきっかけで覚醒した大怪獣は、口から放射能を吐き、野を被爆させる・・最終的には在野の研究者が自らの命を投げ出し、ゴジラを道連れに死ぬ――そんな話だったとは知らなかった。
日本の「『国体より重い命のない国』から『人の命は地球より重い国』へ」の捻転(p.213)・・という一文とも相まってとても印象に残りました。

ゴジラを語る部分や、3.11後の原発云々に揺れる日本を語る部分はやや叙情的すぎますが、"論考"というより"思索"と思って読めば良いかと。
大いに面白かったです。

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2013年04月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

連載記事を集めたものなので、章ごとに内容の統一感はないが、昨年の衆院選前に掲載されたという「舌先三寸と気分の衆愚選挙、普通選挙で国滅ぶ」の章は興味深かった。
曰く、
有権者の判断能力が劣悪ならば、候補者のとる戦略は、まずは小口買収、次にどうせ実行できるはずもないその場しのぎの公約の連発。
判断能力のない有権者ほど、この世で危険なものはない。

うーん、昨今の選挙結果を見ていると、著者の意見に肯かざるを得ないのがつらい。

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2013年04月06日

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