あらすじ
ナチス時代のドイツでユダヤ人――そのなかには多数の障害者もいた――を守るために尽力した盲人オットー・ヴァイトと、彼をめぐる仲間たち。極限状況の下で互いに手を携え、苦境にある者たちにその手を差し伸べ続けた「沈黙の勇者」たちの実像に迫る。
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Posted by ブクログ
オットー・ヴァイトの評伝を兼ねた本。副題にあるように「盲人オットー・ヴァイトのユダヤ人救援」でヴァイトは盲人作業所の事業主として経営していたが、古い本の復刻版ならともかく今頃「盲」という言葉を多用する本が刊行されるものだ。それも明石書店から。ヴァイトにしてもゲスターポやSSに賄賂を渡して逮捕された人々の面倒を見ていた。個人が顔見知りか何かの動機でユダヤ人を自宅などで匿うならともかく、ある程度の人数になると「聖人君子」とは言えない事をしないといけないだろうか。
ヴァイトに匿われたが結局は逮捕されて強制収容所で殺されたカイム・ホルンというユダヤ人が登場する。索引には(Chaim Horn)とある。ユダヤ人の名前なので「カイム」より「ハイム」の方がいいのでは?
昨今のこの種の本らしく躓きの石が登場するが、以前は第22歩兵師団長としてウクライナでユダヤ人の虐殺を命令した上にオットー・オーレンドルフの出動部隊Dと関わりを持っていたがモスクワ戦の後の赤軍の攻勢で軍団を後退させたので軍法会議にかけられた末に7月20日事件に巻き込まれて銃殺されたハンス・フォン・シュポネック伯爵のような騎士十字章叙勲者の将軍のものがあったそうだ。多分、第22歩兵師団傘下の聯隊長だったディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍がパリで捕虜になってからイギリスの捕虜収容所での盗聴記録から分かったのかもしれないが撤去されたとの事。239頁に出て来る「懲罰部隊(処罰を受けたドイツ人兵士が最前線に盾替わりに配置された部隊)」とある。ラウル・ヒルバーグの「ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅」に出て来るロードス島のユダヤ人をアウシュヴィッツに送った柏葉付騎士十字章叙勲者で陸軍中将ウルリヒ・クレーマンのロードス突撃師団は元々、アフリカ戦線に派遣された第999アフリカ軽師団の後身という面があるので「懲罰部隊」は「処罰を受けたドイツ人兵士が最前線に盾替わりに配置された部隊」にしても単純に決めつけるのはどうだろうか?ロードス島なら距離的に脱走してドイツやオーストリアに戻る事はまず無理で、トルコに亡命した兵士はいたかどうかは知らないが、可能ならばユーゴスラヴィアかアルバニアのパルチザンに投ずるしかないだろう。逆に言えばロードス島はイタリア領ドネガテス諸島の一部なので1944年7月20日という非常に覚えやすい日までユダヤ人が強制収容所に送られなかったが、こんな遠方からアウシュヴィッツまで送ったものだと思う。8月23日のルーマニアでの国王のクーデターで戦況が一変した後ならユダヤ人をアウシュヴィッツに送るどころではなくなっただろう。
この本では全国連合を「ユダヤ人協会」を書いているが、177頁に出て来る「ユダヤ人協会の職員のひとりジークムント・ヴェルトリンガー」はコーネリアス・ライアンの「ヒトラー最後の戦闘」に登場するUボートとして匿われたユダヤ人夫妻の夫に間違いないが、109頁に写真が掲載されている「ハンス・ローゼンタル」という人物は「ヒトラー最後の戦闘」に出て来る同姓同名の人物とは年齢が違うので明らかに別人だ。「ヒトラー最後の戦闘」に出て来る人はジーヴェルスの「ドイツにおけるユダヤ人の歴史」やグイド・クノップの「ホロコースト全証言」にあるようにクイズ番組の司会者としてドイツでは有名な人だそうだ。