あらすじ
「人間の罪」、そして、愛することと人生とは何かを見つめる短編集。
義兄と自分だけの秘密。好きだと言ってくれる同級生との微妙な距離感。そして、義兄の秘密。一人の女子高生の微妙な心の揺れを日記形式で描いた表題作のほか、年をとってから生まれた反抗期の息子に、生きることに必死だった過酷な半生を綴った手紙を渡す父親を描いた「この重きバトンを」、相手候補のデマ記事を流すなど、汚い手を使っても町長選に勝とうとする父とそれに協力する母と姉。投票日に家を出る決心をする主人公を描いた「茨の蔭に」の2作を収録。「人間の罪」を描いた短編集。
「三浦綾子電子全集」付録として、夫・光世氏のエッセイ「自然への礼儀」を収録!
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Posted by ブクログ
三浦綾子さんの初期作品3編を集めた短編集です。
これらの作品は、三浦綾子記念文学館設立を機に、原稿を整理していたら出てきたものや、不完全なままだったものを東西奔走しながら復元したものであるらしい。特に「茨の陰に」の復元にはかなりの労力をかけたとのこと。
表題作「雨はあした晴れるだろう」は義理の兄に密かに憧れている主人公がある事件をきっかけに彼に失望、同級生の男の子とほのぼのとした関係が始まりそうなところまでを日記形式で書かれている作品。「この重きバトンを」は、主人公が父の半生を知り、父に対する見方が変わるという作品。「茨の陰に」は町長一家を描いた作品。
初期作品と言うことはたぶんこれらの作品も昭和2じゅうウン年頃に書かれたものだとは思うが、どれも古くささを感じさせません。(「茨の陰に」には「純潔について」などの記述があるのでこれはさすがに時代を感じるが)特に表題作は十代の憧れの気持ちと、間違ったことを許さない気持ち、これらのみずみずしさがどの時代にも通用しそうに思えます。
初期作品と言うこともあり、三浦作品の原点とも言えるところがあります。「雨はあした晴れるだろう」は「ひつじが丘」や「氷点」、「茨の陰に」は「積木の箱」に通じるところがあるように思います。読み比べするのもいいかも知れませんね。