あらすじ
美少女と中年男に弄ばれる甘美で残酷な青春。
1958年、東京郊外にある映画撮影所(著者が助監督として活動した松竹大船撮影所がモデル)から物語は始まる。主人公は大学を卒業したばかりの22歳の助監督。映画界は最盛期を過ぎたとはいえまだまだ活気に満ちている。新人女優として突然主人公の目の前に現れた16歳の美少女と大根役者の中年男をめぐってストーリーは展開する。ほとんどは、巨匠が監督する映画「一葉」の撮影現場である。当時の映画製作の現場が微細に生き生きと描写される(著者がこれほど詳細に映画製作の現場を描いたことはない)。最終の第12章のみ33年後という設定である。甘美な青春の日々とほのかなエロティシズム――、青春の苦さを見事に描いた傑作長篇小説。
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Posted by ブクログ
初山田太一作品です。これまで、ドラマも見たことがありませんでした。今回、『本の窓』で紹介されていたので読んでみました。
解説が、角田光代さんだったので、先にそっちから読んでしまい後悔しています。セリフが多くて、口調が似ているので、適当に読んでいると、誰が話しているのか分らないことがありました。そのため、同じところを何回も読み直します。
途中で、私の田舎である、鯖江が出てきたのには驚きました。さらに続けて、私の祖父が行っていた、鯖江36連隊も登場。勇猛で鳴らした連隊、と祖父の昔話と同じようなことが書かれていて、なんだか、ほっこりしました。
この点だけで、いっぺんに山田太一さんが好きになりました。
Posted by ブクログ
石田の若々しいチンケなプライドも、羽柴の中年臭い無駄な見栄も、
どっちも痛々しいんですけど、分かってしまう部分がありますよね。
自分にもこういう節はあったよなぁ、あるんだろうなぁって。
結局は防衛本能ですからね。自分の価値を守りたいと思う心を、客観的に見せつけられたような感じでした。
各々の記憶について、結局答えは分かりません。
それぞれ勝手に都合よく改ざんして、それを事実と信じ込んでいるんでしょうけど
やっぱりそれを責める気持ちにもなれないと言うか。
皆生きるのに必死な訳で、自分が最も安らげる落としどころを無意識に求めてしまうのは性のようなもんなんでしょうね。
まぁ俯瞰的に見れば、ですけど。
自分は自分が正しいと思うもんですし、いざこういう状況に対面した時に
自分はどこまで割り切れるのか。それもまた怖いな。
瑠美の幼さもまたリアルで。
33年後に石田を『初恋の人だった』と称しているのに嘘はないように感じるんです。
お互いを美化した結果、「そうだったんだろうな」って。
でもそうなると、石田を想っていた期間が物凄く短いんですよね。
ちょっと距離ができた隙?に正太といい感じになっちゃってるんですもんね。
17歳のリアルさですね。まぁこれも本編(石田の記憶)がどこまで真実なのか分からないってのもありますが。