【感想・ネタバレ】黒い古典 日本人が必要とした悪の力のレビュー

あらすじ

明るく、美しく生きる……そんな理想とは程遠い毎日。死や老いの恐怖、憎い奴への恨みつらみ、失恋、金欠、家族との不仲、はたまた仕事の失敗、SNS炎上――。個人的不安と混迷の世情がからみあい、現代はまさに末法の世、「底つき」の時代です。本書はそんな「今」を生きるためによむ、「黒い古典」の提案。呪詛に見出すこの世の希望、ドス黒い感情の言語化にかくれた賢さ、後ろ向きマインドの安らぎ、人の生死よりも銭優先のパワフル魂……。神々の時代から江戸の世まで、「悪」寄りの名ゼリフが放つネガティブパワーをひもとくことで現代人のつらさに満ちた人生を軽くする、新・逆説の古典エッセイの誕生です。

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Posted by ブクログ

読むと元気になる。最近仕事がうまく行かなくて落ち込んでいたけど、この本を読んでいる間はすっかり忘れていられた。ポジティブなことばよりネガティヴなことばの方が、元気がもらえる場合もあるんだなぁと感心。

この本では、奈良時代の『古事記』から江戸時代の『四谷怪談』まで、時代順に古典文学の中に綴られた「悪態」や「ネガティブワード」の数々を紹介する。時代ごとに特色があるのが興味深い。

冒頭から、本筋を少しズレるが、古事記のイザナミのゾンビ姿を見てイザナギが逃げ出すシーンの背景考察が面白かった。古代日本には、高貴な人の遺体を長期間火葬せずに保管する「もがり」という習慣があり、イザナギは死んだイザナミに「相見む」すなわちセックスをしに行ったのではないかというもの。不埒な思いで墓をあばいたうえ、腐ったご遺体を見て「ギャー」と大騒ぎでは、そりゃ死んだ妻も怒るわな。かくして「汝が国の人草を、一日に千頭くびり殺さむ」という恐ろしい発言を引き出すことになる… 古代の神々は愛憎もまた激しくスケールが大きい。

平安時代はというと、主に女性たちによる「他人の不幸は蜜の味」を地で行くような発言のオンパレード。宮中でライバルの女の子どもが死んでやれうれしや、なんてものまである。物語の登場人物に言わせるならまだしも、作者本人の発言として書かれているからたまげる。現代のように匿名のXではなく、ばっちり実名で、しかも人に見せることを前提に書いた「日記」に書いているのだ。この背景としては、平安時代はのちの時代に比べて儒教道徳が普及しておらず、男尊女卑思想もゆるかったことがあると筆者は指摘する。こうした自分自身の負の感情を正面から見据えて言語化することは、理性と強さがあるからこそできること。黒い感情に突き動かされて行動に移す前に、こうして書き著してみるのもありかもしれない。

もう少し時代が下ると「無常観」が蔓延するようになる。右肩下がりが当たり前の世で、老いさらばえていくばかり。誰にも平等に滅びが訪れる。良い時もあれば悪い時もある(良→悪という順番も重要)。列挙していくといかにも救いがないが、ネガティブなことばというのは、「自分だけではない」という安心感をもたらすし、いつかは終わると思うからこそもう少しだけ頑張れるということもある。歴史上の錚々たる面々が残した「嘆き」に大いに癒されようではないか。ちなみにこうしたネガティブワードから癒しの効果を得られるようになったのは、自分が歳を取ったことも大きいのだと思う。

江戸時代まで来ると、今度はパワーみなぎる悪人たちが大活躍する。釜茹でにされるときに自分の7歳の息子を踏み台にした石川五右衛門や、来世を願ったことなどないと豪語する好色一代男、人の生き死にで嘆くほど自分はバカではないと、神棚に置いておいた金がなくなったことを嘆く婆。なんかこう、湿り気がないというか、とにかくパワフルで、つまらないことでクヨクヨしているのがバカらしくなる。元気がもらえる。

著者の大塚ひかりさんのナビで、古典作品の面白いところをつまみ読みできる良著で、自分でも古典作品に触れてみたいと思わされた。

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2026年06月09日

Posted by ブクログ

日本の古典からネガティブだったり悪口だったりと、ちょっとばかり悪い感じの言葉を抜粋して紹介した本です。意外に昔の人の方が忖度なくはっきり書いてあったりして楽しめました。書かれた時代の背景なども説明されており、古典ギライな人とかのとっつきにオススメかも。

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2026年02月26日

Posted by ブクログ

古典が長らく受け継がれて来たのは、そこに変わらない人間の姿があるから。悪口やネガティブな感情を持つのも決して自分だけではなく遥か昔の人も同じだった、と思うと何だか慰められるような安心できるような。自分一人じゃないというのは心強いですね。

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2026年02月01日

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