【感想・ネタバレ】光る壁画のレビュー

あらすじ

胃潰瘍や早期癌の発見に絶大な威力を発揮する胃カメラは、戦後まもない日本で、世界に先駆けて発明された。わずか14ミリの咽喉を通過させる管、その中に入れるカメラとフィルム、ランプはどうするのか……。幾多の失敗をのりこえ、手さぐりの中で研究はすすむ。そして遂にはカラー写真の撮影による検診が可能となった。技術開発に賭けた男たちのロマンと情熱を追求した長編小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後の日本で初めて胃カメラを発明した人達の話。

胃カメラが日本で発明されたということは知りませんでした。
技術開発者たちのロマンと情熱の長編でした。

何かを発明する,やり遂げるということは,こういう事か!と思わされました。

この本を読んで,私が思うに,まず柔軟な思考を持つこと。胃カメラを開発するに当たって,車のランプとか,自転車のチューブとか,コンドームなんかが出てきます。色んなものを先入観にとらわれず試してみること。大切です。
そして素朴な疑問や思いつきを大切にすること。どんなに素朴で,人が聞いたら笑うかもしれない,と思うようなことでも,そこに問題解決の糸口が隠されているかもしれない。
そして諦めないこと。壁にぶつかっても決して諦めないこと。
そんなことを思いました。この情熱は是非読んでもらいたいw

そしてこの本のさすが!と思わせるところは,奥さんの存在です。
胃カメラ開発に没頭し帰宅しない夫の傍ら,旅館業を一人営む奥さん。この辺はフィクションなんですが,夫が仕事に没頭していると破綻する家庭生活が必ずあるはずです。
数ヶ月も夫が帰ってこなかったら,そりゃあ妻としては耐えられないと思います。嫌味ったらしくなったり,拗ねた手紙を送りたくもなります。
そういうリアリティまで描いているのがやっぱり吉村昭。単に技術開発の情熱物語で終わらせないところがいいですね。

タイトルの「光る壁画」は,全体を読むと,「確かに光る壁画だ!」と納得します。考えられたタイトルですねー。

今の胃カメラは苦しさが軽減されていたり,カプセル型だったり,様々な発展を遂げています。それもこれも,この開発があってのこと。すごいですねー。

0
2011年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

胃カメラ開発の実話に基づいた小説。

取材の前に「胃の病気とピロリ菌」を読んでいて、
その中でこの本が紹介されていたので、早速読みました。

全体的に、かなり淡々とした印象。
物資も情報も少ない戦後に、世界で初めて、人間の体内を撮影する・・・
そんなカメラが、あっさりできてしまったのか、とも感じられるのですが。
ただ、実際に医師を取材してみると、
お医者さんって、知識も体験も豊富なのに、
本当に、起伏もなく、わかりやすくお話されるのだ、と
最近になって、ようやくわかりました。

医師は、たくさんの症例を経験した上で話をしているのだから
もう、当たり前のことになっているし、
研究結果が評価されるべきで、その過程は自明のこと、と
思われる方が多いように感じられます。
一般人にとっては、なるほど、すごい!と思うことばかりなのですが。

この小説も、「もっといろんなハプニングや苦労があったのだろう」と
読み終わった後にも勘ぐってしまうのですが
そうではなく、あくまで現場の雰囲気を大切に
まとめられているような印象で、そこに好感がもてます。

いずれにせよ、激動の時代に、ひとりの医師と、
日本が誇る、光学技術の技術者たちの想いがこもったストーリー。
それが書かれていること、知ることができたことで
知識欲はしっかりと満たされました。

0
2011年02月21日

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